インターネットの波及効果もあり、いまや様々な業界でうまく活用し効果をあげているクラウドファンディング。
自分が叶えたい夢や希望をインターネットを通じて発信することで、その想いに共感した人が寄付などの支援をおこなえる仕組みです。
クラウドファンディングはとても有効で効果的な方法なのですが、飲食店の開業にも取り入れられるものなのでしょうか。
今回は、クラウドファンディングで飲食店開業を目指すためにできる方法について、お伝えしていきましょう。
クラウドファンディングとは
いまやとても多くの人が計画し実行しているクラウドファンディングですが、これは群衆という意味のクラウド、そして資金調達という意味のファンディングが組み合わされた造語です。
インターネットを通じ、想いに共感してくれた方々から資金を調達するというシステムであり、一つの融資の形とも言えます。
これまでの資金調達と言えば金融機関からの借り入れやベンチャーキャピタルからの出資というのが主でした。しかし、インターネットの拡散性の高さや手軽さが大きな支持を受け、資金調達の流れに大きな変革を起こしました。
持っているアイデアを形にしたい、こういったサービスで世の中の問題を変えたい、という気持ちがあれば老若男女問わず誰でもが「発案者」としてアピールすることができ、発案者の考えに共感し応援したいという気持ちがあれば、誰でもが「支援者」として支援できます。
このような手軽さ、参入障壁の低さがクラウドファンディング最大の特徴と言えるでしょう。
また、クラウドファンディングは現在下記の6つのタイプに分類されています。
購入形式
発案者のプロジェクトによって生み出された商品やサービスを購入するような形で支援をおこなうものです。
こちらの資金調達には2つの大きな枠組みがあり、一つは支援の募集期間内に目標金額が集まったらプロジェクトが成立するもの、もう一つは目標金額に届かなくても一人でも支援者がいればプロジェクトが成立する、というものです。
それぞれ発案者の方向性に合う内容を選択する必要があります。
寄付形式
発案者のアイデアに対し支援者は寄付をするスタイルです。
寄付形式には商品やサービスなどのリターンは基本的にありませんが、アイデアが形になった際、お礼として写真や手紙をもらえることがあります。
融資形式
資産運用したい支援者である投資家から小口の資金を集めそれを大口化し、借り手となる企業に融資して支援者は利息というリターンを得るというシステムです。
日本では「ソーシャルレンディング」という名称が一般的に浸透しており、支援者が投資家というところが購入形式や寄付形式と違うところです。
株式形式
株式形式ですが、こちらは個人の発案者ではなく企業がおこなう資金調達であり、未公開株を個人投資家へ提供し、その代わりに資金を募るといったクラウドファンディングです。
投資家にとって未公開株は大きなリターンを得られる可能性がある源泉とも言えるものです。詳細な情報を確認しながら未公開株を得られることが投資家にとって大きなメリットです。
ファンド形式
ファンド形式は株式形式と同じく、個人の発案者がおこなうのではなく企業が個人投資家に向けておこなうクラウドファンディングです。
まだ日本ではこのファンド形式は少ないのですが、投資家は出資額や売り上げ成果によって金銭でのリターンを得ることができます。
また、金銭だけではなくその事業で作られた商品やサービス、割引券などを受け取れることがあります。
ふるさと納税形式
ふるさと納税形式も、個人の発案者がおこなうというよりかは全国の自治体がプロジェクトを立ち上げ、その想いや未来に共感した人に対してふるさと納税で寄付を募るクラウドファンディングです。
この形式は購入形式や寄付形式と同じなのですが、違いとしてはふるさと納税のシステムですので、寄付する金額の控除を受けることができます。
クラウドファンディングで飲食店開業はできる?
