接客業が辛く、ストレスが溜まる仕事といわれている理由のひとつに、お客様のクレームがあります。もちろん、クレームがない仕事はありませんが、接客業はお客様と直に対面して話すため、頻度が高いです。中にはお客様に言われたことをずっと抱え込んでしまうスタッフもおり、そのクレームが原因で辞めてしまうこともあります。反省をして次に活かすことが大事であり、いつまでも落ち込んではいけません。気分はその日の仕事に大きく影響するため、切り替えが重要です。
そこで今回は、お客様のクレームへの一般的な対応と言葉遣い、マニュアル作成のコツ、そして落ち込まない心の持ち方について解説します。
クレーム対応をしっかりと行う理由
なぜクレームへの対応が重要なのでしょうか。それは、お客様への会社の姿勢を表すからです。ビジネスはお客様があって成り立っているので、真摯に対応しなければいけません。クレーム対応は辛い仕事ですが、だからこそ会社の姿勢が問われます。
店舗やカスタマーセンターに寄せられるクレームの中には、あまり相手にするべきでない悪質な物もありますが、基本的には真摯な対応が求められます。では、そもそもなぜクレーム対応に力を入れる必要があるのでしょうか?
商品やサービスの質を向上させるため
お客様から寄せられるクレームはお店で提供しているサービスや商品に対する「苦情」が大半です。そのため店側としては耳の痛くなる話ばかりですが、お客様からのそういった苦情・不満はお店に対するアドバイスと捉えましょう。接客や料理に気を配っているつもりでも、実際にお客様にどのように受け取られているのか、普段は分かりづらいものです。お客様が気がかりになった点は貴重な意見として受け止め、商品やサービスの質を向上させるためのポイントとして活用するのが得策であり、長い目で見るとお店のメリットにもつながります。
お店の信用を損なわないため
クレーム対応をおざなりにしてしまうと、お客様からの信用を大きく失うことになります。また、お店選びにネットの口コミを利用するお客様も多いため、1人の評判が集客に大きな影響を及ぼしてしまうこともあります。冒頭でもお伝えした通り、クレームの中にはいかにも悪質な内容やお客様自身の勘違いという場合もありますが、それが自店に向けられたものである以上、まずは真摯に向き合うことが大切です。実際の対応に関しては内容を精査した後でも考えられますので、まずは目の前、あるいは電話口のお客様に対してしっかりと耳を傾けましょう。
お客様の声に耳を傾ける良い機会であるため
クレームというと、「罵声を浴びせられる」「難癖をつけられる」「怒りをぶつけられる」といったネガティブなイメージをお持ちの方も多いと思います。しかし、実際は落ち着いた口調で報告して下さるお客様、店員目線では見落としてしまう点を気づかせて下さるお客様など、むしろこちらに利益をもたらしてくれるクレームもあります。
また、そういったお客様の声は日頃聞く機会がないので、お店の経営をしていく上で非常に貴重な情報となります。中にはアンケートを設置しているというお店もあるでしょうが、ああいった物は提出率もそれほど高くなく、当たり障りのない意見が書かれることも多いと思います。その点クレームは、憤りや心配にしろ、お客様の強い感情を伴った意見なので、より中身のある物である場合も多いでしょう。クレームだからといって聞き流す、その場しのぎにするのではなく、お客様の声を直接受け取れる良い機会だと考えることが大切です。
飲食店でよくあるクレームとは?
