ホテルのラウンジで飲むコーヒーは1,000円、カフェのコーヒーは350円、コンビニのコーヒーは100円というように、コーヒーの価格は業態によって大きな差があります。味にはそれほど違いは感じられないのに、この差はどこから生じるのでしょうか?
今回は、カフェを開業して収益を上げるために知っておきたいコーヒーの原価と、コーヒー豆の仕入れのしかたについて見ていきましょう。
コーヒーの原価はどのくらい?
原価とは、商品を仕入れるときにかかる費用のことです。コーヒーの場合は、次のように豆のグレードによって原価が異なります。
スペシャルティーコーヒー
品種、生産地、農園、栽培や精製方法などが明らかになっており、テロワール(栽培地特性)がしっかりと表現されているもので、品質の劣る豆が混じることのない最高級のコーヒー豆。原価は1㎏あたり6,000円前後です。
プレミアムコーヒー
ブルーマウンテン、キリマンジャロ、コロンビア、ハワイコナなど銘柄がブランド化しているものです。規格に適合した産地や農園の豆ですが、いろいろな産地や農園の豆を混合して出荷されます。そのため、品質が安定しないことが多く、原価も異なってきますが、5,000円前後が相場です。
コモディティコーヒー
生産地や豆の品種には関係なく、欠点豆(傷がついていたりサイズが小さかったりする不良豆)の量に応じて格付けされるもので、世界中で最も普及しているコーヒー豆です。ホテルやカフェ、大手コーヒーチェーン店、コンビニなどでも多く使われています。原価は2,800~3,000円です。
ローグレードコーヒー
工業用や加工用で、缶コーヒーやインスタントコーヒーに使われている豆です。食品の香りづけや味つけにも用いられています。
コーヒーの原価率は低い?高い?
コーヒー豆の原価について見てきましたが、利益を出すためには原価率を把握する必要があります。原価率とは売上(販売価格)に対する原価(仕入れ値)の割合のことで、「原価÷売上×100=原価率」の算式で求めることができます。
コーヒー豆1㎏から80杯のコーヒーが取れるとして、コモディティコーヒーを例に計算してみると、「2,800円÷80杯=35円」で、1杯あたりの原価が35円です。
1杯の販売価格を350円とすると、「35円÷350円×100=10%」で、原価率は10%となります。レストランのように料理を提供する飲食店の原価率は30%が目安とされています。それから見ると10%の原価率はかなり低いといえます。原価率が低いほど利益率が上がりますから、コーヒーはフードメニューより利益が多い商品ということができます。
しかし、原価35円というのは1杯分のコーヒー豆の原価であって、コーヒーマシン、砂糖やミルク、おしぼり、食器類、人件費、水道光熱費、家賃、その他の経費は原価には入りません。これらを加味して単純計算すれば、1杯あたり100円前後になるでしょう。
理論上では利益率が高いコーヒーですが、実際にコーヒーだけで収益を確保することは困難です。そのため、スイーツやサンドウイッチなどの軽食も提供し、ドリンクとフードの原価率をならして30%になるように設定するのが一般的です。カフェとレストランそれぞれの構成比率の目安は次の通りです。
- カフェ……ドリンクの原価率85%:フードの原価率15%
- レストラン……ドリンクの原価率20%:フードの原価率80%
全体の原価率を下げるには、ドリンクとフードそれぞれの中から「利益が出せるメニュー」と「売りたいメニュー」を組み合わせて提供するのがポイントです。
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コーヒーの価格設定の考え方
コーヒーの販売価格は、街のカフェは350~400円で、ホテルのコーヒーは1,000円、コンビニは100円という具合に大きな開きがあります。
では、ホテルのコーヒー豆はグレードが違うのかというと、豆自体にはそれほどの差はありません。ホテルでも原価は1杯あたり150円くらいです。ということは850円の粗利となります。仮に20席あるとして満席なら「850×20席=17,000円」で、1時間あたり17,000円もの粗利が出る計算になります。
価格が高くてもコンスタントに集客できるのは、家族連れやにぎやかなグループ客のいない、落ち着いた空間を求める人がそれだけいるということです。1,200円に値上げしても集客率が変わることはないかもしれません。
しかし、いくら粗利が大きくても、ホテルの場合は建物や内装、行き届いたサービス(人件費)などに多額の費用を投じていますから、トータルで考えると利益はほかのレストランや居酒屋とほとんど変わらないのです。
一方、コンビニの場合は一般のカフェより原価率が高く、セブンイレブンでは原価率約47%と公表しています。一般のカフェでの原価率は30%前後ですから、47%がいかに高いかがわかります。
原価率47%のコーヒーを100円で販売して採算が取れるのは、ほとんどがテイクアウトで人件費がかからないことと、回転率が高いためカフェの数倍ものお客様に販売することができるからです。
このように、コーヒーの価格設定にはこれが適正というものはありません。価格設定はお客様のニーズ(マーケット)に応えるための1つの要素と考えて、あまり30%という原価率にとらわれないことが大切です。
仕入先も厳選して、こだわりのコーヒーを提供しよう
カフェを開業する際は、コーヒー豆の仕入先を選定しなければなりません。主な仕入れ先としては「大手コーヒーメーカー」「コーヒー豆専門店」「近隣のコーヒー豆専門店」があり、それぞれ次のような特徴があります。
大手コーヒーメーカー
インターネットで「コーヒー仕入れ」「コーヒー豆、カフェ」などで検索するとたくさんの業者が出てきますので比較検討して選ぶことができます。
大手のコーヒーメーカーでは、豆の仕入れだけでなく、業務用コーヒーマシンを無償で貸し出してくれたり、リースの場合はリース料を安くしてくれるところがあります。UCCフーヅでは、開業に関する質問や相談にも応じています。
〈参考〉UCCフーヅ
コーヒー豆専門店
豆にこだわりたい場合は、仕入れ値(原価)は少々高くなりますが、スペシャルティコーヒーをはじめ良質のコーヒー豆を豊富にそろえている専門店を探して、自分のお店のオリジナルブレンドを開発するのもいいでしょう。
〈参考〉一紀珈琲株式会社
近隣のコーヒー豆専門店
近隣であれば直接足を運んでオリジナルブレンドを開発してもらったり、指導してもらうことができます。ただし、コーヒー豆をほかの業者から仕入れていることが多く、仲介業者が多いほど仕入価格が高くなる可能性がありますから、取り引きするときはその点を理解しておく必要があります。
そのほか、「一般社団法人全日本コーヒー協会」のHPを活用することもおすすめします。同協会ではコーヒーの消費拡大を図ってさまざまなイベントを実施しています。また、世界各国のコーヒーに関する最新情報を知ることもできるので、自分の求めているコーヒー豆を探し出すことも可能です。
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まとめ
いかがでしょうか?
コーヒーの原価率は、豆だけであれば10%とかなり低いほうです。しかし、家賃や人件費などの経費をプラスして考えればコーヒーだけで収益を上げるのは困難です。利益を出して経営を軌道に乗せるためには、コーヒー豆にこだわることも必要ですが、それだけでなく、フードメニューとセットで販売することで客単価を上げるなどの対策が重要になってきます。どのようにすればよいか迷うときは、繁盛しているカフェのメニューをリサーチして参考にするといいでしょう。
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