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販売費一般管理費の中の消耗品と雑費の仕分けは、経理担当泣かせです。
いずれもその内訳となる項目、種類が多く、費用が発生した時に、消耗品費にするのか、雑費にするのか迷うことになります。
もともと消耗品費と思われるものの金額は少額ですので、どうしても粗雑に扱われ易いです。しかし発生時に手間がかかっても適切に経理処理、仕訳処理がされていないと、決算業務に大きな負担がかかります。
ここで、その違いを明確にして適切に経理処理できるようにしましょう。

消耗品費とは
その前に、消耗品って何でしょうか、意外と定義が難しいのです。
消耗品とは、使用することで状態が変化し、やがてその本来の機能が失うか、あるいはそのもの形が無くなってしまうもの、としています。
通常の使用でも、やがて使用に適さない状態に変化するものです。消耗の過程で摩耗しながらその機能を発揮するものです。鉛筆は摩耗しながら、短くなっても機能を維持し、やがて使えなくなります。ガソリンや軽油は燃焼と言う形に変換され、駆動という用を足す消耗品です。
消耗品費とは、取得金額が10万円未満の消耗品又は、使用可能期間(法定耐用年数)が1年未満の消耗品です。
事務所で使用するプリンターの用紙や色々な事務用品、そして10万円未満の機械、器具、備品、車両なども消耗品です。10万円以上の物品であっても、明らかに使用可能期間(耐用年数)が1年以内のものも含まれます。また、事務用品の備品やパソコン、車両など、明らかに固定資産に該当するものであっても取得金額が10万円未満又は、使用可能期間(耐用年数)が1年未満のものは消耗品として損金算入が可能です。
ただし、注意が必要です。取得した物品の単位の問題です。通常取引される物品が単位ごとに行われる場合は、分割して判定はされません。つまり、例えば、パソコンはサーバーとモニター、キーボードなどがセットで取引されます。それぞれの金額が10万円以下であっても、セットにした場合、10万円を超えた時は消耗品として損金算入できません。全額が資産として計上しなくてはなりません。
もう1つ。上記の消耗品は、少額減価償却資産といいますが、これは事業年度内に損金算入の経理処理をした場合のみ有効ですが、一旦減価償却資産として計上した場合、翌事業年度に損金処理を行おうとしても認められませんから注意が必要です。
しかし、例外項目があります。
青色申告者である中小企業者に限って、少額減価償却資産の特例が使用できます。
取得金額が30万円未満の減価償却資産についても、その取得金額の全額を一括して消耗品として損金処理が可能です。
そしてさらに、青色申告者であって、従業員数1,000人以下などの一定の条件を満たした中小企業者は期間限定(平成28年3月末まで)で取得金額10万円以上、30万円未満の減価償却資産の合計額が300万円を限度として全額損金算入が可能です。
(平成28年度の税制改定により適用期間が平成29年末まで延長されました)
なお、少額減価償却資産の特例を使用した場合は、確定申告で少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付しなくてはなりません。
具体的な消耗品費に該当する物品とは(例)
事務用品
文房具全般、印鑑代、封筒、各種伝票、各種用紙類、パソコンのキーボード、マウス、ケーブル、フロッピーディスク、MO、CD、DVD、コピー代金、インク、トナーなど。
工具機器備品
一般工具、事務机、椅子、ロッカー、本棚、掲示板、黒板、白板、電話、携帯電話、FAX、カメラなど(10万円未満)。
ソフトウエアー
各種ソフトウエアー(10万円未満)、及びライセンス料、使用料など。
日用品
ティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオル、石鹸、洗剤、乾電池、電球、蛍光灯、食器、コーヒー、観葉植物、花など。
その他
収入印紙、ガソリン代、軽油、灯油代、オイル交換代、クリーニング代など。
雑費とは
