飲食店の原価率の目安は?抑えるためのポイントや利益を上げる方法

最終更新日: 2023/07/04
開業・経営
パソコンと飲食店

飲食店経営においては、自店舗の原価率を正確に把握することが重要です。原価率は、飲食店の利益に大きな影響を与える重要な指標であり、常に適正な値に保つ必要があるからです。また、正しい計算方法を知らないと、適切な経営判断ができない可能性があります。

そこで本記事では、飲食店の原価率の目安や計算方法、抑えるためのポイント、利益を上げる方法などを解説します。飲食店経営者の方はもちろん、将来的に開業を予定されている方もぜひご確認ください。

飲食店の原価率とは?

電卓と野菜

原価率とは、売上に対する売上原価の比率を表したものです。人件費率(売上に対する人件費)や廃棄率(仕入れた食材に対する廃棄ロス)とともに、健全な経営状態を維持する上で重要な指標です。原価率についてより深く理解をするためには、売上原価についても知らなければなりません。

売上原価とは、商品やサービスを生み出す際に必要になった仕入れ値や製造費用のことを指します。売上原価となる項目は、業界や業種・業態によってまちまちです。そのため、一概に原価に入る項目を抽出することはできません。しかし、飲食店に限って言えば、お店で提供する料理や飲み物を作るためにかかった食材費や飲料費が売上原価となります。たとえば、材料費200円のパフェが、その後販売価格1,000円で売れたとします。この場合、材料費の200円が売上原価です。

原価率は、売上に対する原価の比率を算出した指標となるため、店舗経営をしていく中では、本当にメニューの原価率が適正なのかを見直したり、現在の経営状況を確認するときに大切な役割を担うのです。

飲食店の原価率の目安は何%?知っておきたい基礎知識

お金を積み上げる手

飲食店にとって、原価率は利益を左右する重要な要素です。ここでは原価率の目安と計算方法に加え、粗利(売上総利益)の求め方について解説します。

飲食店の原価率の目安は?

結論から言うと、飲食店の原価率は30%程度が望ましいと言われています。店舗の利益とサービス品質を両立するためには、この程度の割合が適切だとされているのです。原価率が上げるほど、店の粗利は少なくなると言えます。

しかしながら、店のコンセプトや業態によって適切な原価率は異なります。戦略的に原価率を上げる場合や下げるケースもあるので、30%にこだわりすぎる必要はありません。

原価率の計算方法

原価率は、「売上の原価÷売上高×100」という計算式によって算出することができます。それでは、300円で仕入れた品を800円で売った場合の原価率を、以下で算出してみます。

原価率 = (300 / 800) x 100 = 37.5%

300円で仕入れた品を800円で売った場合の原価率は、37.5%となります。

原価率の計算で知っておきたい「歩留まり(ぶどまり)」とは

併せて、料理の原価率計算には「歩留まり」があることを覚えておいてください。たとえば、お肉を1kg仕入れてもまるごと料理に使えるわけではありません。必要ない部位を切り落としたりして残った部分が800gだとすると、歩留まり率は80%になります。この歩留まり率が低い(ロスが多い)ほど実際の原価率は上げってしまうため、原価率を正確に算出するには、食材のロス分を考慮しなければなりません。

廃棄が起きやすい食品を扱う飲食店は、歩留まりを高める努力も必要なのです。

原価でわかる粗利(売上総利益)の計算方法

粗利とは、販売している商品やサービスがどれだけの利益を生んでいるのかを判断する、基本的な利益のことを指します。売上総利益とも呼ばれ、売上から原価(原材料費)を引くことで算出することができます。それでは、原価率と同じ例を用いて粗利を算出してみます。

粗利 = 800円(売上) - 300円(原材料費) = 500円

300円で仕入れた品を800円で売った場合の粗利は、500円となります。

原価率と粗利について詳しく知るということは、商品ごとの利益効率を正確に把握することにつながります。利益効率の良くない商品を扱うことは、店舗経営にとって死活問題になりえる問題です。健全な店舗運営をしていくためにも、しっかりと原価率と粗利について理解しておきましょう。

飲食店の原価率以外で大切な営業利益

利益を歩く指

飲食店の経営状態を把握するには、「営業利益」の理解が必要です。ここでは営業利益の定義と計算方法を解説します。

営業利益とは?

