みなさんのお店では、日本酒を提供していますか。提供している場合、メニューには説明を記載していますか。記載してあっても「冷」と「燗」だけであったり、「純米」や「大吟醸」などといった情報くらいまでではないでしょうか。
もちろんそれだけでもメニュー選択には十分な情報となりますが、日本酒通をうならせることは難しいかもしれません。日本酒で「専門店」を目指すのであれば、「冷」や「燗」などの情報だけでは足りないのです。
そこでトライしていただきたいのは、「酒米」に関する情報を載せることです。酒米情報をメニューに記載するだけではなく、店長やホールスタッフまでも酒米に精通することです。そこで今回は、そうなるための基礎情報をご提供いたします。
酒米とは
では、酒米とはいったいどういうものなのでしょうか。
酒米とは「さかまい」と読み、日本酒を醸造する時の麹米(こうじまい)として使われる米のことを指します。酒米は一般的に「炊いて食べる」うるち米とは味も見た目も、組成も以下のように異なります。
外観が違う
酒米は、炊いて食べる米と比較すると米の粒が大きいのが普通です。なぜかというと、日本酒を醸造する時には「精米」といって米の表面を削るため、小さな粒の米ではすぐに粉になってしまうからです。また、次に説明する日本酒の味を出すための「心白(しんぱく)」を大きくして、材料の効率を上げるためです。
心白が大きい
米には、その中心に「心白」という白くて不透明な部分があります。心白の特徴はタンパク質の含有量が少なく、周囲を削っても砕けないほど粘度が高く、日本酒を醸造する時に使う醪(もろみ)によく溶けるということです。酒米は、心白が炊いて食べる米より大きいのです。
醸造適性がある
米から日本酒を醸造する場合、醸造工程に適している原料である必要があります。つまり、蒸した米が水を吸いやすいかどうか、麹にしやすいかどうかなどです。この要素を満たしている米を、「醸造適性が高い」といいます。酒米はこの特徴を持っているのです。
ですので、一般的に炊いて食べている米と酒米は見た目も味も全く違います。仮に酒米を炊いて食べても全く美味しくありませんし、炊いて食べる米ではまともな日本酒は造れません。酒米は、公式には「酒造好適米」と称されています。
酒米の種類
炊いて食べる米にササニシキやコシヒカリがあるように、酒米にも種類や特徴があります。酒を造る杜氏は、自分の酒蔵の作りたい酒の特徴に合わせて酒米を選ぶのです。逆に言えば、酒米の特徴を知っていれば、そこからできる日本酒の味わいがある程度わかるのです。
ここでは、その酒米の中から代表的な銘柄をご紹介します。
- 山田錦(やまだにしき)
酒米で最も代表的な銘柄は「山田錦」です。全国1位の生産量を誇り、酒蔵で最も多く使われている酒米です。山田錦の9割は、兵庫県で生産されています。山田錦で醸造した日本酒は香りが良く立つので、大吟醸酒や鑑評会用の日本酒はほぼ山田錦が原料です。人気の日本酒である「獺祭」も山田錦が原料です。 - 五百万石(ごひゃくまんごく)
五百万石は山田錦の次にメジャーな酒米です。主な産地は新潟県で、これを用いた日本酒は淡麗で辛口系の味わいになります。そのほか福島県、富山県、石川県などでも多く作られています。代表的な日本酒には「〆張鶴」「久保田」などがあります。 - 美山錦(みやまにしき)
美山錦は突然異変で生まれた、誕生から20年ほどの新しい酒米です。これを用いた日本酒の味わいは、五百万石に似た淡麗な感じです。ただし辛口にはならず、米の味を強く感じさせる性格も持っています。産地は長野県のほか、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、福島県などです。主な日本酒は福島県の「写楽」、岩手県の「浜千鳥」などです。 - 出羽燦々(でわさんさん)
「出羽燦々」は、「出羽」とついていることから分かる通り山形県で生まれました。これを用いた日本酒は口の中に甘みやコメの味が残らず、さらっととした淡麗な味わいに仕上がります。産地はほぼ山形県のみで、主な日本酒は山形県の「麓井」です。 - 雄町(おまち)
雄町は、酒米としては最も古い銘柄です。山田錦や五百万石も雄町を交配して作られました。一時は栽培が難しいため生産量が減少し、絶滅寸前までいきました。しかし、岡山県の酒造メーカーを中心に栽培を復活させ、雄町を用いた日本酒を盛んに醸造するようになりました。味わいは山田錦よりも芳醇でコクがあり、燗にするのにも非常に向いています。主な日本酒は岡山県の「備前酒一筋」ですが、最近では山田錦をメインにしている銘柄のサブブランドとしてどんどん増えています。
酒米によって日本酒の味はどう変わる?
