経営の効率アップにもつながる!電子帳簿保存法の導入メリットと適用条件を抑えよう

開業・経営

現代日本において、業務効率化や環境保全を目的としたペーパーレス化の流れは加速の一途をたどっています。その一環として制定されたのが「電子帳簿保存法」です。この法律によって書類や帳簿を電子データで保存できるようになりました。

しかし、電子データでの書類保存にはある一定の要件があり、それを満たす必要があります。また、メリットだけではなくデメリットにも目を向けつつ、導入を検討しなければなりません。

今回の記事では電子帳簿保存法の基礎知識と、メリット・デメリットについてご紹介します。

ペーパーレス化!電子帳簿保存法によりデータ保存が可能に

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類を電子データとして保存することを認めた法律です。

高度情報化・ペーパーレス化が進展し、パソコンでの書類作成が当然となる中で、法令で義務づけられている紙での情報保存が、経営活動や業務効率化の阻害要因となっているという実情に鑑み、1998年7月に制定されました。

制定時は要件が厳しく導入しづらいものでしたが、何度かの法改正を経て規制緩和がなされ、ハードルは下がりつつあります。

電子帳簿保存法で認められている保存方法とは?

電子帳簿保存法で認められている保存方法は以下の3通りです。特にスキャナ保存は今後活用が期待される保存法ですので、満たすべき条件をしっかり押さえておきましょう。

電磁的記録による保存

各種書類をパソコンで作成し、サーバーやDVD、CDなどに保存する方法です。

COMによる保存

各種書類をパソコンで作成し、COM(電子計算機出力マイクロフィルム)によって保存します。長期的保存に優れており歴史上の文献などの保存にも用いられていますが、採用している店舗や企業は少ないです。

スキャナによる保存

紙の書類をスキャンしてデータに変換、保存する方法です。紙の書類を書き換えたうえでスキャンすると容易に改ざんができるため、電磁的記録やCOMと比較すると、一定以上の性能を持つスキャナの利用やタイムスタンプの付与を義務付けるなど、適用条件が厳しく設定されています。

しかし、スキャナ保存に関する規制は税制改正のたびに緩和され、利用しやすくなっています。2016年にはスマホやデジカメで撮影した電子データによる保存が認められるようになり、2021年度の税制改正においては、タイムスタンプに関する規制が緩和され、一定の要件を満たすとタイムスタンプが不要となることが決定しました(2022年4月1日施行)。

領収書原本の保存が不要に

電子帳簿保存法の成立後も、法人や個人事業主は領収書を7年間保存しておかなければならないとされていました。しかし、ペーパーレス化が一層推進される中で、一定の条件を満たすキャッシュレス決済であれば領収書原本の保存は不要となりました。

現在では、クレジットや電子マネーで決済した場合、その決済データが領収書代わりになるため、領収書を作ったり保存したりする必要はありません。

電子保存が認められている書類

電子帳簿保存法が制定されたからといって、全ての書類が電子保存できるわけではありません。電子保存が認められている書類を分類別にまとめると以下のようになります。

分類

電子保存が認められている書類

国税関係

帳簿

総勘定元帳、仕訳帳、経費帳、現金出納帳、売掛金・買掛金元帳固定資産台帳、売上・仕入帳

決算関係書類

棚卸表、賃借対照表、損益計算書、その他決算に関して作成した書類

その他の証憑類

領収書、契約書、請求書、納品書、レシートなど

一般書類

見積書、注文書など

ただし、上記に記載されている書類でも、以下のものは電子保存が認められません。

  1. 手書きで作成した仕訳帳、総勘定元帳などの主要簿
  2. 手書きで作成した請求書の写しや補助簿
  3. 取引先から受け取った請求書

スキャナ保存が認められている書類

続いて、スキャナ保存が認められている書類をご紹介します。

スキャナ保存が認められている書類

領収書、請求書、レシート、契約書、見積書、納品書など取引先関係(受量分)の証憑類

上記に記されていない書類は電子データと書面保存のみ可能です。

電子帳簿導入のメリット

電子帳簿保存法の基礎をご紹介したところで、電子帳簿を導入することのメリットとデメリットについてお話します。

コスト削減(費用、スペース)会議資料を電子化すると印刷の手間が省ける

紙媒体への印刷をやめることで用紙代及び印刷代が節約できます。また、不要となった書庫を他の用途に利用したり、印刷の手間を省いたりすることはスペースや手間という面でのコストを削減するだけではなく、業務の効率化にもつながります。

業務の効率化

先ほどご紹介した通り、書類の電子データ保存により書類を保管するためのスペースや、印刷や整理、保管にかかる手間を省くことができ、業務効率が良くなります。

また、出先で書類の確認が必要な場合、わざわざ書類を持っていかなくてもインターネットやクラウドを利用してどこからでも書類を確認することができます。検索機能を使って膨大な書類の中からすぐに目的のものを見つけることができることも魅力です。

このように、書類の電子化によりどこからでも、素早く書類を確認できるようになり、業務の効率化が期待できます。

セキュリティ面の強化

膨大な書類を管理するのは非常に手間がかかるうえ、紛失、汚損、盗難などで書類をなくしてしまったり、情報が外部にもれてしまったりという事態にもなりかねません。しかし、データ保存し閲覧制限を設ければ、データを紛失したり盗まれたりといった心配なく、安全にデータを保管できます。

環境問題への配慮

ペーパーレス化を進めることで紙資源を節約し、省エネを推進できます。ごみ処理費が節約できるだけではなく、環境問題に意識の高い店舗であるというイメージをお客様や取引先に与えることができ、好感度がアップします。

