現金出納帳はよく耳にするけど「預金出納帳って聞き慣れない。そんなものあったっけ?」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。しかし、これからの説明をお読みいただければ、その必要性・重要性をご理解いただけると思います。
今回は経営者が知っておくべき預金出納帳について説明していきます。
そもそも預金とは?
預金という言葉は普段から慣れ親しんでいると思いますが、預金の意味って本当にご存じですか?なかには、貯金と一緒にしている方もいるのですが、この2つは正確には異なるものとなっています。
「貯金」と「預金」の違い
「貯金」とは、郵便局(ゆうちょ銀行)や農協(JA)、漁協(JF)にお金を預ける場合に使われます。一方の「預金」は、上記の3箇所以外の金融機関にお金を預けることです。つまり、銀行や信用金庫、信用組合などにお金を預ける場合には「預金」が使われます。
預金には普通預金、当座預金、定期預金などの種類があります。どの預金にも共通するのは、預け入れると金額が増加し、引き出せば減少し、現金として支払手段に充当することができます。
預金出納帳とは
現金出納帳と預金出納帳の違い
まず、現金出納帳は事業用の現金を管理するために作られています。事業を行っている人だと、経費がでてきます。この経費について「いつ」「どんなことで」使ったのかを記入するのが現金出納帳です。
これに対して預金出納帳は預金口座上でのお金を動きを記入して残高の管理を行うことが目的となっています。つまり、分かりやすく言えば、現金出納帳は「何に使ったのか」という目的を記載して、預金出納帳では「お金の動きや残高」を記載して管理するものです。
預金出納帳の作成は銀行ごと、預金種別ごと、預金口座ごとに行います。
より詳しい書き方は後で述べることにし、ここでは簡単に預金出納帳の様式を示して上記説明の参考にしていただければと思います。
月 | 日 | 相手 勘定科目 | 摘要 | 入金 | 出金 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
10 | 5 | 前月より繰越 | 100,000 | |||
10 | 10 | 借入金 | 経営者から借入 | 500,000 | 600,000 | |
10 | 15 | 買掛金 | A工業㈱に支払 | 550,000 | 50,000 | |
10 | 20 | 支払手数料 | 振込手数料 | 648 | 49,352 | |
企業の帳簿は業種や業態によって大きく異なるものですが、預金出納帳に関しましては各企業ともほぼ様式は同じで、手作業の場合多くの企業は市販の預金出納帳を使用しています。
預金出納帳の役割
今の時代、ほぼすべての企業が銀行取引を行っており、預金口座を活用しています。公共料金の支払なども預金口座で行うのが常識であり、企業の収益動向や財産の状況も預金口座から把握するのが通常です。そのような理由から、複式簿記においては預金口座の出入りを正確に把握することがきわめて重要な作業となります。
たとえば、次のような入出金の不明事項が存在しますと、預金残高はともかくとして勘定科目全体が不正確となります。
・預金の増加原因が不明(売上代金の場合)
相手先が銀行振込をしてきた場合、通常は当方の預金通帳に相手先名が表示されるのでよいのですが、売上代金を現金や小切手で回収し預け入れた場合、正確な記録を残しておく必要があります。
・預金の増加原因が不明(売上代金以外の場合)
銀行預金間の移動、手持ち現金の預け入れ、経営者(役員)からの借入などは、明瞭な記録を残しておく必要があります。
・預金の減少原因が不明
ほとんどの金融機関の通帳においては、公共料金等の口座引き落としを除いて、出金原因(具体的な相手先)は表示されません。出金内容については、預金出納帳、振替伝票、請求書・領収書などの書類からすぐに解明できるようにしておく必要があります。
預金出納帳は確定申告で必要?
さて、この預金出納帳ですが、青色申告で必要になるケースがあります。「ケースがある」と書いたのは、必要ではないこともあるからです。それをパターン別にみていきましょう。
青色申告特別控除額が10万円以下の場合
個人事業主の場合、確定申告には青色と白色の2種類があります。
白色の場合
帳簿のような形で収支のデータがあれば大丈夫です。
青色の場合
簡易帳簿への記入が必要で、最大10万円の特別控除を受けることが可能です。
控除額が10万円以下であれば、預金出納帳は提出する必要がありません。預金通帳や取引の履歴によって、証拠とすることができます。
青色申告特別控除額が65万円の場合
控除額が65万円の場合、正規の簿記の原則が適用されることとなり、預金出納帳の提出が義務付けられています。
預金出納帳の書き方とは
預金出納帳の書き方は簡単で、銀行別(口座別)に通帳記帳されている取引(入出金)をすべて記入していくだけです。預金出納帳に記入する項目は、「日付」、「相手科目」、「入出金した理由・摘要」、「入出金の金額」、「残高」です。
【日付】
会計年度の開始から終了を記載する必要があります。個人事業主の場合だと開始が4/1、終了が3/31となっており、この間の発生した収入と支出の日付を記入していきます。
なお、同日中に収入と支出があった時は、相殺することなく、支出、収入を分けて記載するようにします。
【科目】
収入や支出は会費や事業収益、販売収益など細かく科目を記載する必要があります。
【繰越金】
前年度から繰越金がある場合は、前年度の残高も記入するようにしましょう。
【摘要】
収支や支出の細かい情報を記入します。
ここで、もう一度先ほどの図表(いろは銀行の普通預金の預金出納帳)をもう少し取引数を増やして登場させます。
月 | 日 | 相手 勘定科目 | 摘要 | 入金 | 出金 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
10 | 5 | 前月より繰越 | 100,000 | |||
10 | 10 | 借入金 | 経営者から借入 | 500,000 | 600,000 | |
10 | 15 | 買掛金 | A工業㈱に支払 | 550,000 | 50,000 | |
10 | 20 | 支払手数料 | 振込手数料 | 648 | 49,352 | |
10 | 21 | 売掛金 | B商事㈱から売上代金振込 | 1,000,000 | 1,049,352 | |
10 | 25 | 給与 | 従業員に給与支給(3名) | 800,000 | 249,352 | |
10 | 26 | 現金 | C物産㈱の売上代金現金入金小切手入金 | 450,000 | 699,352 | |
10 | 31 | 通信費 | 電話代の引き落とし | 30,000 | 669,352 | |
現金と違って、預金の場合には金融機関が預金通帳を発行してくれますので、企業自身で作成する預金出納帳は不要だと考えがちです。しかし、預金通帳ですべての入出金内容を把握することはできません。
上記の例で、通帳に入出金の内容が表示されるのは、
- 10月15日のA工業㈱に振込んだ際の振込手数料
- 10月21日のB商事㈱からの売上代金振込
- 10月31日の電話料金引き落とし
のみです。「通帳にメモを残しておけば」との意見もあるのですが、記入スペースに限りがありますので、やはり預金出納帳を作成しておく必要があります。最大限譲歩して、預金口座がこの「いろは銀行の普通預金1口座のみ」であるのならば、通帳を拡大コピーして摘要欄だけ記入してください。
クレジットカードや生活費の仕分けはどうするのか?