飲食店に寄せられるクレームには、ある程度傾向があります。まずはよくあるクレーム内容と、それらへの対応を考えてみましょう。
食事に異物が混入していた
調理中に髪の毛や袋の破片等の異物混入が発生し、お客様が気付いた場合です。その場ですぐに報告いただくことも多く、他のお客様の目にもつきやすいので迅速に対応する必要があります。まずは誠心誠意謝罪し、すぐに代わりの料理を用意するようにしましょう。また、できれば料理長や調理担当が直接謝罪すると良いですね。
接客態度がなっていない
接客態度に関するクレームも上位を占めます。もしも特定の従業員に対するクレームであれば、お客様が覚えている限り従業員の名前や特徴を聞き出し事実確認を行いましょう。接客に関するクレームはスタッフ全員で共有するのがベストですが、まずは当該の従業員に聞き取り調査を行い、双方の言い分を聞くことも大切です。その上で、今後に生かせる部分は周知させるようにしましょう。
料理や飲み物の提供に時間がかかってしまった
「注文してから料理が提供されるまでの時間が長すぎる」というクレームをいただいた場合は、お客様の来店日とおおまかな時間をお聞きしておきましょう。もしその日時は人手が足らず提供に時間がかかってしまった、といったような確かな事実があれば、スタッフのシフトや人員の増加も含め見直すべき点を洗い出します。お客様には誠心誠意謝罪し、今後提供時間を早められるよう対策を講じていくことをお伝えしましょう。
飲食店での正しいクレーム対応とは
では、飲食店でのクレーム対応の正しい手順を確認していきましょう。
- お客様の話をしっかりと聞く
クレームを受けた者はまずは仕事の手を止めるか、ほかのスタッフに代わってもらい、お客様の話をしっかりと聞きます。
クレームの内容について、事実の部分(食べものに何かが混じっていた、提供する順番を間違えたなど)とお客様の感情の部分(気持ち悪かった、腹が立った、イライラしたなど)を頭のなかで整理しながらお客様の話を最後まで聞き理解しましょう。
- お詫びをする
何よりも先に「この度はご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした」と謝罪します。
たとえお客様のおっしゃっていることが何かの間違いであったとしても、当店でそのような思いをさせてしまったことにお詫びをするべきです。
- 誠実に、正面から対応する
お客様のご指摘について、すぐに対応出来る場合は何よりも優先します。すぐに対応できないとわかった場合は、必要な時間を調べ、お客様に伝えるようにしましょう。
「5分から10分ほどお時間をいただくことは可能でしょうか?」
お急ぎの場合があるかもしれません。あまり待ち時間が長くならないよう注意しましょう。常にお客様のご都合を優先させてください。また、その場で解決できた場合でも店の責任者にすぐに報告しておくことを忘れないようにします。スピーディーかつ心のこもった対応が求められます。
- 必要があれば、責任者に交代する
時間がかかると判断した場合は、すぐに店長などに報告し対応方法を検討しましょう。
「店の責任者を呼んで参ります。少々お待ちくださいませ」
責任者には事実の部分と感情の部分を整理して伝え、責任者が応対する際にお客様が繰り返し説明することがないようにしましょう。お客様がお帰りになる際に、責任者が再びお詫びを申し上げ、店先までお送りするなどの対応も必要になります。店舗経営者や店舗責任者は、日頃からクレームなどを予測して、代替案や怪我等された場合の補償方法、治療費に関する知識や提案、二度と起こさないための施策について準備しておきます。
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電話でクレームを受けた場合の対応方法とは
飲食店へのクレームは電話で寄せられることも多いでしょう。アンケート用紙やメールと異なり、相手の感情がダイレクトに伝わってくるので怯んでしまいますが、落ち着いて対処することに集中しましょう。
まずはじめに、クレーム内容をよく聞くことが大切です。問題が発生した日時や詳しい状況など、お客様の言葉を聞き洩らさないよう、適宜メモを取るなどして耳を傾けます。お客様のお話が終わったら、まずは謝罪の言葉を述べます。反論はもちろんNGですが、ここで内容を聞き返したり、質問を重ねてしまうとお客様の神経を逆なでしてしまいます。より詳しい内容を聞きたい場合も、まずは謝罪の言葉を述べてからにしましょう。
飲食店に電話で寄せられるクレームは、接客態度に関する事柄が多く、その場ですぐに解決できるものではありません。しかし、お客様にはできる限り解決策を提示するようにします。たとえば、当該従業員に再教育を行う、全体に周知するというように、今後店としてどのように対処していくかを明示しましょう。
最終的にお客様に納得していただけた場合には、貴重なご意見をいただいたことに感謝の意を述べ、念のため連絡先を聞いておくことも忘れずに。
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悪質クレーマーにはどう対応したらいい?
