今まで多くの飲食店は、時間の節約や気分転換などの目的で訪れる人たちに満足のいく料理や空間を提供してきました。最近ではテイクアウトできるお店が増え、テイクアウト用のアプリが充実し、事前注文によって店舗も顧客も時間をかけずに商品を提供、受け取ることができるようになりました。
その一方で、繁盛店がテイクアウト営業を取り入れたために、不振に陥ってしまったという実例もあります。そこで今回は、テイクアウト営業で失敗しないためのノウハウについて見ていきましょう。
テイクアウトを利用する人が増えている
食事のスタイルは、飲食店に出かけて食事をする「外食」と、市販のお弁当などをテイクアウト(持ち帰り)して家庭や職場で食べる「中食(なかしょく)」、家庭で手作り料理を食べる「内食(うちしょく)」の3種類に大別されます。
中食とは、外食と内食の中間という意味で使われるようになった言葉です。近年は共働き世帯の増加や高齢化、それに未婚率の上昇が相まって、中食と外食の市場規模が拡大しています。特に、中食つまりテイクアウトを利用する割合が高くなっています。その理由として、次のようなことがあげられています。
- 時間がない
- ふだん食べられないものが食べられる
- 外食するより価格が安い
- (内食は)調理・片付けが面倒
- 好きなものが食べられる
- 自分で食事を作るより価格が安い
- 食材が無駄にならない
- 栄養バランスに配慮できる
共働きや未婚率が増加している背景には長引く経済不況があり、この不況は今後も続くことが予測されます。そのため、外食市場は縮小していき、中食はさらに伸びていくと見られています。
テイクアウト営業のメリットは?
テイクアウト営業を導入している飲食店のなかには、イートイン(店内飲食)とテイクアウトの売上がほぼ同額か、テイクアウトが少し上回るという好調ぶりを示しているところもあります。その理由は2つあります。
1. 客単価が上がる
イートインで売上をアップするには、客数を増やすか客単価を上げる必要があります。小規模の飲食店の場合、客数を多くするためには回転率を上げなければなりません。しかし、回転率を上げようとするとサービスの質がどうしても低下してしまいます。混んでくると席を詰めてもらったり相席をお願いしたりしがちですが、先客も後客も居心地が悪く、落ち着いて料理を味わうことができません。これではリピーターを増やすどころか、マイナスの評判を拡散される恐れがあります。
一方、客単価を上げようとすれば、追加注文を増やすためにサイドメニューを考案したり、値上げというリスキーな判断をせざるを得なかったりします。
その点、テイクアウトは回転率に関係なく客単価を上げることができるため、やり方次第で容易に売上を伸ばすことができます。
ある天ぷら屋では、店内はつねに満席状態で、テイクアウトのお客様も途切れることなく訪れます。月商から客単価を割り出してみると、イートインは650円でテイクアウトは900円を超えることになりました。250円の差が生じるのは、テイクアウトでは天ぷら盛り合わせを一人で数セット購入する人も多いからでした。この店のようなケースでは、テイクアウトが経営を支えているということができます。
2. 新規客の獲得につながる
ランチタイムにテイクアウトを利用していたお客様が、お店の味を気に入って、店内でゆっくりディナーを楽しみたいと足を運んでくれる可能性があります。テイクアウトにはこうした宣伝効果もありますから、忙しくても丁寧な応対をすることが大切です。
テイクアウトを始める理由
テイクアウトのメリットを知ると、ぜひ自分のお店でも取り入れてみたいと感じられたのではないでしょうか?
次に、テイクアウトを始める上でどのような点を意識すると良いのかをご紹介します。
許可書の有無
すでに飲食店として経営し、店内と同じメニューをテイクアウト用として提供する場合、飲食店営業許可書以外の許可書や届出は特に必要ありません。しかし、各自治体によって細かなるルールが異なるため、前もって保健所に確認することをおすすめします。
テイクアウトメニューの消費期限や内容量、原材料の表示
すでに飲食店営業許可書を有している場合、テイクアウトメニューの消費期限や内容量、原材料の表示は必要ありません。しかし、すでに加工されているものを単品で販売する場合、原材料の表示が義務付けされていることがあります。また、テイクアウトの場合、調理されてからしばらく時間がたった後に食べるため、衛生面に十分注意する必要があります。万が一食中毒が生じてしまうと、食品衛生法第55条に基づいて営業停止命令、もしくは営業禁止処分を受ける可能性があります。そうなればテイクアウトだけでなく、飲食店そのものの営業ができなくなってしまうため、日頃から衛生面には細心の注意を払うように心がけましょう。
テイクアウトで使用する食器
料理を入れるための容器、中身がこぼれないための蓋、スプーンやフォーク、紙おしぼり、テイクアウト用の袋など、ひとつずつ揃える必要があり費用がかさむため、事前にどのくらいの費用がかかるのかを把握するようにしましょう。
特に、熱いスープは運んでいるうちに蓋が外れて、スープがもれてしまう恐れがあります。膨張した空気を逃がすための空気穴がついているものを使用するなど、細部まで考慮して選択しましょう。
テイクアウトに向いているメニューは?
