飲食店経営者や店長の皆さんは、自店舗の営業時間をどのように決めていますか?
何となく「常識的だと思われる時間で決めている」「自分が起きて仕込みに行って開店準備ができる時間から逆算している」という方も意外に多いのではないでしょうか?あるいは、店を閉めているとその間に見えないところでチャンスロスがあるような気がしてついずっと開けていたり、その時間帯に1人でも来店があればそれでOKだと思ったりはしていませんか?
店を開けているということは、それだけでコストが発生しています。少しでも利益をあげるためには、そのコストの使い方、つまり営業時間をどう設定するか、ということが経営上は非常に重要になります。
ここでは、営業時間の決め方の原則、そして見直す場合のポイントについてご紹介します。
飲食店の営業時間の原則とは
それではまず、飲食店の営業時間を決める上での原則についてご紹介します。
営業時間設定の判断の原則は利益が出るかどうか
まず大前提の基本は「その時間に営業していてどの程度利益が上がるのか」ということですべてを判断するということです。
意外にそのあたりについて無頓着な経営者の方も多いのですが、店を開けていてその間にノーゲストであればその時間帯は赤字だというイメージはあっても、実は来店があっても赤字の場合があるという認識が薄いようです。
それはなぜかと言えば、来店があろうとなかろうと、店を開けているということは、光熱費と人件費がかかっているからです。もちろん、一方で店を開けていない時間にも家賃と減価償却費はかかっていますから、常に店を開けておきたいという心理の背景には、その固定費を少しでも吸収したい、というものがあるのでしょう。
したがって、以上をまとめると、
- A営業することで生じる1時間当たりの人件費と光熱費
- B営業しなくてもかかっている1時間当たりの家賃と減価償却費
を算出し、その時間の粗利からAとBを引いて、それがマイナスであればそれはむしろ営業しないほうがメリットがあり、少しでもプラスになるようなら営業したほうが良いということです。
周辺の客動線を観察して集客できる時間には必ず開ける
その店舗の立地の特徴に合った時間帯に営業しているかどうか、という判断基準も重要です。
ビジネス街の立地なら、たとえば居酒屋業態であっても「朝定食」を営業すれば利益が見込めるのに、夜の店だからと閉めている場合も見受けられます。逆に住宅地なので午後6時には閉店すると頭から決めてかかっているカフェでも、実は遅い時間にサラリーマンやOLが帰宅前にほっと一息リラックスして気分をリセットする店を求めていたりする、というような潜在需要が見込める場合があるのです。
したがって、その立地での客動線、客動向をよく観察して営業時間は決めたほうが、思いがけず利益をあげることができます。
シフトと労働基準法の関係をクリアする
営業と利益の問題だけを考えて営業時間を判断したときに、落とし穴になりやすい点が1つあります。それは労働基準法の問題です。
労働基準法は規模や業態に関係なくあらゆる事業所に適用される労働者を守るための法律で、その中で、1人の従業員が1週間で働いてよい時間は合計40時間以内(小規模の事業の場合は特例で44時間以内)、月に休日を4日与える、ということが決まってます。
これは個人経営の飲食店でも、相手がアルバイトでも同様です。従業員と経営者の間で協定を結べば、残業や休日出勤をさせることはできますが、いずれにしても守らなかった場合は、最悪経営者の逮捕もあり得ます。
したがって、仮にいくら1日に20時間営業すればどの時間帯でもさらに利益が上がるということが分かったとしても、その時間帯に労働基準法を守りながらシフトが組めるだけの現有戦力の従業員の態勢が整っているかどうか、ということも同時に判断しなければならなりません。
それが無理なら、営業時間の拡大と求人をセットで考える必要があります。
決めた時間には必ず開ける
一部のややラフなスタンスで営業している店長、経営者の方の場合ですが、11時開店と言いながら、仕込みが間に合わないから今日は11時15分になった、11時には開けたけれど料理を提供し始めたのが11時45分だった、ということがあります。
こう言うことが続くと、よほどその店が好きな人か、店長のそのスタンスを含めて認めているという特異なお客様しか結局は残らないでしょう。一度営業時間を決めたらそれを死守するということが基本中の基本です。
実際に業態別~営業時間の考え方
では実際に業態別に営業時間を考えていきましょう。
居酒屋
まずは居酒屋で飲食を楽しみたいというターゲットが来店する時間帯を把握しましょう。主な客層は仕事終わりのビジネスパーソンでしょう。
退社してから居酒屋で軽く一杯、それから家に帰るという方が多いのではないでしょうか?