お店側に非があるならば、当たり前ですが真摯に謝罪して、問題を解決しなければいけません。
しかし中には、悪質で理不尽な要求をしてくるクレーマーがいるのも事実です。最近では「カスタマーハラスメント」という言葉をよく耳にするようになってきました。ただ気をつけたいのは、「悪質クレーマー」と決めつけて顔に感情を出したり、面倒に思う態度が伝わったりしないようにすることです。そのことが伝わると相手は余計にエスカレートし、店の非があるところを次から次へと挙げては謝罪を求めてきます。
肝心なのは、事実を確認し、その事実に絞って対処していくことです。もし事実かどうかわからない場合は、適当な対応をせず可能な限り調べるようにしましょう。時間がかかるようであれば、責任者の権限範囲で具体的な対処を相手に伝えましょう。こちらに非がなく、必要な対処をしたにも関わらず、執拗に代償を求めてくる場合は弁護士など店外の専門家に相談する必要があるでしょう。
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誰でもクレーム対応ができるようにしておこう
クレームはいつ発生するかわかりません。店長や社員がいない際に起こる可能性もあるでしょう。しかしお客様にとっては、社員もパートもアルバイトも関係ありません。つまり、誰でもクレーム対応ができるように準備しておく必要があるのです。ではどんな準備が必要なのでしょうか。
クレーム対応マニュアルを作る
クレーム対応は一朝一夕に身に付くものではなく、また、飲食店においては早々頻繁に対応するものではないので、マニュアルを作っておくと安心です。
その際、今回あげたような「よくある事例」や、来店中、電話、ハガキといったようなそれぞれのケースに応じて大まかな流れを決めておきましょう。スタッフ全員が頭に入れておくことは大切ですが、とっさの判断でベストな行動を取るのは難しいため、マニュアルは明文化して誰でも閲覧できる状態にしておくことも肝心です。
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アルバイトがクレームを受けたときの対応をしっかり決めておく
アルバイトがクレームを受け付けた場合は、アルバイト本人が当事者であるないに関わらず、必ず責任者または正社員を呼ぶように決めておきましょう。
お客様も責任ある者からの謝罪を望む場合が多いですし、適切に対処するためにもアルバイト1人に対応させるのは悪手です。上記のマニュアルにはその旨を記載するとともに、アルバイトに対してもクレームを受けた際の行動をあらかじめ教育しておきましょう。
接客のストレス解消のコツ
接客業は大変な仕事です。つらいときや、ストレスが溜まる日もあります。では、どのように解消・発散すればいいのか。接客のストレスを解消する一番の対処法は、やはり接客そのものです。
クレームをおっしゃったお客様もいれば、「美味しかったよ」「いい店ね」「友達にも紹介しておくね」と褒めてくださるお客様もいます。ミスやクレームは反省点として次へ生かし、よいところにフォーカスするようにしていきましょう。その日単位やその週単位でみれば、いいこともよくないこともプラスマイナスゼロであるくらいの心情でいると、また次に進むことができるはずです。
まとめ
いかがでしょうか?
クレーム対応は誰もが嫌がる仕事ですが、サービスの品質を底上げする良い機会でもあります。マニュアル化してしまえばクレーム対応へのハードルもぐっと低くなりますので、まずはよくあるケースごとに一連の流れと注意点を明文化しておきましょう。その上で社員やアルバイトに周知して対応方法を把握できていれば、クレーム対応もそう怖いものではありません。お店の信用を失わないためにも、事前にしっかり取り決めて丁寧な対応ができるようにしておきましょう。
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