電子帳簿導入のデメリット

このように書類の電子データ化にはさまざまなメリットがありますが、その反面さまざまなデメリットも生じます。メリットとデメリットを比較しつつ、導入やその方法は慎重に検討しましょう。

ランニングコストがかかる

データの電子化には費用がかかります。費用は会社の規模、データの保存を自社サーバーで行うかクラウドにするか、導入するソフトの種類などで大きく変わります。目安としては従業員200人の会社で、経費精算するのが100人くらいだとすると、ソフトの使用に年間200万円かかると考えておくと良いでしょう。

このように書類のデータ化には膨大なコストがかかりますが、もちろんその分用紙や印刷代の節約、スペースや業務の効率化につながり、費用以上の効果を得られる場合もあります。書類の電子化を進める際には、費用対効果に目を向け、導入の有無や方法を検討するようにしましょう。

慣れるまでに時間がかかる

紙の書類には紙ならではの使い勝手の良さがあります。例えば必要な箇所に付箋を貼ったり、手書きで文章やイラストを書き加えたりといったことは紙の書類でなければできません。もちろん電子データ化された書類はどこでも閲覧でき検索が容易という長所がありますが、紙ならではのメリットは失われてしまいます。紙の書類に慣れている社員は、取り扱いにくさを感じるかもしれません。

また、書類全てを電子データ化できるわけではなく、電子データ化の方法にも一定の要件があるため、それを把握するまでは業務に遅れが生じる恐れがあります。

新しいルールが適用される時は、移行期に必ず混乱が生じます。明確なルールやマニュアルの設定、社員研修の実施などで理解を深め、変化への不安を少しでも減らす必要があります。

システム障害によるデータが消える恐れがある

先ほど電子データ化された書類は紛失の心配がなくセキュリティが高いとご紹介しましたが、電子データならではの危険性もあります。例えばパソコン自体がクラッシュしたり、サーバーがシステムダウンしたりすると、データが失われる危険性があります。また、メディアで保存している場合は、メディアを紛失してしまうと保存されていたデータを丸ごとなくしてしまうことになりますので、取り扱いには注意が必要です。

サーバーの強化やデータの定期的なバックアップ、またメディアの保管方法のルール決めなどを行い、大切なデータが消えないよう対策しましょう。

電子帳簿保存法適用の流れと注意点

電子帳簿保存法は全ての店舗や企業において適用されるわけではありません。適用を受けるためには要件を満たしていることを確認したうえで、税務署に申請を行い、承認を得る必要があります。その流れや注意点を以下にご紹介します。

要件を満たしていることを確認

電子帳簿保存法の適用を受けるためには、電子データの真実性(データが本物であることを確認できる)と可視性(書類をはっきりと視認できる)を確保するため、以下の要件を満たしていることが求められます。なお、帳簿と書類で満たすべき要件が異なりますので、それも併せて押さえておきましょう。

要件

帳簿

書類

記録事項の訂正・削除をおこなった場合に、事実内容を確認できること

-

業務処理にかかる通常の期間を経過した後におこなった入力の事実を確認できること

-

電子化した帳簿の記録事項と、その帳簿に関連するほかの帳簿の記録事項との関連性を確認できること

-

システム関連書類等の備え付けをおこなうこと

電子化した帳簿書類の保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できること

取引年月日、勘定科目、取引金額その他の帳簿の種類に応じた主要な記録項目をもとに検索できること

日付または金額に関する記録項目を、範囲指定により検索できること

2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定し、検索できること

-

必要書類の提出

前述の要件を満たしていることが確認できたら、所轄の税務署に申請を行います。申請の際には以下の書類が必要です。

  1. 電子帳簿保存法の承認申請書
  2. 国税帳簿類の作成などが可能なシステム概要を示した書類1部
  3. 国税帳簿書類の作成などが可能なシステムに関する事務手続きの概要を示した書類1部
  4. 各申請書の項目を補完する書類

申請期限にも注意

電子帳簿保存法の申請手続きは、原則国税関係帳簿の電子保存に関するシステムを整える3か月前までに行う必要があります。ただし、2019年の法改正により、新たに個人事業主として事業を始める場合は、事業開始日から2か月以内であれば申請手続きできるようになりました。

しかし、ただでさえ多忙な開業前に電子帳簿保存に関するシステム整備や申請を行うのは大変です。「2か月前までに準備すればいい」と油断せず、早い段階から計画的に準備をしておくようにしましょう。

2021年度の法改正で申請不要に

上記の通り、電子帳簿保存法を適用するためには要件を満たしたうえで必要書類を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。しかしその準備に多大な手間がかかるため、電子帳簿保存の利用は進まず、大きな課題となっています。

そうした現状に鑑み、2021年度の法改正にて事前承認制度の廃止が決定されました。2022年1月1日の施行後からは、電子保存に対応した機器やシステムが整えば即日電子保存が可能となります。ただし、国が定める要件がなくなるわけではないので注意しましょう。

まとめ

電子帳簿保存法に基づいた電子データの保存法と、メリット、デメリットについてご紹介しました。

導入の際に手間はかかりますが、軌道に乗ればコスト削減や業務の効率化につながります。書庫として使っていたスペースを食材や備品を保管する倉庫に転用できる、書類の整理や保管に費やしていた時間を削減して店舗運営に集中できるなど、働きやすい環境を作ることができるでしょう。

電子帳簿保存法はペーパーレス化が推進されている現状に即し、法改正による規制緩和を繰り返しており、導入しやすくなっています。この機会に、電子データでの保存を検討してはいかがでしょうか。

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