そのため午後5時前後から午後11時くらいまで営業している居酒屋が多いようです。
来店客のピーク時間帯は午後7時から午後9時くらいが目安です。また金曜日、土曜日などの週末の晩もかなり来店が多いようです。
ターゲット層が来店しやすい時間帯にできるだけ待ち時間をなくし、来店後すぐにおつまみやお酒を提供するなどの工夫が必要です。
もし0時を過ぎても営業を行う場合は、深夜酒類提供飲食店となり、公安委員会に「深夜酒類提供飲食店開始届」を提出しなければなりません。
もし届け出を出さなければ営業できない場合があるので注意しましょう。
また、きちんとラストオーダーの時間を表示したり、お客さまに伝えることも大事です。
レストラン
オフィス街にあるレストランの場合、昼休みの12時から13時がピーク時間になります。しかしその時間帯を過ぎるとかなり客数が減ります。
そのため営業時間を午前11時から午後2時半まで、午後は退社後のサラリーマンたちの来店を狙って午後5時半から午後9時半まで営業するなど、時間をきちんと区切っているお店があります。
一方、郊外にあるレストランの場合、ゆったりとランチ、ディナーを楽しみたい主婦層、ファミリー層、カップル層が多いため、ランチタイムは午前11時半から午後14時過ぎくらいまでに設定すると、客層の幅を広げることができます。
また、ディナータイムは午後7時から9時までが一番込み合う時間帯です。
週末や祝日はブランチを楽しみたい、遅めのランチを取りたいというお客さまが多いので営業時間を長めに取るようにしているお店もあります。
そのため営業時間を午前10時半から午後3時半、午後6時から午後9時半にすることもできるでしょう。
ラーメン屋
ラーメン屋ではスープの仕込みがあり、他の飲食店よりも仕込みに多くの時間がかかります。そのため営業時間を午前11時半から午後2時、午後6時から午後10時までとしているお店が多いかもしれません。
しかし、お店によっては他のお店と差をつけるために翌日深夜1時までの営業を行っているお店もあります。そうした店舗の場合は、他のお店で夜の仕事をしているスタッフが仕事終わりにラーメンを食べに行くことができたり、残業が長引いたサラリーマンが時間を気にせずラーメンを楽しめるなど人気があります。
こうしたいろいろなニーズに応える取り組みによってお店の利益が上がるという良い結果に繋がっています。
カフェ
カフェでゆったり時間を過ごしたい、読書を楽しみたいなどカフェでの時間を大切にしておられる方は多いのではないでしょうか?