雑費とは損益計算書の販売費一般管理費の勘定科目の1つで、他のどの勘定科目にも属さないもの、科目が分かっていても少額なもの、使用頻度が少ないもの、一時的な費用、臨時的な費用、金額が少額で重要度の低い費用、特に専用の科目を設けるほどではない費用などのことです。
特徴として、雑費は、内訳は記入されません。勘定科目の中で唯一、使用用途が明確でない勘定科目です。従って、使途不明金などが含まれている可能性があるとして税務署から疑義を持たれる勘定科目です。大きな数字になっていると当然目を付けられることになり、内容によっては追徴金が課せられる場合があります。
雑費は何でも使える便利な科目です。使い勝手がいいですから、ついついこの科目を使うことになりますが、基本的には他の科目や消耗品費に振り分けることのできる費用が多いです。
一般的に、雑費の限度額は管理上、1つの目安として経費の5%~10%くらいに抑えておきましょう。
雑費は、最終的な手段として、どうしても他の勘定科目に参入できない費用のみを計上するようにしましょう。
雑費の具体的な費用とは(例)
ほとんど消耗品費に該当するもの
日用消耗品、粗大ゴミ処理費用、清掃代、クリーニング費、振込手数料、証明書、登記手数料、新聞雑誌、書籍費用、NHK受信料、ケーブルテレビ使用料、引っ越し費用、安全協力費、警備費用、などの少額費用、頻度の低い費用。その他。
「雑費」の使い過ぎに注意しよう
雑費という科目に何でも入れてしまうと、適切な経営判断がつきにくくなります。損益管理の中で販売費一般管理費の勘定科目ごとの管理は非常に重要な経営行為です。内容の分からない雑費は極力少なくしましょう。管理ポイントのおおよその目安は費用の5%~10%以内です。
雑費が大きくなると、税務署の調査対象となります。税務署は、常識的に雑費科目はチェックポイントにしています。
雑費は、使途不明金の温床となっている場合があります。会社側が通常な勘定科目に上げられない費用をここに入れるわけです。高額になれば当然税務署は課税の要素はないかどうかを確認します。脱税行為につながる場合もあり、使い方によっては危険な勘定科目です。雑費の使い過ぎはNGですし、雑費で使途不明金隠しをすることもNGです。
消耗品費は決算時に振替が必要
消耗品を購入した時、その購入価格を費用である消耗品費勘定として経理処理する場合と、資産である消耗品勘定として処理する場合の2通り、どちらを選んでもよいことになっています。
どちらを選んでも、決算時には、使用分が費用、未使用分があれば資産として計上することになっています。
〇購入時に費用として計上
購入した時に、その購入価格は費用である消耗品費勘定となります。
仕訳は、借方に消耗品費とし、現金で支払った場合は、貸方は現金となります。
決算の時は、もし未使用分があれば、未使用分を消耗品費勘定から消耗品勘定(資産)に払い出ししなければなりません。
従って、使っていないものがあれば、翌期に使うため、費用に払い出しされます。この時の仕訳は、借方に消耗品として、貸方に消耗品費とします。
〇購入時に資産として計上
購入時の仕訳は、代金を現金で払ったとして、借方に消耗品、貸方に現金とします。
購入した時、資産として計上した場合は、決算の時は使用した分だけ、資産である消耗品勘定から消耗品費勘定(費用)に払い出します。
決算時に、消耗品に未使用分があれば、仕訳は借方に消耗品費、貸方に消耗品となります。つまり、使用分を消耗品勘定(資産)から消耗品費勘定(費用)に払い出す仕訳になります。
但し、税法上は、各事業年度において、一定数量を取得して、かつ経常的に消費する消耗品を購入した時は、期末に資産計上にする必要はありません。
購入した消耗品全部をその事業年度の費用として損金算入してもよいことになっています。
まとめ
雑費という勘定科目は、毎日の事業運営の中で、どうしても粗雑に扱われ易い科目です。領収書がない、金額が小さい、どの科目に該当するか分からない費用、ちょっと経費にするには気が咎める、など、その事業所の品位のレベルを表すような内容です。また、脱税の温床とも言われていますから、粗雑に扱うと痛い目に合います。
消耗品も、全体の費用から見れば少額です。しかし販売費一般管理費や、製造原価計算書の中の構成科目です。経営計画で管理すべき科目です。予算管理を徹底して、計画的に数量管理されなければなりません。

