整骨院を開業するために必要なことは?事前の準備と必要な届出

開業・経営

整骨院を開業したいとき、何から始めたら良いのでしょうか?
「いつか独立したい」と考えながら施術のスキルを磨いている人でも、計画の立て方や資金調達の方法、全体的な手順などが分からない方も多いでしょう。

そこで本記事では、整骨院を開業するために必要なことを徹底解説します。必須の資格、事前の準備、発生する手続きに関して、やるべきことをまとめました。整骨院が成功する可能性を高めるためにも、ぜひ参考にしてください

整骨院の開業に必要な資格

そこ整骨院の開業には国家資格の柔道整復師に加え、施術管理者という資格が必要です。以下で資格の概要をチェックしましょう。

柔道整復師

整骨院の開業時には保健所で施術所開設を届け出る必要があります。その際に、柔道整復師免許証の原本と写しの提出が求められます。

柔道整復師とは

骨・関節・筋・腱・靭帯などのけがに対して、整復や固定を行う仕事です。略称は「柔整/柔整師」で、整骨院(接骨院と同義)などで働きます。治療するけがの例としては、骨折や脱臼・打撲・捻挫・挫傷などが挙げられます。手術をせず、人間の治癒能力を発揮させることを目指した「非観血的療法」による施術を行うのが特徴です。なお、骨折や脱臼の応急手当を行うには、患者を診察した医師の同意が求められます。

資格の取得方法

整骨院の開業には柔道整復師の資格が必須で、年1回の国家試験に合格すると取得できます。受験資格は、文部科学省が指定する4年制大学、あるいは都道府県知事の指定する専門養成施設に3年以上通うことです。

施術管理者

以前は柔道整復師さえ取得すれば、整骨院の開業が可能でした。ただ、不正請求や施術者の質の低下を背景に現在では施術管理者も必要になりました。

施術管理者とは

開業した整骨院で健康保険(療養費の受領委任)を取り扱うのに必要な資格です。つまり、患者は自己負担分を整骨院で支払い、残りの費用は国民健康保険組合などに請求できるようになります。この請求の一連の流れを管理するために施術管理者の資格が必要とされます。

資格の取得方法

施術管理者を取得するには3つの要件があります。1つ目は柔道整復師の資格を有していること、2つ目は柔道整復師としての実務経験があること、3つ目は公益財団法人柔道整復研修試験財団が行う2日間の施術管理者研修を受講していることです。

なお、届出の時期によって必要な実務経験期間が変わるので注意してください。まず2022年4月から2024年3月までに施術管理者の届出をする場合は、2年間の実務経験です。2024年4月以降の届出の場合は、3年間の実務経験が求められます。

整骨院を開業する前に計画すること

整骨院の開業準備では、事業計画書の作成、資金計画の策定、物件選び、オープン前の広告宣伝などを行います。ここでは特に重要なポイントを紹介します。

事業計画の策定

事業計画を立てて開業後の姿を明確にしましょう。「どこで」、「誰に」、「どのような」施術をするかイメージして、コンセプトやターゲット層などを定めます。

施術メニューについては、独立開業するなら自費診療のメニューの追加をおすすめします。保険の範囲内で施術できるのは、打撲や捻挫、骨折、脱臼などに限られますが、自費診療なら、リハビリなどに施術の範囲を広げられるからです。

開業資金計画の策定

まずは開業に必要な費用の総額を割り出して、自己資金で賄うのか、融資を受けるのか決定します。融資を受ける場合の資金調達先としては、新規開業者でも融資を受けやすい日本政策金融公庫を活用を検討をおすすめします。

ちなみに整骨院の開業資金は300〜1000万円程度です。初期費用の内訳は以下の通りです。

  • 物件取得費用:保証金、敷金、礼金、前家賃など
  • 内装工事費用:天井、床、壁などの工事費用
  • 機器購入費用:各種の治療機器の購入費
  • 什器・備品費用:診察台、ソファー、看板などの購入費

ある程度、経営や売上が安定するまではレンタル機器を利用するのが一般的です。

開業場所の選定

事業計画の段階で固めたコンセプトに合わせて、立地や物件など開業場所を選定します。地域ごとに人口構成・年齢層に特徴があるので、ターゲット層とマッチするかリサーチしましょう。

また、立地を予定する地域の競合他社の数や状況を調査し、他施設と差別化するのが大切です。整骨院だけでなく近接業界の整体院・カイロプラクティックなどの数も把握しましょう。