営業利益とは、1カ月の粗利から飲食店の運営に必要な経費を差し引いた金額のことです。経費の例としては、以下のようなコストがあります。

  • 人件費や賃料(家賃)
  • 水道光熱費
  • 広告宣伝費
  • 福利厚生費
  • 修繕費

営業利益は収益力を示す数値であり、飲食店の経営状態の良し悪しを判断するための重要な目安と言えます。

営業利益の計算方法

計算方法の例

粗利=売上-原価
営業利益=粗利-販管費

営業利益は「儲ける力」を判断する指標と言われます。営業利益は粗利から販管費を引いて計算されます。販管費とは、お店を経営するための経費であり、人件費、賃料(家賃)、水道光熱費、宣伝広告費、福利厚生費、修繕費などが該当します。

たとえば、以下のような原価率30%の飲食店が存在したとします。

・売上:1000万円
・原価:300万円

この場合、

粗利 = 1000 - 300 = 700万円 となります。

さらに販管費を500万円とすると、

営業利益 = 700 - 500 = 200万円 となります。

まとめると、以下の計算方法です。

粗利=売上-原価

営業利益=粗利-販管費

ここで重要なのは、販管費は粗利から払われることです。よって、利益を上げるためには販管費の削減はもちろん、粗利の割合を多くする(売上アップor原価を下げる)ことが重要です。つまり、その他の条件が一定であれば、原価率を下げることで利益は増えます。

飲食店で原価率を抑えるための方法

大量の野菜

原価率を抑えるためには、食材ロスの削減が重要です。ここでは食材ロスの量を減らす方法を3つ紹介します。

適量の食材を仕入れる

飲食店で原価率を抑えるには、適量の食材を仕入れることが重要です。大量の食材を仕入れることもあるでしょうが、ロスが増えると、その分の購入費が無駄になってしまうからです。原価率を下げるためには、仕入れ量を最適化する必要があります。

また、必要に応じて食材の仕入れ先を見直しましょう。近年では、市場に出回らない規格外野菜(見栄えの良くない野菜)を格安で仕入れる飲食店も増えています。

ロスを減らして利益をあげる具体的な方策については、以下の記事を参考にしてみてください。

食品ロスを出さない方法とは?ロスを減らして利益をあげよう!

オーバーポーションに注意する

飲食店が適切な原価率を保つためには、オーバーポーションに注意することが大切です。オーバーポーションとは、注文のミスやレシピ通りに調理しないことなどによる食材のロスです。また、過剰な盛り付けをして規定の分量を守らないこともオーバーポーションに該当します。

オーバーポーションを防ぐためには、各メニューの分量をレシピに記載する方法が有効です。ピークタイムなどでは盛り付けの分量が雑になりがちですが、この方法によってばらつきを最小限に抑えられます。

適切に在庫管理をする

食材の在庫をきちんと把握することで、無駄な食材ロスを減らすことができます。食材を使うときは、「FIFO(ファーストインファーストアウト)」の徹底が大切です。FIFOとは、先入れ先出しのことで、飲食店においては古い食材から順番に使うことを指します。

FIFOを徹底するには、食材の消費期限を把握することはもちろん、仕込みを行った日付などを記録するのが効果的です。

飲食店のメニューや食材における原価率のポイント

お金を食す男性

原価率は、提供するメニューや使用する食材によって異なります。飲食店の原価はほとんど食材費であると考えられるため、食材によって原価率は高くもなれば低くもなるのです。極端な話をすれば、同じ食材でも時期によって原価率は異なることもあります。

中でも、野菜は頻繁に価格の変動が起きやすい食材の代表格と言えます。なぜなら、野菜の栽培には気候が大きく関係しているからです。たとえば、長雨や台風、そして気温の低い日などが続いてしまうなど天候の影響で、野菜が十分に育たず規格に満たない野菜となってしまい、十分な量を出荷することができなくなってしまいます。出荷量が減少するということは、それだけ市場に出回る量も限られてしまうので、仕入れ値が高騰するでしょう。その中でも原価を抑えるためには、安く栄養のある「旬の食材」をメニューに加えるなどの工夫が必要です。

このように、飲食店で使用する食材の中には、あらゆる要因によって、価格を一定水準に保つことが困難な場合があるのです。こうした理由によって、原価率は高くも低くもなるのです。

