

店舗を立ち上げるときや、もっと売上を伸ばしたいとき、どうしても気になるのが繁盛しているお店やライバル店のことです。「なぜあのお店はあんなに人が集まるのだろう?」「どうすればあんな成功ができるのだろう?」と考えるのは当然のことです。そして、そうした疑問を持つことは大切です。他店舗の良いところは学び、なぜそんなにうまく行くのか考え、自店の魅力向上を目指さなければ、飲食店が生き残ることは難しい時代です。
人気店には必ず理由があります。その人気のもとを実際に体感して分析し、良い点は積極的に取り入れていきましょう。この記事では、競合店を調査する方法を説明していきます。
繁盛店や競合の調査の際の注目点についてはこちらの記事もご覧ください。
なぜ調査を行うの

競合店の調査を行うのは、自店舗をより良くするためです。店舗経営には、確実な答えというものはありません。トライ&エラーを繰り返し、より良くしていくしかないのです。ですから他店のすでにうまく行っている要素を参考にすれば、そうしたトライ&エラーが不要になったり、トライ&エラーの精度を上げたりできるようになります。
また、他店を見ることで、改めて自店を客観的に見ることができます。他店で良い・悪いと思った部分が、自店でどうなっているかを改めて考えられるはずです。さらに競合店にはないが自店では実現できる強みを探すなどして、差別化を図ることも大切です。
まだどんなお店にするか決めていない場合は、コンセプトなども含めて競合店を参考にするとよいでしょう。コンセプト決めについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
調査対象になる繁盛店・競合店のリストアップの方法

まずは調査対象となる繁盛店・競合店を探します。調査対象は、まずは開業予定のお店と似ているコンセプトのお店を優先的に考えましょう。かといって、全く同じである必要はありません。商圏やターゲット層、料理、業態などいずれかが共通していればよいでしょう。もちろん全く異なるお店でも参考になる部分は多々あるのですが、優先順位は低いと言えます。
お店のリストアップは次のような方法で行います。
- 飲食業界に従事する友人・知人へのヒアリング
- 食通の友人へのヒアリング
- 食ベログやRettyなどの口コミサイトで3.5以上の評価で、自店とコンセプトが近いもの
調査対象の優先順位もこの順番です。信頼する友人・知人からの1次情報は質が高いからです。口コミサイトの点数は参考程度ではありますが、多くの人に支持されているという事実は重要なポイントです。
調査数は多ければ多いほどよいのですが、限界があります。また、店内でサービスを受けるところまで調査するとなると、飲食店であれば料金が発生することになり、費用がかかってきます。
肌感覚ではありますが、20件ほど調査した時点で、繁盛店が何で上手くいっているのかだいたいわかってくるものです。残りの60件も勉強にはなりますが、投資対効果が高いとは言えません。
「最低20件は調査する」ということはザックリとした指標になると思います。
繁盛店・競合店のチェックシート