医療機器や備品の選定

想定する施術メニューをもとに必要な医療機器や備品を用意しましょう。一般的な機器としては、電気治療器・超音波治療器・赤外線治療器などが挙げられます。これらは高額なので、開業後に追々導入する形式でも良いでしょう。ちなみに、備品の搬入には時間がかかるので、開業日まで余裕を持って調整しましょう。

内外装のデザインやレイアウト決め

整骨院は法令で定められた構造設備基準を満たす必要があります。一方で、自治体によって構造設備基準の詳細は異なっているので注意しましょう。例えば、東京都では以下の4つが定められています。

  • 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること
  • 3.3平方メートル以上の待合室を有すること
  • 施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること
  • 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること

コンセプトをもとに内外装のイメージを決定し、構造設備基準の範囲でデザインしましょう。レイアウトは設置する医療機器や備品の置き場所、動線などを踏まえて決めます。

【出典】施術所の構造設備基準等について(東京都福祉保健局)

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/tamafuchu/iryou/sejutusho_shucchou/sejutusho_kozokijun.html

集客のための宣伝広告

開業直後に顧客がつくとは限らないので、スムーズな集客のために宣伝をしましょう。自社のWebサイトやSNSの開設、チラシなどの作成が好ましいです。ただし、チラシに関しては、広告できる内容が法令で制限されるので注意してください。例えば、整骨院の名称、所在地、電話番号などは記載できますが、施術メニュー、効能・効果、割引キャンペーンなどは記載できません。

WebサイトやSNSは上記の規制を受けませんが、こちらも誇大表現や医療行為と誤解されるような表現は避けましょう。

整骨院の開業に必要な各種手続き

整骨院の開業では、規定の期間内にいくつかの手続きをする必要があります。必要書類を準備して、管轄の申請機関に届出・申し出をしましょう。届出が遅れると保険請求ができないので、早めの対応が大切です。

施術所開設届の提出

施術所開設届は、整骨院の開設後10日以内に保健所に提出しましょう。その際は以下の書類を添付します。

  • 施術所の平面図
  • 施術所の周辺図
  • 柔道整復師免許証の原本と写し
  • 本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)など

その他、賃貸物件の場合は店舗賃貸契約書の写し、法人開設の場合は登記簿謄本の写しを提出します。ただし、自治体によって提出書類が違うことがあるため、事前に管轄の保健所に相談しておくとスムーズです。

開業届の提出

個人事業主として整骨院を開設する際は、所得税法に基づいて、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を管轄する税務署に提出します。事業の開始から1ヶ月以内に持参又は送付で届け出るようにしましょう。

契約記号番号の取得

健康保険の取り扱い(療養費の受領委任)には契約記号番号の取得が必要で、これがなければ保険請求は行えません。そのため開設届の提出後に、開設地を管轄する地方厚生局に届け出るようにしましょう。

共済承諾番号の取得

整骨院が公務員の療養費の受領委任を取り扱う(保険請求を可能にする)には共済承諾番号の取得が必要です。上述の契約記号番号と似ていますが、こちらは公務員を対象としています。

国家公務員の保険の場合は共済組合連盟に申請し、共済連盟承諾番号を取得します。また、地方公務員の保険の場合は地方公務員共済組合協議会に申請し、地方共済協議承諾番号を取得します。同様に、防衛省職員の保険を取り扱う場合は防衛省共済組合に申請し、防衛省番号を取得します。

労災の指定機関番号の取得

労災保険を取り扱うには労災の指定機関番号の取得が必要です。整骨院を開く場所の都道府県の労働基準局へ申請し、指定を受けましょう。労働局長が提出された書類を審査して問題なければ、労災保険が取り扱えるようになります。

整骨院の開業ではコンセプトを固めることを忘れずに

整骨院の開業では、自分自身のコンセプトを明確化することが大切です。どんな整骨院にしたいかによって、かかる費用や立地など、あらゆるもの変わるからです。また、自分なりの集客方法を決めておくことで、開業直後のスムーズな集客につながるでしょう。

ただし、整骨院は継続的な来院がないと売上が安定しないビジネスモデルです。自費診療のメニューやサービスで他店との差別化を図ったり、世間のトレンドに注目するなどして、顧客のニーズに応える工夫が必要となります。

【参考情報】

店舗運営に欠かせないレジについても確認しておきましょう。タブレットPOSレジなら、整骨院でも導入実績のある「ユビレジ」がおすすめです。会計データの蓄積による分析機能や顧客管理機能も充実しています。

導入事例もぜひご覧ください!

「ユビレジ for Salesforce」で、37店舗の顧客/売上データを一気通貫デジタル化へ | ぷらす整骨院 市ヶ谷店