一般的に、飲食店の原価率は30%以内におさめるのが良いとされています。30%という数値は、利益を圧迫しないとされるギリギリの数値であると考えていただければ良いでしょう。しかし、野菜の例でご説明したように、飲食店における原価率は使用する食材や時期、また、フードやドリンクによっても大きく異なります。

フードメニューとドリンクメニューの原価率を比べてみると、ほとんどの場合、ドリンクメニューの方が原価率が低くなります。反対に、原価率の高い食材を使ったフードならば、原価率は自ずと高くなります。よって、すべての食材やメニューを、一律に原価率30%の数値に当てはめることは困難なばかりでなく、当てはめようものならお店の魅力を消し去る可能性もあるのです。

そこで考えなければならないのは、メニューごとの役割とバランスです。お店の看板メニューにしたい料理やメイン料理の原価率が多少高くなってしまったとしても、原価率の低いサイドメニューが売れ筋商品となれば、全体としての原価率を30%に抑えることができます。

大切なことは、全商品の原価率を一律に30%以内に抑えるのではなく、トータルで原価率を30%以内にするということです。そのためには、食材やメニューごとの原価率を考える必要があります。テイクアウトを実施している場合は、テイクアウト用の包材費や醤油やソースなどの調味料を添付する場合はその費用も加味する必要があります。

飲食店が原価率を把握するために重要なこと

棚卸しをする男性

原価率を把握することは、飲食店の経営状態を知ることにつながります。適正な経営判断をするため、原価率のチェックは欠かせないのです。特に飲食業界の場合、売上に対して店舗が得られる利益は非常に少ないと言われます。そのため、食材の廃棄ロスや全商品トータルの原価率などの情報は、経営者として正確に把握する必要があります。

原価率を知るためには、毎月の月末に食材の在庫量を確かめる「棚卸し」が重要です。棚卸しによって原価率を知れば、メニュー価格の見直しや在庫ロスを防止することができます。原価率を参考に、正確な情報を元に素早い経営判断ができれば、店舗経営を成功させるファーストステップをクリアしたと言えるでしょう。

しかし、在庫管理や棚卸しでは数字を多く扱うため、人的ミスが起こりやすいです。また、作業にはある程度のノウハウも必要なので、エクセルでの管理などが難しい場合は、POSレジと経営管理システムの導入をおすすめします。

POSレジには在庫管理を自動化する機能が備わっており、管理業務にかかる時間を大幅に短縮できます。また、経営管理システムを活用すれば、「売上」「人件費」「食材原価」などの情報を自動的に収集することが可能となり、いつでも簡単に店舗の経営状態を確認できるようになります。

飲食店の利益向上のためには、POSレジと経営管理システム導入で原価管理をしていくことが大切です。

なお、原価率を知るために必要な棚卸しのポイントや注意点については、以下の記事を参考に検討してみてください。

棚卸しをして正確な原価率を出そう!飲食店での棚卸のポイントとは

原価率だけにとらわれず、長期的な売上アップを目指そう

長期的な売上上昇

飲食店を経営する上で、原価率を意識することは重要です。安定した利益を得るためには、店舗の経営状態を正確に把握する必要があるからです。また、原価率を下げることで、店舗の営業利益を増やすことができます。

一方で、原価率を低くすることだけにこだわると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

  • 料理の味が悪くなる
  • コストパフォーマンスの低下
  • 顧客満足度の低下
  • リピート率の低下

料理の味が価格に見合わなくなり、顧客の不満につながってしまうのです。原価率の低い食材を使うことは必ずしも悪いことではありませんが、長期的には売上の低下をもたらすおそれがあるでしょう。

つまり、原価率を下げる際に忘れてはいけないことは、お客様のニーズに応えることです。お客様が求めているのは、料理のコストパフォーマンスや従業員のホスピタリティであり、これらが原価率の低下によって損なわれてはいけません。長期的な売上・集客アップを目指すなら、店舗の利益率と顧客満足度のバランスを取ることが重要なのです。

