この記事のもくじ
飲食店の経営を行っている経営者や店主、店長様の中には、料理には優れた才能を発揮できるけど、経理とか計数管理ということになるとどうも自信がない、と言われる人が多いようです。
飲食店の基本的な計数管理の中に、重要な管理項目として原価率があります。原価率は、毎月の売上高に占める材料費・食材費の割合です。昨今の食材費の高騰に頭を悩ましている方も多いのではないでしょうか。
この材料費・食材費を正確に導き出すためには、棚卸しが避けて通れません。棚卸し作業自体は難しいものではありませんが、仕入れ品目が多いお店では、なかなか面倒で工夫がいる仕事です。しかしメリットもありますのでしっかり行っていきましょう。
今回は、その棚卸しについて解説します。
棚卸しとは
棚卸しとは、毎月決めた日に食材などの在庫の実数を定期的に調べて記録することです。つまり在庫管理ということです。そして在庫数・在庫金額を調べて売上に対応する商品原価を把握します。
お店にある材料、食材、仕掛品、未製品、製品、商品など、調理する前の原材料から仕込み中、出来上がっているがまだ店頭に出していない商品まで、販売前の全ての材料、商品の数量や金額を調べる必要があります。 飲食店の場合は、通常月に1回、決めた日に行います。
食材ロスを軽減し、適正在庫を把握することが目的で、お店に合った棚卸表を作って記入していきます。
※ストローや割り箸などの消耗品は、商品ではないためカウントはしません。
なぜ棚卸しをする必要があるのか?
棚卸しを実施することはさまざまな理由がありますが、主な目的としては、
- 正確な利益(売上総利益)と原価率を確認すること
- 在庫ロスを防止すること
- 売れない在庫を把握すること
です。
売上総利益(粗利益)は、売上高− 売上原価で算出できます。 もう少し詳しく説明しますと、 売上総利益(粗利益)=売上高−(期首棚卸高+当月仕入高 − 期末棚卸高)となります。ごらんのように棚卸し高によって利益の額が増減します。利益が出ていると思っていても、棚卸しをしたらそれほど利益がでていない、または赤字になっているかもしれません。それらを把握しておくことは店舗運営にとって非常に大切です。
原価率は売上に対する原価の割合で、
原価率 = (期首棚卸高 + 当月仕入高 − 期末棚卸高)÷ 当月売上高 × 100
の数式で算出できます。
原価率は常にチェックしていなければならないデータで、飲食店は、通常原価率30%以内と言われています。しかし、メニューの中に戦略的に60%、70%のものがあってもトータルで管理されていれば問題ありません。
自分のお店の原価率は正しく把握していないと、お店のコントロールや改善ができません。 このように利益や原価率に重要な役割を持っているため、棚卸しはどうしても必要な仕事です。
棚卸しは、一週間に1度であったり、月に1度決まった日に実施します。営業時間中はなかなか難しいと思いますので、業務終了後にカウントすることがおすすめです。余分な仕入れ、発注が防げるだけでなく、在庫ケースの掃除や整理整頓もできます。新鮮な食材は賞味期限が極端に短く、在庫回転率の高い食材です。どの食材が出て、どの食材が滞留しているのか、棚卸しをすることによっていち早くチェックができます。
飲食店の食材は、このように賞味期限が短いのが特徴です。在庫が多いと、廃棄処分しなければならない量が増え、大きなコストアップとなります。 仕入れた量はお金の支払いが発生し、在庫として残っている分は売れるまでお金に代わってきませんから、運転資金が停滞した状態となり、利益は出ているのにお金が残っていない原因の1つとなります。
棚卸しの計算・評価方法
前項で、売上総利益(粗利益)と原価率の計算式を記載しました。この中に棚卸高があります。 棚卸しには期首棚卸高と期末棚卸高があります。月に1回の棚卸しを行う場合、期首棚卸高は前月末時点の棚卸額、期末棚卸額は当月末の棚卸額でその実数がそのまま次月の期首棚卸高となります。
特に飲食店の仕入れの材料費は、毎月相場によって激しく変化します。また材料費の評価に伴う単価が問題となり、単月でも週によって変化することがあるでしょう。 当月仕入高は、仕入れた金額、単価でそのまま評価をおこないます。期末棚卸高は、色々な評価方法がありますが、棚卸直近の仕入れ価格・単価で計算する「最終仕入原価法」が一番簡単です。
評価方法を1度決めたら、よほどのことがない限り変更しないようにしましょう。
年1回の確定申告を行うためには、事前に「棚卸資産の評価方法の届け出」を税務署へ提出しておかねばなりません。提出していないと、税務署では、最終仕入れ原価法で計算します。最終仕入れ原価法とは、最後に仕入れた単価をその商品のすべての在庫品の単価とする方法です。