クレジットカードの引き落とし口座と事業の口座が同じ場合、その口座からは毎月、クレジットカード会社名で引き落とされるようになります。この仕訳は注意が必要となります。
事業の経費をクレジットカードで落とすこともあれば、私用でクレジットカードを使ったものもあるでしょう。当然、私用で使ったカード決済は経費に含むことができません。
このような場合は、クレジットカードの明細を別途用意して、補助資料として提出することで、事業で使った金額のみを経費として申告する流れとなります。また、自身が私用で使った金額についても事業とは関係のないお金になるため、預金出納帳への記載は不要となっています。
預金出納帳が自動で作れる会計ソフトを使おう
預金出納帳の書き方を説明しましたが、実際に作っていくとなると面倒ですし、時間もかかってしまいます。さらには、分からないことが出てくるたびに調べていく必要があるので、効率的とは言えないでしょう。
そこでお勧めしたいのが、預金出納帳を自動で作ってくれる会計ソフトの使用です。これらの会計ソフトのメリットは、預金出納帳に関する詳しい知識がなかったとしても、必要項目を入力すると、自動で仕分けしてくれて、帳簿が勝手に完成する優れものとなっています。
「ソフトの使い方が難しいのでは?」と思われたかもしれませんが、最近の会計ソフトは使い方がシンプルになっている為に、ソフトの利用をしたことがない方でも心配いりません。短時間で使い方をマスターできるので、自力で預金出納帳を作るよりも効率的となっています。
預金出納帳に関しては、初期設定で預金科目ごとに銀行別の補助科目を設定します。先の例で、普通預金口座が「いろは銀行」と「ABC銀行」の2口座があったとしたら下記のようにします。
・勘定科目:普通預金 → これの補助科目:「いろは銀行」「ABC銀行」2つ
(これらを総勘定元帳、補助元帳と言い、この補助元帳は預金出納帳そのものです)
会計ソフトを使用すれば、日常はひたすら日々発生する取引を仕訳入力するのみです。通帳の摘要欄に表示されない取引も仕訳の際、摘要内容を入力しますから、最終的に帳簿が自動作成され、完全な預金出納帳 = 補助元帳が出来上がってきます。
つぎに「クラウド会計ソフト」についてお話します。これはインターネット環境さえあれば、直ぐに始められます。CDを使ったインストール作業も必要ないので、面倒な作業が嫌な方にはお勧めです。どのような企業規模向けかと申しますと、小規模法人ないし個人事業といった小規模企業対象です。どのような機能がセットされているかをかんたんに紹介します。
- スマート取引取込
銀行明細、クレジットカードなどの取引データを自動取込、自動仕訳するので、入力の手間が省けます。 - かんたん取引入力
簿記の知識がなくても、日付や金額などを入力するだけで、小規模法人事業者に必要な複式簿記帳簿が自動作成できます。 - 帳簿を自動集計・作成
登録した取引から会計帳簿を自動で集計、作成できます。 - 決算書を自動で作成
登録した取引から決算書を自動で作成できます。
以下に、お勧めのソフトを紹介していくので、参考にして頂ければと思います。
free
クラウド会計で人気NO.1ソフト。請求から清算など一連の流れを行えるソフトとなっています。集計レポート機能もあるので、預金出納帳作りには不便しません。
MFクラウド会計
45日間の無料トライアルが付いているお得なソフト。基本的な機能が備わっており、サポートもチャット機能を使って行われるので、瞬時に疑問を解決することができます。
弥生の青色申告オンライン
会計と言えば、弥生。青色申告限定となりますが、こちらもサービスもお勧めです。預金出納帳の作成が簡単に行えるので、とても便利です。
詳しくは、「個人事業主におすすめ。クラウド会計ソフトを導入して経理業務を簡単にしよう」で紹介していますので、参考にしてください。
まとめ
いかがでしょうか。
これまでの説明により、預金出納帳の必要性や作成要領等はご理解いただけたと思います。「理解はしたけど、作成は大変そう」といった感想をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、対策として会計ソフトの初期設定により大半は解決することができます。
こういった書類は確定申告などの際に必要になってきますので、時期がきたからといって追われて作業するのではなく、普段からつけておくことをお勧めします。
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