誰にとっても身近な小売店である「パン屋さん」の開業に必要な修行年数や資格はありません。自分のお店を持ち、新しいパンを開発してお客さんに喜んでもらえれば、やりがいが感じられるでしょう。
「令和3年賃金構造基本統計調査」によれば、パン屋のオーナーおよびスタッフの平均年収は約340万円とされています。新しいパンやサービスを考え続ける力が必要ですが、地域に根付いた人気のお店に成長すれば、安定した収入が見込めるでしょう。そこで今回はパン屋を開業するまでの流れや開業後に必要なポイント、費用について解説します。
パン屋を経営するために必要なお金
パン屋の開業準備にて、どれだけの資金が必要か把握しましょう。基礎的な内容をしっかりと理解できれば、事業計画の作成や資金調達など、開業までのさまざまな準備をスムーズに進めるために必要不可欠です。また、開業前には物件の取得費用や内外装の工事費用などさまざまな箇所にお金がかかります。工事のやり直しや失敗を防ぐためにも、まずはお店のコンセプトから決めるのがおすすめです。
開業前の初期費用
店舗の物件の取得費
店舗は、居抜き物件を借りるかスケルトン物件で借りるか、あるいは自宅を店舗にするかで費用が変わります。あらかじめお店のコンセプトを固めておき、居抜き物件を借りる際はコンセプトに合った物件を検討しましょう。
また店舗経営で成功するには立地が重要です。費用を抑えることばかり重視し、立地が悪い物件を選ばないよう注意しましょう。人通りの多さは来客数と関係性が強いため、活気のある場所を見つけたら、常に不動産をチェックすることをおすすめします。
内外装の工事費
顧客へ提供するサービス内容によっても内外装工事にかかる費用が変わります。購入したパンを店内で食べられるようイートインスペースを設ける場合、テイクアウトのみにする場合、テラス席を設ける場合によって変わります。
居抜き物件を借りるなら、壁紙を貼り替えたり家具を揃えたりある程度の費用はかかるものの、工事費を抑えられます。ただし内装や設備が、お店のコンセプトに合わない場合があります。スケルトン物件なら内外装を希望通りのレイアウトにできますが、電気・ガス・水道・空調などの設備工事費用がかかります。
厨房機器の取得費
パン屋経営には、作業台・オーブン・冷蔵庫・ホイロ・ミキサー・ニーダー・コンロ・パンラックなどの厨房設備や器具が必要です。中古を購入すれば費用が抑えられますが、節電仕様ではない場合は、新品よりも維持費や修理費用がかかる可能性があります。
開業後の諸経費
人件費
オーナー1人または家族でパン屋を運営するか、従業員を雇うかにより人件費が大きく変わります。オーナー1人の経営や家族経営なら人件費の融通が効きますが、従業員を雇えば労働規則に沿った人件費を支払う必要があります。
材料費
パン作りに必要な、小麦粉やバター・砂糖・塩・酵母などの原材料の仕入れにも費用がかかります。特に販売や商品開発でパンを作るほど材料が必要になるため、毎日売上とのバランスを見極めることが重要です。
家賃・水道光熱費
店舗を借りている場合は毎月の家賃がかかります。また店舗のなかが広いほど光熱費がかかります。
広告宣伝費
開業して間もないときは集客方法を工夫し、お店の宣伝を行います。Webサイトをプロに依頼する場合や折込チラシを作成して配ってもらう場合には費用がかかります。無料のホームページ作成ツールやSNSを利用すれば、費用をかけずにお店の宣伝ができるため、積極的に活用しましょう。また開業後も、新商品を販売するタイミングなどで定期的に宣伝する必要があります。
税金
売上に応じて所得税や消費税の支払いが必要です。経営の状態にかかわらず毎年納めるため、自身が支払う税金の種類と額を把握しましょう。特に起業または独立開業して個人事業主になった場合は、確定申告も資金繰りも自身で行う必要があり、従業員を雇用している場合は従業員分の社会保険費用がかかることを考慮しましょう。
パン屋の経営に必要な資格・許可
パン屋のように食品を提供する場合は、開業届以外にも複数の営業許可申請が必要です。万が一許可を申請せず営業を続けた場合、食品衛生法の違反により、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に科せられる恐れがあります。