棚卸しの評価方法は
- 個別法
- 先入れ先出し法
- 総平均法
- 移動平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
などがあり、最終仕入れ原価法では不都合がある場合は、届け出が必要です。これは業種や商品、仕入れ量によって異なりますので、どのやり方がいいかは税理士などとの相談をおすすめします。
棚卸しのポイント・注意点
食材の棚卸し
飲食店の棚卸しの方法における食材の評価は、通常、最終仕入れ原価法(先入れ先出し法)または移動平均法が使われています。
最終仕入れ原価法は前述しましたように、棚卸時点直近の仕入れ価格、単価で評価する方法です。移動平均は、当月の仕入れ価格の平均値をとって単価にして評価する方法です。どちらの方法でもいいですが、一度決めたら評価方法を変更しないようにしましょう。
飲食店の棚卸しで難しいのは、食材の仕込み中あるいは、仕込みが終わった食材の評価をどうするかという点です。野菜から皮をむいた状態、魚なら骨を取り除いた状態肉なら余分な脂を取って保管状態になっている状態など、すでに仕入れ時点での価格ではなくなっています。これはつまり歩留まりが発生していることです。この歩留まりを計測した後の食材の価格で棚卸し計算を行います。しかし、実態はここまで正確にカウントしている飲食店は少ないかもしれません。
ドリンクの棚卸し
飲食店のドリンクの在庫は、食材ほど在庫期間が短くないため在庫管理がしやすいです。ドリンクはほとんど仕入れた状態で加工しないで供給ができます。だからといって過剰に在庫を持つと、支払いが大きく先行しますから、資金繰りに悪影響をもたらします。
また、ビールや日本酒などは賞味期間をきちんと守らないと、お客さんからクレームが出る場合がありますので要注意です。 在庫量の目安としては、FD比率が参考になります。売上に占めるFood(料理)とDrink(ドリンク)の比率を見るためのものです。
飲食店では、利益率が高い(原価率が低い)のは、料理ではなくドリンクです。ドリンクは提供するまでの手順が簡単で、食材廃棄がほとんどありません。つまりロスが少ないわけです。したがって、ドリンクをいかにたくさん売り込むかが飲食店の利益確保のコツとなります。
参考値ですが、レストランのFD値(料理 : ドリンク)は8 : 2、居酒屋で6 : 4、バーで1.5 : 8.5くらいが目安といわれています。
期末の棚卸の注意点
特に12月末の在庫数には注意しましょう。
確定申告では1月〜12月の所得に応じ税金額が決まります。例えば2020年の年末の棚卸し金額(売れ残っている商品)はこの年の経費として計上されず、翌年2021年以降(商品が売れた年)の経費となります。在庫状況が多いと売上原価、利益も変わり、税金にも影響します。普段から定期的な棚卸を行い、無駄な在庫を持たないようコントロールしていきましょう。
まとめ
飲食という業界も食材費の高騰を受けて、どこも厳しい経営を余儀なくされています。 そうした中でも大手飲食業界では、計数管理を徹底して、かなり詳細に亘る店舗経営のノウハウを確立して、抜きん出た利益を確保しているところもあります。
個人商店によくあるドンブリ勘定では、やがて淘汰されてしまいます。時代の移り変わりとともに消費者の嗜好も大きく変化してきています。時代の方向を見極める能力も必要です。飲食店の店主としては、頭に痛いことばかりが、次々と発生していますが、店主のスキルとして、おいしい料理を作るという、誰でもできない能力を持っているわけですから、それと比べれば、計数管理は難しくありません。
最近では計数管理や在庫棚卸し、原価率などは導入し易い会計ソフト、POSと連携可能な棚卸し機能のある在庫管理システムがたくさん出ていますし、さほどの抵抗なしに導入が可能です。自店にあった適切なシステムを取り入れどんなに小さな飲食店でも棚卸しをしっかりおこなっていきましょう。
最後に、棚卸作業もできる在庫管理システムを「ユビレジ 在庫管理」ご紹介します。
こちらはクラウドで在庫管理、発注管理をサポートするシステムです。現場の負担となっている作業を減らして本来の接客業務に集中することが可能になります。
棚卸だけではなく、バーコードの読み取り・ラベル作成・発注書の作成・原価管理・在庫切れアラートや棚卸時にはバーコードで商品を読み取って入力できたりなど、便利な機能がたくさんありますので、ぜひチェックしてみてください。
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