多くのカフェでは午前11時から午後7時くらいまでが営業になっています。
飲み物以外にケーキやパン、なかにはパスタなども提供してるお店もあります。
また最近ではモーニングを提供してるカフェも増えていますので、朝はゆっくり読書や勉強をしながらカフェで過ごすという人もいるようです。
そうすることにより学生や高齢者、サラリーマンなどの需要も増えて、収益につながるという良い結果があります。
このため午前7時に開店し午後7時で閉店、と長めの営業時間を設定しているお店もあります。
しかし個人営業の場合、営業時間が長くなるとその分体力の負担や人件費がかかることも考慮しなければなりません。
長時間営業にはメリット・デメリットがある
では長時間営業のメリット・デメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
【メリット】
●顧客を獲得できる時間が長い
営業している時間が長いため、いろいろなニーズの顧客を取り込める、というメリットがあります。
●深夜帯に働きたい兼業の人に働ける場所を提供できる
事情により、昼間は普通に仕事をして夜の時間に数時間アルバイトをしたいというニーズもあります。
もちろん、体力的には大変だとは思いますが、夜間、深夜帯ならアルバイトができるという意味ではメリットです。もちろん、人材が集まらなければこの点はデメリットになってしまう点ではあります。
【デメリット】
●人件費がかかる
長時間営業しても思った以上に来客数が増えず、一方で人件費は変わらず支払う必要があるためかえって赤字になってしまうことがあります。
●長時間労働による質の低下
長時間営業に伴い、従業員の勤務時間も長くなるため、仕事の質が低下したり、お客様に対するサービスに影響が出ることがあります。
また、人員不足などの問題があるならその影響はさらに大きなものとなるでしょう。
●食材を無駄にする傾向がある
営業時間が長いということはそれだけ多くの種類のメニューを提供しなければなりません。
そうしなければお客様が飽きてしまい、客足が減る可能性があるからです。
しかし多くの種類のメニューを提供する一方、それらの食材が無駄になってしまう可能性が増えるのも事実です。そのため全体的に見て長時間営業がプラスにならないことがあります。
●光熱費がかかる
もし長時間営業をして収益が人件費や光熱費をかなり上回っていれば問題ありませんが、あまり収益が見込めないなら光熱費が負担になることがあります。
長時間営業を考えておられるならあまり性急に判断せず、以上のメリット・デメリットをよく検討することをおすすめします。
開店時間と閉店時間を見直すポイント
では以上を前提に、店舗の開店時間、閉店時間、あるいは中間のアイドルタイムをどのように決めるかのポイントについて説明します。
客数の動きと街の客動線を見る
まずは、店舗の立地にどのような特性があるのかということをよく観察しましょう。
まず現在の営業時間中については、曜日ごとに1時間単位の来店客数を最低でも2か月間記録し、曜日ごと×1時間単位で集計します。閉店時間中やアイドルタイム中については、最低1週間は店の外に出て、その時間帯にどういう人がどの程度前を通るのか、ということを観察します。
前者によって、曜日ごと×1時間単位の来店数が、今までは感覚だけだったものが数字として明確にわかります。後者によっては、その人の観察眼次第ですが、意外に人通りがあるとか、隠れたニーズが眠ってそうだ、とかの判断の参考材料が見つかります。
曜日ごとの1時間単位の利益を算出する
最終的には利益が上がっているかどうかが基準になりますので、今度は毎日の営業時間内の1時間単位での利益を出します。
1時間単位での売上から原価を引き、その間にかかった人件費、光熱費、そして1時間単位に割り戻した家賃と減価償却費を引いて算出します。
これも最低2か月間は集計して、それを曜日ごと×時間単位にまとめます。すると、明確に、利益が出ている曜日と時間帯、赤字になっている曜日と時間帯がわかります。
以上の方法で実態がつかめたら、
- 今の営業時間のうち赤字の時間帯の閉店
- 可能性がありそうな時間帯にテスト的に営業してみる
という方向で営業時間の見直しを行いましょう。
曜日ごとの変更も可
これらの分析をすると、来店があって利益が上がる時間帯が曜日によって異なることも分かってきます。その場合は積極的に、曜日ごと営業時間の変更を行いましょう。
たとえば
- 木~金曜日は 24:30閉店
- 土曜日は 24:00閉店
- 日祝は 23:00閉店
といった具合です。同様に開店時間についても、あるいはアイドルタイムについても、このように曜日ごとに変えても、それをお客様にしっかり告知できれば問題ありません。
ランチの営業時間は最適?