食品衛生責任者
パン屋など、食料品を取り扱う場合には、食品衛生責任者の資格を持つ人を店舗に置くことが義務付けられています。資格は、各地域の食品衛生協会が行っている食品衛生責任者講習会を受講し手続きをすれば取得できます。
飲食店営業許可
取り扱うパンの種類によっては必要です。例えば、サンドイッチなどの調理パンを製造・販売する場合や、店内にイートインスペースを設ける場合に必要です。店舗がある地域を管轄している保健所へ申請すれば許可が取得できます。
菓子製造許可
アンパンなどの菓子パンに分類されるパンを製造・販売する場合に必要です。当許可も同様に、店舗がある地域を管轄している保健所へ申請すれば許可が取れます。
パン製造技能士
パン屋を開業するために必須の資格ではありませんが、国家資格のため、所持したほうがパン作りスキルのアピールポイントになるうえ、顧客へ安心感を与えられます。パン製造技能士は、各地域の職業能力開発協会が行っている技能検定で、検定を受けるには一定の実務経験が必要です。
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パン屋の経営を安定して続けるために必要なこと
パン屋は参入障壁が低く、店舗数やライバルが多いため、未経験のままいきなり開業するにはリスクが高いと考えられます。開業のためにまずは専門学校や海外などで数年間の修行期間を設け、パン生地作りや製パン技術の知識やノウハウを習得した人も珍しくありません。競合店と差別化を図るには、パン作りを長時間行えるだけの体力や、市場のニーズを見極める力が必要です。
パンを作り続ける体力を維持する
パン作りは、早朝から夜遅くまで続きます。早朝からパンの仕込みを始めて開店までにパンを焼き上げ、営業時間中も焼きたてのパンを補充するため接客の合間にパンを作り続けます。また営業時間が終わったあとも翌日のパンの仕込みを行い、1日の売上の集計や店内の掃除など翌日の準備を終わらせます。オーナー1人で店舗運営する場合は、これらの製造・販売・接客・会計を1人ですべて行うための体力と心構えが必要です。
魅力的な商品・サービスを開発する
安定して売上をあげるためには、他店にはない個性的なメニュー・サービスを提供し、差別化を図ることが重要です。独自のコンセプトを活かし、競合店にはない強みやこだわりがあれば、心強い武器となるでしょう。店舗の立地などを考慮し、お店に来て欲しいターゲット層をある程度明確にして需要を見極めるのがポイントです。
またパンが売れていてもブームによる一時的な人気の可能性もあります。ブームが過ぎると売れ行きが悪くなる場合もあるため、常に新しい惣菜パンやメニューを開発してヒット商品を出し続ける必要があるでしょう。
経営者としての視点を持つ
パン屋のオーナーは、おいしいパンを提供するだけではなく経営者としての一面もあることを意識すべきです。具体的には、パン屋を営む経営者として、売上だけでなく利益にも目を向けます。
多くのパンは単価が安いため、売上が増えてもあまり利益が伸びないことがあります。小麦粉や砂糖の値段は、海外情勢の影響を強く受けるため、価格が高騰しやすい材料です。1つのパンあたりにかけるコストも重視し、できるだけ製造コストを削減して同じ売上から得られる利益を増やしましょう。
パン屋の経営を始めるならコンセプトと立地を大切に
パン屋さんを開業するなら、初めにコンセプトを固めておくことで、必要な資金の算出や提供するサービス内容の決定がスムーズにいくでしょう。
ただしパン屋を1人で経営する場合は、パンの製造から接客、会計まで1人でこなす必要があります。そのため独立開業もいいですが、大手のフランチャイズ本部に加盟する手もあります。
ロイヤリティや契約金を本部へたびたび支払う、および提供するサービスの自由度が低いというデメリットがあります。その代わりに業務研修や市場調査などの出店サポートや経営ノウハウ、資金調達方法まで相談にのってくれるため、パン作りや店舗経営の未経験者でも出店できるメリットがあります。
自分にあった方法でパン屋を開業し、お客様が喜ぶパンを提供しましょう。
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