なお、飲食店における接客のポイントについては、以下の記事を参考にしてみてください。

接客マニュアルをつくろう!飲食店接客マナーの重要ポイントとは

飲食店が営業利益を上げるために知っておきたいこと

矢印を上昇させる男性

飲食店が「儲ける力」をつけるには、営業利益を増やすことが重要です。そのためには、粗利を増やす方法と経費を減らす方法の2つがあります。

粗利を増やす

粗利は、売上から原価(原材料費)を引いた金額です。そして、粗利を増やすためのシンプルな方法は、店舗の売上を増やしつつ、原材料費を下げることです。具体的な施策としては、以下が挙げられます。

  • 客数を増やす
  • 客単価を上げる
  • 食材ロスを減らす

しかし、明確な指針もなく場当たり的な施策を行うと、かえって客離れなどを起こしてしまう可能性もあります。飲食店の経営者は、店舗の経営状態や問題点を把握し、食材費や人件費を適正値にコントロールしなければならないのです。そこで重要となるのが、「FLコスト」という指標です。

FLコストとは、食材原価(Food)と人件費(Labor)の比率で損益構造を考える、飲食業界ならではのコスト概念です。そして、売上に占めるFLコストの比率を「FL比率」と言えます。通常、FLコスト比率が売上に対して、食材原価比率は30〜35%、人件費比率は27〜30%におさまり、FLコスト合計で50~55%というのが理想とされています。

飲食店によって目標とするFL比率は異なりますが、一般的に60%は超えないようにするのが良いとされています。上記のグラフを目安にして、FLコストが平均から大きく逸脱していないかチェックしてみてください。

たとえば、食材原価が高い場合には、ロスの削減や在庫管理を改善する必要があるでしょう。同様に、人件費が高い場合は、調理オペレーションやスタッフ人数の見直しが求められます。

      

しかし、繁盛している店ほど原価率が高く、40%以上となっているお店も多いと聞きます。よりよい食材を仕入れて料理の質を上げ、客数を増やせば仕入額は上がっていきます。こうした例は、客単価も上げる努力をしているとともに、人件費の無駄を省きながら効率のいいオペレーションを組んでいるのでしょう。客単価を増やす方法は、単純に言えば値段を上げることです。客離れをおこさないためにも、メニューや旬の演出、接客によるオススメなどの全体的な施策や工夫が必要になります。

よく、たくさん売るには値下げをしないといけないと考えがちですが、値下げした商品ばかりが売れてしまった場合、客単価を取り戻すのはとても難しくなります。タイムセールや期間セールなどで値引きを定期的にやっていく場合も、その時期ねらいのお客様が増えてしまい、通常価格の時期や時間帯の客離れが生じてしまう原因にもなりかねません。想定する客単価を設定したら、施策をよく考えて実行しましょう。

経費を減らす

経費とは、事業を行うために使用した費用(コスト)のことを指します。つまり、事業を行っていく上で発生した諸費用は、すべて経費として分類されます。飲食店で発生する経費は、以下の5種類に大別されます。

  1. 料理に関する費用_仕入れ費用や光熱費など
  2. 人に関する費用_給料や交通費など
  3. お金に関する費用_事業税や借入金の利息など
  4. 不動産に関する費用_店舗の賃貸料など
  5. 雑費_上記4種類の項目に当てはまらないもの

経費削減を検討する際は、これらを節約する必要があります。ただし、賃貸料(家賃)や利息などの固定費を削減することは難しいので、変動費の削減を目指しましょう。たとえば、食材の仕入れ費用に関しては、仕入れ先の見直しで大幅に削減できる場合もあります。無駄な経費が削減されれば、営業利益の増加が期待できます。

なお、経費のコントロールについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。また、粗利額を増やしたり経費を減らすことが、本当にお店の儲けにつながるのかを調べられる「損益分岐点」という指標について以下の記事で解説しておりますので、併せてご確認ください。

飲食店の原価率は健全な店舗経営に欠かせない指標です

利益とコストのシーソー

飲食店経営において、原価率を適切に管理することは重要です。利益を出すためには、原価率を抑えることが大切であり、経営戦略に欠かせない指標だからです。一方で、原価率を下げることのみに焦点を当てると、サービス品質が低下し、集客力を失う場合があります。

いずれにしても、飲食店の目標は長期的に営業利益を伸ばすことです。安定した経営を実現するためには、常にメニュー全体の原価率を把握し、状況に応じた経営判断が必要なのです。原価管理を最適化したい場合は、POSレジや経営管理システムの導入を検討してみてください。

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