給与支払明細書の書き方は?記載する事項と作成手順

開業・経営

給与支払明細書とは、給与を支払う際、従業員に渡す明細書のことです。法律で交付が義務付けられています。中小規模の事業主で、初めて給与支払明細書を作成するので書き方が分からないという方もいるでしょう。

給与関連の書類は会計ソフトなどを使って出力することも可能ですが、給与計算から給与明細作成、交付についての基本はしっかりと押さえておくことをおすすめします。基本を知らないと、従業員から給与について質問を受けた場合などに答えられない可能性もあるからです。

この記事では、給与明細に記載すべき項目や明細書作成の必要性、作成の手順などについてご紹介します。

給与支払明細書の基本知識

ここでは、給与支払明細書が必要な根拠と、明細書に記載すべき項目について説明していきます。まずは基礎をしっかりと押さえましょう。

給与支払明細書はなぜ必要?

給与支払明細書は、法律上は「給与明細」と呼ばれます。所得税法で、「給与を支払う者は給与の支払いを受ける者に支払明細書を交付しなくてはならない」と定められています。給与支払明細書の交付対象者にはパートやアルバイトも含まれます。

また、健康保険法と、労働保険の保険料の徴収等に関する法律で、給与からの控除額を通知することが義務付けられており、控除額の通知に支払明細書が用いられます。なお、給与支払明細書は会計ソフトで作成して印刷しても、手書きでも構いません。

給与支払明細書に記載すべき項目

給与支払明細書に明記すべき項目は、次の4つです。

  • 月の労働時間…出勤・欠勤の日数や、残業を含めた労働時間数
  • 支給額…基本給と各種手当
  • 税金や社会保険料などの控除…健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の控除額
  • 口座への振込金額…支給額から税金や社会保険料を差し引いた額

給与支払明細書を作成するために準備するもの

給与支払明細書に必要な項目を計算するための情報は、次の5つです。

1.タイムカードなどの勤怠記録
出勤日数や労働時間は、タイムカードなどの勤怠記録をもとにします。

2.健康保険・厚生年金保険の被保険者標準報酬決定通知書
9月下旬頃に日本年金機構から届く書類です。定時決定をしていると、9月下旬頃に日本年金機構から届きます。

定時決定とは、健康保険・厚生年金保険の被保険者の報酬月額を届け出て、標準報酬月額を決定することです。報酬月額は4月から6月の給与と諸手当の合計額をもとに算出されます。

3.住民税課税決定通知書

住民税課税決定通知書には、各従業員の毎月の住民税納付額が記載されています。毎年1月31日までに市区町村に給与支払報告書を提出すると、5月31日までに送付されます。

住民税課税決定通知書に記載された住民税の金額を、6月から翌年5月までの1年間、毎月の給与から差し引きます。

4.健康保険と厚生年金保険の保険額表

加入している保険団体の保険料を、ホームページなどで確認します。保険料率は毎年見直しがあるため、更新が漏れないように注意が必要です。変更の手続き自体は7月に行い、9月から変更になります。

5.源泉徴収税額表

源泉徴収税額表は、従業員の給与所得から源泉徴収すべき税額が記された表です。国税庁のホームページで確認できます。税額表は、毎年変更があるので注意が必要です。税額表は、月額表・日額表・賞与で分かれています。目的に応じて使い分けましょう。

源泉徴収税額は、所得金額や扶養家族の人数などによって決まります。また、給与支払者が従業員に代わって個人住民税を差し引いて納税することを、特別徴収といいます。

1から3までは準備が必須です。4と5は必須ではありませんが、手元にあると最新の税額などを確認できるので便利です。

給与支払明細書を作成する際の注意点

従業員に交付した給与支払明細書に間違いがあった場合は、直ちに本人に通知し、訂正・謝罪する必要があります。ごまかしや軽く済ませるなどの対応は、従業員の不信感を招きます。誤りの金額が小さくても軽く済ませないことが大切です。

なお、給与支払明細書は電子化が可能ですが、従業員の同意が必要です。所得税法では、給与支払者には紙での交付義務があります。

給与支払明細書の作成手順

ここからは、給与支払明細書の具体的な作成手順を解説します。給与支払明細書は誤りがないよう、慎重に作成しましょう。

こちらの明細書の記入例を見ながら読み進めてください。

Step1:勤務時間を集計する

タイムカードなどの勤怠情報から、実際の出勤日数や労働時間を集計します。残業時間や休日出勤、深夜残業もカウントし、遅刻・早退がある場合は該当する時間分を差し引きます。

2019年4月から適用された「働き方改革関連法」により、紙のタイムカードや表計算ソフトなど、自己申告での勤務時間の把握は禁止されているため注意が必要です。

Step2:残業時間と残業代を計算する

集計した勤務時間の普通残業時間、深夜残業時間、休日残業時間を集計し、残業手当を計算します。計算式は、「時間外手当=時間外労働時間×1時間当たりの賃金×割増率」です。割増率は、時間外労働の時間数と休日、深夜などの種類で適用されます。

詳しくは、東京労働局の「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」をご覧ください。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501860.pdf

Step3:総支給額を計算する

基本給に残業手当と通勤手当を加えます。通勤手当や資格手当、家族手当などの各種手当を加算しましょう。家族手当は、配偶者や子どもがいる従業員に対して支給される手当です。教育費や生活費の補助が目的で、企業が任意で支給するものです。

Step4:控除額を計算する

4種類の控除額を計算します。

社会保険料

健康保険、厚生年金保険、介護保険を計算します。標準月額報酬に対して保険料率を掛けて算出し、金額を控除の該当欄に記入します。

課税対象額

課税対象額は、総支給額から通勤手当と社会保険料の合計を差し引いたものです。

源泉所得税

支給額から保険料を控除した金額を、源泉徴収税額表に当てはめて計算します。

住民税

住民税課税決定通知書から住民税を記載します。自治体によって税額が異なるので注意が必要です。

Step5:差引支給額を計算する

差引支給額とは、いわゆる手取り給料のことで、従業員の口座に振り込む金額になります。総支給額から控除額を差し引いて、金額を決定します。

給与支払明細書を効率的に作る方法

給与支払明細書に記載すべき項目は毎回同じなので、テンプレートの利用かソフトの導入が便利です。具体的な方法と注意点を解説します。

表計算ソフトのテンプレートを活用する

表計算ソフトのテンプレートを作ると、給与支払明細書を簡単に作成できます。実際、小規模な事業者は、表計算ソフトで給与計算しているケースも多いです。注意点としては、アルバイトの時給が時間帯ごとに異なる場合などは、時間別の数式を組む必要がある点です。

給与計算システムを導入する

給与を自動で計算できるシステムです。給与明細を電子データ化して、メールで配信したり、従業員がWEBブラウザ経由で確認したりできます。出退勤を含めて、クラウド上で人事労務を一元管理できるサービスもあり、業務効率化と人的ミス削減の両方を実現できます。

給与支払明細書のやり取りを、できる限りWEB上で完結できるようにして、コストやリスクを減らしていきましょう。

給与支払明細書は正確かつ効率的に作成しよう

給与支払明細書は、書き方の作業手順を整理するのがポイントです。まずは総支払額を計算するために、勤務時間を集計して各種手当を加算します。次に天引きすべき社会保険料や税金を計算します。

給与支払明細書は、給与を支払うたびに作成する必要があります。作業内容とフォーマットは毎回同じなので、表計算ソフトや給与計算システムを活用して、正確かつ効率的に作成しましょう。