一方で、飲食店はランチを営業して少しでも利益をあげないといけない、というのが常識のようになっています。
しかし分析をしてみたら、ランチタイムに意外なほど利益が出ていない可能性もあります。ランチについても同じように分析をして、その存続について1度考えてみましょう。具体的なステップは以下の通りです。
ランチタイムも曜日ごと、時間帯別収益を分析する
これも曜日ごとの時間単位(ランチの場合は30分単位)で損益を計算します。すると、周囲の店がやっているから自分の店舗も何となく営業していたが、実際はほとんど利益がなかったという場合も出てきます。
さらに、ランチのための食材の仕入れとロスまで計算に入れた場合、完全に赤字、というケースもあります。この場合は躊躇せずにランチ営業を止めることを考えましょう。
もちろんその前に、近隣の他の飲食店ではランチで利益が出ているようであれば、立地的には問題ないわけですから、一気にランチ営業終了の判断をする前に、メニューと価格の見直しを行うことも必要です。
客動向、客動線によってランチタイムを変える
上のような「守り」の戦略だけではなく「攻め」の戦略も必要です。
現在、常識的な判断で設けているランチタイムが果たして近隣のサラリーマン、OL、学生などターゲット層の動向や動線にあっているのか、ということを判断しましょう。
それは、上で書いたように外に立って人の流れを見る、ということが基本です。一般的な客動向で言うと、通常のビジネス街では11:30~14:00、美容院や小売りなどの接客業の多いエリアの場合は11:00~15:00の営業時間にしたほうが集客できる、ということが言えます。 いずれにしても店舗の立地の特性次第ですので、まずそれをよく観察しましょう。
赤字の営業時間帯を黒字にする努力も必要
以上ご説明したのは、客動向とコストのバランスの中で、いかに営業時間をフレキシブルに、実態に合わせて変えて利益を出していくかという話でした。
しかしこれと同時に考える必要があるのは、「売上を上げる」戦略です。
現在赤字、あるいは損益が±0に近いレベルで推移している時間帯は、本当に営業を止めてしまったほうがいいのか、最終判断の前にまず考えたほうがよいでしょう。客層と料理がマッチしていないのかもしれませんし、価格や1皿あたりのポーションがニーズを満たしていないかもしれません。さらには、その1品で集客力がぐんと上がるような「キラーコンテンツ」の料理を考えられないか、という検討も必要です。ハッピーアワーのように、閑散気味の時間帯の集客販促の実施もあり得るでしょう。
このように「守り」だけではない、売上を取りに行く「攻め」の戦略も同時に考えることで、初めてバランスのよい店舗経営ができるのです。ぜひその観点でも考えてみましょう。
従業員満足度もチェックして営業時間を考えよう
さて、営業時間も見直した、攻めの戦略も実施した、という中で仮にそれが成功した場合の話です。
店長、あるいは経営者としては満足でしょうが、気にしなければならないのは従業員満足度や疲労度です。労働基準法に基づいて従業員と協定を結び、残業や休日出勤も法的には可能になったとしても、過労度や従業員満足度に影響がないか、しっかり考えて実施しなければなりません。
別のケースもあります。営業時間が短くなったことでシフトが減り給料が減るという場合です。それもまた従業員にとっては不満のもとになり、場合によっては他の飲食店との兼業、あるいはほかの店へ移ってしまうということも考えられます。
営業時間の変更が従業員満足度にどう影響するのかよく考えることが重要です。 また、実施後も目を配る必要があります。お客様が増えても、元気で笑顔なスタッフが迎えられなければ本当の繁盛店にはなりません。従業員満足度が高い店舗は顧客満足度も高い傾向にありますので、店長、経営者の方はその点にもしっかり目を配ってください。
まとめ
いかがでしょうか。
1度営業時間の実態を分析してみれば、意外に利益の出るポイント、あるいは損失を減らせるポイントが見つかる可能性があります。上で挙げたような方法を活用し、営業時間の分析と評価、そして必要であれば見直しをしてみていってください。
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