飲食店を成功させるには、売上を伸ばすだけでなく、コスト削減も重要です。どれだけ繁盛していても、適切なコスト管理ができなければ利益率の向上は見込めません。また、原材料価格の高騰もあり、飲食業界のコスト削減は不可欠となりました。
今回は飲食店の経営者に向けて、経営に必要な経費の種類やコスト削減の方法を解説します。利益率の向上や経営の安定化を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
飲食店がコスト削減するために事前に把握すること
コスト削減を効果的に進めていくためには、店舗の現状を可視化することが大切です。コスト削減のアイデアを実行する前に、以下の2点を確認してください。
コストを正確に把握する
まずは、経費削減のために見直すべき費用を洗い出します。数カ月分の収支状況や経費を確認して、余計なコストが発生していないかを調べると良いでしょう。
注意点として、経費削減を重視するあまり、料理やサービスの質を低下させないようにしてください。極端な取り組みは顧客満足度の低下や売上の減少につながりかねないので、経費削減と店のクオリティを両立できるようにしましょう。また、従業員のモチベーションを保つために、事前に経費削減の目的を共有しておくことも重要です。
FLコストとFL比率を把握する
飲食店の経営状態を判断するためには、「FLコスト」と「FL比率」を理解することが大切です。
まずFLコストとは、食材費(Food)と人件費(Labor)を合わせた金額のことです。そしてFL比率とは、売上高に対するFLコストの比率を示し、一般的には50%〜60%が適正値とされています。つまり、売上が高くてもFL比率が大きければ、経営が安定しにくいことが分かります。
したがって、FL比率を把握することはその時の経費が適正であるかを判断する重要な指標となるのです。コスト削減を検討する際は、FL比率を算出し、どれくらい費用を削減すれば良いかを確認しておきましょう。
なお、店舗の賃料(Rent)まで含めたコストはFLR比率と呼ばれており、一般的に70%までに抑えることが望ましいとされています。
飲食店を運営するために必要なコスト(費用)の種類
飲食店経営では、「固定費」と「変動費」の2種類のコストが発生します。まずはそれぞれの意味を確認していきましょう。
固定費
固定費とは、店舗の売上などの経営状況にかかわらず、一定の支払いが必要な費用のことです。代表的なものとして、以下が挙げられます。
- 店舗の賃料
- 物品リース料
- 従業員の人件費
- インフラコスト(水道光熱費、通信費など)
- 税金コスト(固定資産税、社会保険料など)
固定費は変動費よりも高くなることが多いため、できる限り削減するのが理想です。変動費と比べて固定費の削減は難しいとされますが、工夫次第では節約可能です。
例えば、店舗の賃料を削減するアイデアとしては、ゴーストレストランへの移行、値下げ交渉などの選択肢があります。また、インフラコストに関して、加入プランや設備の見直しなどにより、コスト削減が実現するケースもあるでしょう。
変動費
変動費とは、店舗の売上や社会情勢などで価格が変わりやすい費用のことです。具体的な項目として、以下が挙げられます。
- 食材や備品の仕入れ費用
- 運送コスト
- 広告宣伝費や販促費
- 消耗品の購入費
- アルバイトやパートの人件費
一般的に、固定費よりも変動費のほうがコストのコントロールがしやすいと言われており、積極的に削減することが求められます。
例えば、食材の仕入れ費用が利益を圧迫している場合、取引先の変更や価格交渉、食材の見直し、食品ロスの削減などの施策に取り組む必要があるでしょう。また、人件費が高騰している場合には、パートやアルバイトのシフトを見直すなど、人員配置を最適化することが重要となります。
飲食店のコスト削減の方法
続いては、飲食店の具体的なコスト削減方法を4つご紹介します。
光熱費と通信費
まず光熱費に関して、電気代やガス代が削減できないか検討することをおすすめします。電気・ガスの全面自由化により、現在では電力会社・ガス会社を自由に選べるようになっているため、会社とプランの見直しによって大幅にコスト削減できる可能性があります。
また、照明をLEDに変更することも電気料金の削減に効果的です。LEDは蛍光灯や白熱電球などと比べて消費電力が少なく、なおかつ長寿命なので、取り替えにかかる手間やコストが少なくなります。
次に電話回線やインターネットなどの通信費に関して、こちらも契約プランの見直しをすることが効果的です。通信費は負担の大きい経費ではないものの、毎月決まった費用が発生するため、お得な割引やキャンペーンなどがないか確認してみてください。
水道代
電気やガスと異なり、水道の小売自由化は認められていません。したがって、水道料金を削減するためには、以下のような方法で節水を心がけることが大切です。
- 節水コマを設置して、蛇口から出る水量を減らす
- 食器は流水洗いでなく、つけ置き洗いにする
- 節水効果のある食洗機を導入する
また、請求額が想定よりも高い場合は水漏れが発生している可能性があるので、業者に点検を依頼してください。特に飲食店は使用する水の量が多く、設備トラブルが発生しがちなので、定期的な検査とメンテナンスを行うことが重要です。
その他、自治体によっては水道料金の減免制度を設けていることがあるので、条件に合致する場合は利用するのが良いでしょう。例えば、東京都では飲食業を含む生活関連業種において、下水道料金の減免を実施しています。
仕入費用
食材の仕入れ費用は経費の中で多くの割合を占めるので、品質を下げないように心がけつつ、積極的に削減しましょう。仕入れ費用を削減するには、主に2つの方法があります。
1つ目は、仕入れ業者との価格交渉です。一般的に、原材料費の高騰などで値上げされることはあっても、仕入れ業者が自ら値下げするケースは多くありません。そのため、インターネットなどで食品の価格相場に関する情報を集めて、適正価格で仕入れができるよう交渉しましょう。別の交渉材料としては、他の業者の見積もりを持参することも有効です。
2つ目は、定期的に仕入れ先を見直すことです。同じ食材でも仕入れ先によって売値が変わるため、大幅にコストカットできる可能性があります。もしも小売店を利用している場合は、卸売御者との関係を築くのも良いでしょう。
人件費
飲食店経営では多くの人件費が発生するため、工夫次第で大幅な削減が可能です。
まずは、店舗の規模や混雑状況に対するスタッフ数を見直しましょう。最低限必要な人数に絞ることで、無駄のない効率的な店舗運営につながります。アルバイトやパートを雇用している場合は、閑散期やアイドルタイムに必要以上の人員を配置しないよう注意してください。
また、POSレジや在庫管理ツール、配膳ロボットなどの自動化ツールを活用するのも効果的です。業務のデジタル化により業務効率が向上すれば、人件費の削減が実現しやすくなります。ただし、システムの導入にはコストがかかるので、事前に費用対効果を検討することが大切です。
飲食店のコスト削減は現状把握から始める
今回は飲食店が実施できるコスト削減の方法について解説しました。経営の健全性を維持するためには、売上アップだけでなく、固定費や変動費の見直しも欠かせません。特に近年は食材原価や人件費が高騰しているので、無駄なコストを発生させないことが大切です。
各店舗が抱える課題は異なるため、まずは現状を把握しましょう。収支状況やFLコスト、FL比率を明確にして、改善できるポイントを見つけ出すことから始めてみてください。
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