クラウドファンディングには色々な形式があり、個人はもちろん企業や自治体がおこなうものまで様々です。
そのような特色あるクラウドファンディングですが、このクラウドファンディングのシステムは飲食店開業にも活用できるのでしょうか。
ここではクラウドファンディングでの飲食店開業について見ていきましょう。
まず、飲食店を開業するには大きな資金が必要になります。店舗になる物件を探して契約したり、調理するための道具やコップやお皿などの備品、店舗を使える状態にするための内装工事、広告などの宣伝費など、多額の資金がないと開業はできません。
最初から数百万円の貯金があったり金融機関からの融資が受けられれば別ですが、この資金調達がネックになって店舗開業に頭を悩ませるケースは多いものです。
しかし、実は資金調達をクラウドファンディングによって補うことは可能であり、実際にクラウドファンディングによって飲食店開業を成功させた事例は多くあります。
飲食店を開業したいという発案者の想いに共感し、クラウドファンディングで購入や寄付という形をとり、支援をしてもらうことで明確な開業までのステップを歩むことができました。
クラウドファンディングはただ行き当たりばったりでプロジェクトを立ち上げてもうまくいかず、逆に時間のムダとなってしまうので、最初にしっかりとしたコンセプトが必要です。
そのコンセプトを元に、なぜ飲食店を開業しないといけないのか?店舗を開業することで形作られる未来など述べていくことで共感が高まり、支援者は増えていきます。
また、飲食店開業の資金すべてをクラウドファンディングで補おうとするのではなく、内装工事代、調理道具や備品代など一部を確保しようとプロジェクトを立ち上げたほうが良いでしょう。
開業資金すべてをクラウドファンディングで集めようとすると時間がかかりますし、目標額に届かず振り出しに戻る可能性があります。
ある程度の資金は貯めておく、調達しておくなど動きながら、どうしても補えないところをクラウドファンディングで募るというのがスマートで良い資金調達と言えるでしょう。
飲食店向けクラウドファンディングサービス
クラウドファンディングは色々なアイデアを持った発案者がプロジェクトを立ち上げ、試行錯誤しながら資金調達をすすめています。
そんなクラウドファンディングを提供するサービスですが、飲食店に向けたクラウドファンディングサービスというのはあるのでしょうか。
ここでは飲食店向けクラウドファンディングサービスについて見ていきましょう。
Kitchen Starter(キッチンスターター)
キッチンスターターは飲食店専門のクラウドファンディングサービスであり、現在までに多くの飲食店がプロジェクトを立ち上げ成功してきました。
支援者は購入形式でのリターンを得ることができますが、それは現金ではなくプロジェクトを立ち上げた発案者のお店の割引や優先予約券、商品の購入権という形によって受け取ることができます。
Kitchen Starterの支援者になる人は投資目的とは違い、純粋に食に対してのこだわりがあったり思い入れがある人が多く、美味しいものを広めたいという気持ちで支援していることがほとんどです。
また、一つの特徴として、支援金が集まりプロジェクトが成立したときに手数料として支援総額の20%が発案者に発生しますが、目標金額に届かずプロジェクトが成立しなかったときには手数料は発生しません。
これまで集まった金額も支援者に返金されるため、目標未達成によるリスクを回避することができます。
3rdTable
3rdTableはクラウドファンディングサービスの最大手である「CAMPFIRE」上で運営される、飲食店専門のクラウドファンディングサービスです。
運営はCAMPFIRE上ですが、3rdTableはグルメ情報サービスの「Retty」が立ち上げたサービスです。開業前の資金調達やファンの獲得、開業した後の展開をサポートするべくスタートしました。
また、3rdTableのコンセプトは「飲食店とファンの永続的な関係値を構築する」というものであり、店舗とお客様が一緒に場を作り上げていく、お店とお客様にとっての新しい居場所を作ろう、というつながりを大切にしています。
プロジェクト成立時には集まった支援金の中から手数料12%+決済手数料5%の17%に消費税を加算した金額が発生しますが、目標金額に到達できなかった場合は手数料は発生しません。
飲食店クラウドファンディング事例
飲食店のクラウドファンディングは店舗開店前のマーケティングができたり開店前にファンを獲得できるなど、これまでの飲食店開業とは違う大きな魅力があります。
そんなクラウドファンディングをうまく活用し、実際に開業した飲食店にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは飲食店のクラウドファンディング事例をいくつか見ていきましょう。
お弁当屋「おいしいプラス」
お弁当屋おいしいプラスは有名な日本料理店である「青山えさき」が出店しており、カロリーや糖質低めといった健康志向のお弁当が人気を集めています。
こちらは青山えさきが出店を希望していたというよりも、株式会社クラウドファンディングが出店を持ちかけたことがきっかけとなり、クラウドファンディングをおこなったという経緯があります。
株式会社クラウドファンディングが立ち上げたプラットフォーム上で出資を募ったところ、予想を上回る反響があり、わずか4時間30分ほどで目標額に設定していた3,500万円に到達しました。
元々有名な料理店が出店しているのでブランド力もありますが、健康志向のお弁当というのが時代のニーズにうまくマッチした成功事例と言えるでしょう。
とろさば料理専門店「SABAR」
大阪、京都、東京に店舗を構えている鯖寿司専門店で有名な「鯖や」が経営しているとろさば料理専門店「SABAR」は、豊富なとろさば料理を提供する人気店です。
クラウドファンディングをおこなったのは、とろさば料理専門店「SABAR」を東京へ初進出させる際利用したことがきっかけでした。
店舗開業のために掲げた目標額は1,000万円でしたが、実際に集まった金額は193万円ほどで、目標額にはほど遠いものでした。
目標額には届かなかったものの、クラウドファンディングを利用した絶大な宣伝効果があり、メディアが注目したことでいまではひっきりなしにお客様が訪れる人気店となっています。
目標額では成功していませんが、宣伝効果やメディアををうまく利用した活用事例と言えるでしょう。
まとめ
飲食店の開業では大きな資金が必要になり多くの経営者は調達を考え悩みますが、クラウドファンディングはそんな経営者の味方になります。
クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げたからといってすべて成功する訳ではありませんが、事前にマーケティングができたり宣伝効果につながるなど、目標額達成以外の魅力も多くあります。
飲食店開業のためにメリットを最大限に活かせるよう、クラウドファンディングを活用するのが良いでしょう。
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