テイクアウトとして販売するものは、店内のメニューと同じというわけにはいきません。次の3点はクリアする必要があります。
- 食中毒を起こす心配がないもの
- 時間がある程度経過しても味が劣化しないもの
- 車の中や公園など、どこでもすぐに食べられるもの
この3点を満たすものといえば、かつ丼、牛丼、天丼、寿司、ピザ、パスタ、弁当、おにぎり、サンドイッチいうことになりますが、どれもコンビニやスーパーの人気商品です。そこで大事なのは、コンビニなどの低価格にどう対抗するかということです。
ワンコイン以下という低価格に負けないようにするには、「できたて」を販売することです。コンビニのお弁当や惣菜は、製造工場から店舗までの配送時間がかかっているのに対し、飲食店のテイクアウト商品は、調理場で作ったものなので経時劣化の度合いが違います。これが最大の武器であり価値ですから、なるべく作り置きではなく、できたてに近いものを提供するようにしましょう。
テイクアウトを導入するときに注意したいこと
それでは、テイクアウトを始めるときに注意しておく点をご紹介します。
スピードを心がける
テイクアウト営業を始める際は、イートインのピーク時と重なったときに、手際よく対応できる態勢を組んでおく必要があります。接客がどちらかに偏ったり、調理場が混乱するようでは売上アップは望めません。テイクアウト営業で失敗するのは、「二兎(にと)を追う者は一兎も得ず」ということわざがあるように、二つのものを同時に得ようと欲を出して、結局どちらも取り損なってしまうというパターンです。
特にランチタイムは、店内のお客様も外で待つお客様も時間がないのです。待たされる状態は大きなストレスになることを配慮して、スピーディーなサービスを心がけましょう。
それには、注文を受けたら火を通すだけですぐ、盛り付けられるように下ごしらえをしておくことです。たとえば、肉や魚のフライは揚げるだけですむようにしておき、副菜として添えるサラダやおひたしなどは事前に作っておきます。こうすれば待たせないだけでなく、できたてですからイートインと同じ状態で提供することができます。
包装に工夫をする
テイクアウトの場合は包装のしかたにも工夫が必要です。近くの職場へ持ち帰る人、遠方の自宅へ持ち帰る人などお客様のタイプはさまざまですので、中身が崩れたり汁気がにじんだりしないよう、きちんとパッキングして袋に入れるようにします。袋を用意するにはそれなりのコストがかかりますが、色やデザインでどこのどんな店なのかがわかるようにしておくことで販促効果があり、集客率アップにつながります。
そのほか、割り箸やスプーンなどの必要数を、お客様に確認して入れるようにします。うっかり入れ忘れたりすると、それだけでお店の評判を下げてしまいますから要注意です。
売れる量をしっかりと予想する
もう1つ注意したいことは、テイクアウト用の商品を過不足なく準備することです。慣れるまでは難しいかもしれませんが、見込み違いで作りすぎれば食品ロスが発生します。逆にすぐ売り切れてしまうようでは、お客様に迷惑をかけてしまいます。天気予報や曜日、その日のイベントの有無などから適切な量を判断するようにしましょう。
参考にしたいテイクアウト人気店
ここでは人気のテイクアウト店、6店舗をご紹介します。どのお店も人気の理由にはそれぞれポイントがあるようです。それでは見ていきましょう。
PICY CURRY魯珈
常に行列ができるスパイシーカレー屋さんです。パンチが効いた辛さからマイルドなものまで毎日食べても飽きないとテイクアウトしていくリーピーターが多くいます。
このお店はカレーのほかに、台湾で有名な「魯肉飯(ルーローファン)」という豚バラ肉の煮込みかけご飯もテイクアウトしています。
このように他店と差をつけることも重要でしょう。店内で食べるお店というよりも、テイクアウト中心にしていてそれがヒットしている印象があります。
ビストロ カフェ グラポン
このお店はオリジナル「グラポン」を提供し、他のお店と差をつけています。
さらにこのお店のパンは、一度冷めた後に温めても硬くならず、モチモチふわふわの食感を楽しめるので、テイクアウトしてもお店の味をそのまま味わうことができます。
龍門
中華ランチをテイクアウトして食べたいという人たちに人気があります。
このお店には、全18種類の料理をテイクアウトでき、おかずやスープもテイクアウトが可能で、ネット予約ができるもの魅力のひとつです。
Toast luck(トーストラック)
韓国式トーストで有名なお店ですが、このお店の特徴はそれだけではありません。
毎日昼11:00~夜20:00まで営業しているため、ランチのピーク時間が過ぎた後や、夜食にテイクアウトできるのも人気です。
やきとりの扇屋
やきとり1本1本を丁寧に仕込み、備長炭で仕上げたやきとりは絶品です。
テイクアウトしてもそのおいしさは劣ることがなく、常に人気があるやきとりです。家でお酒をたしなみたい人には嬉しいおつまみですね。
外食だとタバコのにおいが気になるけど美味しいやきとりは食べたいという人にも人気です。少ない本数でもテイクアウトすることができます。
ケバブ カフェ
店内ではトルコ料理のケバブを提供していますが、テイクアウトも可能です。
実際にテイクアウト予約した人によると「予約時間より少し早めに受け取りに行ってもすでに準備してあり、すぐに受け取ることができた」と手際の良さも評判です。
まとめ
いかがでしょうか?
テイクアウト営業は、顧客分析をしないで取り入れると失敗する確率が高くなります。イートインでは売れ筋メニューでも、テイクアウトで売れるとは限らないからです。
イートインとテイクアウト、それぞれの売上傾向を分析するためにきちんとデータを取って、違いを把握することが重要です。それには、POSレジが強力な助っ人になります。また、新しい戦略を立てるときにはマーケティングリサーチが欠かせませんが、POSはそのためにも役立ちます。中食市場への参入を考えている人は、こうした便利なシステムを活用することを検討してみましょう。
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