調査に行っても、「おいしかった」「サービスの良い店だったな」で終わらせてはいけません。なにが良くてなにがいまいちなのか、細かく採点して分析しましょう。その際の指針となるよう、分析のためのチェックシートを作りました。
excelに点数を入力するだけでグラフなどが自動的に反映されるので、視覚的にもわかりやすいシートになっています。(もちろん印刷して使っていただいても大丈夫です。)
重要な評価項目は以下の6つです。
- ファサード
- 内観
- 演出
- メニュー
- サービス・接客
- 料理
チェックシートの各項目について解説をしていきます。
1. ファサード
看板の位置、店名 一目で何の店か理解できるか。見やすく、親しみやすいイメージカラーやフォントを使用しているか。 入口装飾 ウェルカムボード、メニュー紹介、ポスターなど。入店前にお客様がどの様な店かイメージできるか。 外観の印象 全体のイメージが統一されているか。清掃状態、入店のしやすさ。
2. 内観
外観との一貫性 外観と内観の印象にズレがないか。 エントランス ウェイティングスペースがあるか。客席から入店者が気にならないか。 内装・インテリア 店のコンセプトとインテリアに統一性が取れているか。テーブルや椅子の品質など。 トイレ・洗面所 洗面所・トイレが、コンセプトに基づいて作られているか。清掃状況など。
3. 演出
客席配置 席数は適切か。また入口から客席までの動線がスムーズか、複数の通路を使い着席できるか。 照明の色と明るさ 店舗の雰囲気作り。料理を美味しく見せるための工夫。対面するお客様同士の表情の見え方など。 BGM 店のコンセプトに合っているか。 季節感 季節の花や小物などが飾られているか。 POP おすすめ商品が一目でわかるようなポスターやPOPの有無。特にテーブルPOPは販売促進につながりやすい。 テーブルウェア・カトラリー・食器 料理との一貫性があるか。一貫性がないと雰囲気が台無しになる。 清掃 店内はもちろん、店外も清掃が行き届いているか。飲食店は清潔感が命。
4. メニュー
装丁・デザイン メニュー表がその店のコンセプトにあったデザインかどうか。 カテゴリ数・内容 カテゴリ数がいくつあるのか。カテゴリ分け・内容がお客様に分かり易いものになっているか。 メニュー数 全部でいくつのメニューがあるか。 おすすめメニューや季節感の打ち出し おすすめメニューや季節メニューはどんな打ち出し方をしているか。そのお店が計画的に商品開発をしているか否かの判断にもなる。 最多価格帯 最多価格帯をカテゴリ別に調べる。正確に計算する必要はない。 平均客単価 人気メニューや周りのお客さんの食べているものなどから平均客単価をシミュレーションする。客単価は食ベログのデータも参考になる。
5. サービス・接客
入店時挨拶・身だしなみ 従業員の第一印象。親しみやすい笑顔、声のトーン、言葉づかい、清潔感のある身だしなみなど。 店員数 店員の人数は適切か。 座席案内 お客様のペースに合わせて席まで案内できているか。椅子を引くなどの対応があるか。 メニュー紹介 おすすめメニューの紹介の仕方など。 オーダー オーダーミスがないように注意深く聞いているか。ファミリーレストランで一般的になった「復唱」はスマートではないため、行わないお店もあるので要注意。 オーダーから提供までのリードタイム オーダーから最初の料理が出てくるまでの時間を確認。また一品一品に時間がかかっても、その間を長く感じさせない工夫がされているか。 提供 テーブル前でもたつかないか。会話や食事の妨げにならにようにスムーズな提供がされているか。また料理の説明がわかりやすく丁寧か。 待機姿勢(気配り) 飲食中に何かを頼みたいときにすぐに気づいているか。気配りが出来ているか。 見送り 店を出る際に店員全員が声を掛け送り出しているか。感謝の気持ちを表していることが重要。
6. 料理
盛り付け 食欲が刺激され、綺麗な盛り付けが出来ているか。 鮮度 魚や野菜など生鮮品のチェック。 ボリューム 価格に見合った適切な量か。 温度 温かいものは温かく、冷たいものは冷たく調理されているか。 原価 材料や量からおおよその原価を見積もる。原価が3割以下に抑えられているならば合格。
調査結果を分析し、自店の差別優位性を確立する

こうしたさまざまな項目をチェックしたら、「良かった」「悪かった」という数値だけではなく、しっかりと分析を行いましょう。自分だけの感想ではなく、客層や顧客属性の目線で、どう評価できるのかを考えることが重要です。
良いところは学び、アレンジする
繁盛しているとしたら、そこには必ず理由があります。「なぜそのようにしているのか」「こうしているからウケているのではないか」を考える癖をつけましょう。その上で、自店舗でも踏襲できるところがあれば自店流にアレンジして展開できないか考えてみましょう。
弱いところは差別化できないか考える
また、競合店に弱いところがあるのであれば、チャンスかもしれません。自店舗ではそこを磨き、強みとすることで差別化を図ることができます。
場合によってはターゲットの変更も検討する
これから開店を考えているのであれば、同じ商圏で同じ客層を狙って、競合店に勝てるのかを改めて考えてみて、場合によっては狙う客層を変えてみるのもよいかもしれません。
調査を繰り返し、自店を見直そう
繁盛店・競合店の調査を繰り返していくと、自店の劣っているところ、優れているところが浮き彫りになってきます。劣っている点は改善し、優れているところはどんどん伸ばしてください。調査のなかでそのお店の改善点・問題点に気づいたときは、「自分ならばこうする」と改善方法をシミュレーションしましょう。「自分事」にすることで力がつきます。
本記事で紹介したチェックシートはこちらからダウンロードできます。