酒米と日本酒における味わいの関係について触れましょう。
酒米だけで日本酒の味は決まらない
上で少し触れたように、酒米によって日本酒の味は変わります。ただし日本酒の味わいは酒米だけではなく、酵母、麹、醪環境、水、精米歩合、火入れ、アルコール添加の有無など複雑な要素が絡むので、酒米だけでその味を当てることはほぼできません。
ただ、酒米が味わいのための重要な要素であることは事実ですので、日本酒の専門店を目指すのであれば理解しておきましょう。
心白の溶けやすさが味に影響する
米の中心部にある「心白」の成分は、70%以上が炭水化物です。しかしどの酒米も一律ではなく、それぞれに特徴があります。
その1つが「硬度」です。心白の硬度が高いと、麹菌の酵素によって糖化されず溶けにくいため、できあがった日本酒は味が強くなく、淡麗なものに仕上がります。逆に、心白の高度が低いと糖化されやすく溶けやすいため、糖分を醪にたくさん供給されます。そのため、味の強い、芳醇な日本酒に仕上がります。
最もそれが特徴的に出る酒米は、以下のようなものです。
- 亀の尾、改良信交など:力強い味わい
- 吟の精、美郷錦など:柔らかい味わい
- 美山錦、酒こまちなど:軽い味わい
酒米の知識を活かすには
以上のような基礎知識を得て、問題はどうメニューやサービスに反映させ、「日本酒の専門店」であることをお客様に訴えるかということでしょう。
ドリンクメニューに記載
まずできることは、ドリンクメニューに酒米情報を載せ、その酒米の性質からくる日本酒の味わいについても記載することです。そこまで詳しく書いているような飲食店はなかなかないでしょうから、圧倒的に差別化が図れます。
ただし、上で書いたように日本酒の味わいは酒米だけでは決まりません。日本酒の味わいを構成する要素は、酒米以外には主に以下3つありますので、それも含めて記載するようにしましょう。
1つは「精米歩合」です。日本酒は、酒米をまず削って心白を出して醸造工程に移ります。その時に、何%心白を残すのかというのが精米歩合です。精米歩合が60%、つまり40%削ると「吟醸酒」、50%精米すると「大吟醸酒」といわれます。原則として精米歩合が高ければ高いほど、雑味の少ない、米の味わいが少ない「透明な」感じの日本酒になります。精米歩合の高い日本酒は、ある意味「水」のようなので、日本酒が苦手な人でも飲みやすいです。
2つめは「純米か醸造酒か」ということです。日本酒の原料は酒米ですが、醸造用アルコールという、真っ当な酒蔵であれば強い米焼酎、コストダウンを考えている酒蔵では化学製品のアルコールを添加する場合があります。これによって品質を安定させたり、味にキレを出すのです。この工程を「アルコール添加」といい、できあがった日本酒を「醸造酒」といいます。反対に、アルコール添加していない日本酒を「純米酒」と言います。醸造酒は味わいがシャープなので、飲んでいて強く感じやすい特徴があります。ですから日本酒が苦手な人の場合や、米の味わいを楽しみたい人には純米酒がいいでしょう。
以上の2つの要素を組み合わせ、アルコール添加をしておらず、精米歩合が50%の日本酒を「純米大吟醸」と呼ぶのです。ただし、醸造酒の場合は「醸造大吟醸」とは言わずに「大吟醸」とだけ言います。
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さらに、もう1つの要素として「低温発酵しているか」があります。発酵は通常30度くらいの温度で行いますが、これを15度程度で行うことを「低温発酵」といいます。この工程にすると、米の吟醸香という花や果物に近い香りがして、フルーティでジュースやカクテルのような味わいの日本酒になります。低温発酵しているのかという情報までメニューに載せている居酒屋は、非常に少ないといえるでしょう。
料理に合わせた日本酒の提案
酒米を含めたこれらの情報から得られる日本酒の味わいは、料理に合った日本酒を提案する、非常に専門性を感じさせるサービスにつながります。
このように書くと難しそうですが、基本は簡単です。料理と日本酒の相性は、「味の重さと軽さ」で考えましょう。
日本酒の味わいは、「淡麗辛口」と「芳醇旨口」の二種類に分類できます。前者はさっぱりとして軽く、水のように飲みやすい日本酒です。後者はどっしりと原料の米が感じられる、じっくりと味わうタイプの日本酒です。お客様の嗜好もありますが、基本はこの「淡麗=軽い」「芳醇=重い」にあわせて料理を選ぶのがセオリーです。
たとえば、味噌をからめた味の濃い料理に淡麗の日本酒を合わせると、日本酒が負けてしまいます。そういう場合は、芳醇なほうがよいのです。反対に、白身の刺身など淡泊な料理に芳醇なものを合わせると料理の味がしなくなるので、淡麗がいいのです。このように、軽い料理には淡麗を、重い料理には芳醇な日本酒を合わせるように提案すれば、大きく外すことはないでしょう。「当店は、日本酒と相性が抜群な日本酒をご提案しますので、どんどんご相談ください」といったようにどんどんアピールしていきましょう。
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まとめ
いかがでしょうか?
酒米にこだわる目的は「差別化」であり、他店との競争を勝ち残ることです。お店の方向性として日本酒の専門店を目指すのであれば、今回ご紹介したような酒米の知識の収集とメニュー上での情報提供、あるいは料理提案との連動などを検討しましょう。いずれにしても、まずはできることからぜひ実行してみてください。
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