飲食店開業資金の目安は?内訳や調達方法、コストを抑えるコツ

最終更新日: 2023/05/26
開業・経営

飲食店の店舗開業の際は、まとまった開業資金が必要です。店舗物件の取得費用や内外装にかかる費用、経営が軌道に乗るまでの運転資金、プロモーション費用などを準備しておきましょう。

自己資金のみで難しい場合は、金融機関による融資や補助金などを活用する方法もあります。廃業リスクを避け、健全な店舗運営を行えるよう、開業準備の際は具体的な事業計画や収支計画を作成するのがおすすめです。今回は、飲食店の開店資金の目安や内訳、資金調達や初期費用節約のコツをご紹介します。

飲食店の開業資金の目安

開業に必要な金額は店舗によって異なります。事業計画を立て、開業資金をいくら用意すべきかを求めましょう。こちらでは、開業資金の相場や、資金を確保しておくべき理由を解説します。

必要な開業資金は700万円~1500万円程度

飲食店の開業時にはまとまったお金が必要です。出店規模や立地などの要素によって必要な開業資金は変動するものの、総額700万円~1,500万円が一般的とされています。

また、日本政策金融公庫国民生活事業による調査では、開業費用の平均が1,077万円という結果が出ています。調査対象は2021年4月~9月に融資したなかで、融資時点で開業後1年以内の企業4,817社です。飲食店以外のサービスも含んでいる数値ですが、ひとつの目安として覚えておくと良いでしょう。

【出典】日本政策金融公庫総合研究所「2022年度新規開業実態調査」

余裕ある資金の確保が必要な理由

飲食店を出す場合、開業準備にかかる費用以外にも資金を確保しておくことが大切です。飲食店の売上が黒字になるまで半年程度はかかるとされていますが、経営が軌道に乗るまでにも家賃や光熱費、仕入れ、経営者自身の生活費などの支払いは必要です。売上が黒字になるまで飲食店を経営できる資金を準備しておかなければ、すぐに立ち行かなくなるでしょう。事業計画書を作成し、綿密な予算計画や返済計画を立てることが融資を受けるうえでも重要です。

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飲食店の開業資金の内訳

飲食店開業時は、物件取得費用や店舗投資費用などさまざまな設備資金が必要です。経営が順調にいくまでの運転資金や、店の広告宣伝費なども計算しておきましょう。

物件取得費用

物件取得費とは、店舗として使用する物件を用意するための費用です。敷金や礼金、仲介手数料などの合計が物件取得費となります。

店舗用物件を借りる際は、居住用の不動産を借りるときとは異なる決まりがあるため注意が必要です。特に気をつけておきたいのは保証金です。契約時に賃料の6カ月から12カ月分を支払うケースが多く見られます。

前店舗の設備や内装が残った居抜き物件の場合は、造作譲渡費がかかります。造作譲渡費は、前まで店舗を使っていた経営者へ支払う設備費用のことです。金額についてはケース・バイ・ケースとなります。

また、審査のために物件のオーナーへ必要書類の提出も行います。賃金を支払い続ける能力があるかどうかを判断するため、具体的な事業計画書や収入状況、借り入れの有無がわかる書類などを求められることもあります。条件の良い物件を見つけた際は、スムーズに手続きを進められるよう、あらかじめ書類を準備しておきましょう。

店舗投資費用

店舗投資費用とは、物件を自分好みの店舗に改装するための費用です。外装工事や内装工事、設備の購入などにかかる費用が含まれます。

店舗の外装や内装に関わる費用

開業する店のコンセプトに合った外装にするため、看板の取り付けや外壁の改修を行うことがあります。電気、水道、ガスなどのインフラ整備が不十分な場合は、配管更新や配線工事なども必要です。また、壁紙の張り替えや、椅子、テーブルの購入など、インテリアに関する部分も費用がかかります。

店舗の設備に関わる費用

店内で調理した料理を提供する場合、調理台やシンク、冷蔵庫、製氷機などの厨房機器が必要となります。包丁や鍋などの調理器具、皿やフォーク、ナイフなどの食器といった小物も買い揃えなければいけません。また、代金の精算や売上を管理するレジも用意します。厨房設備は特に高額になりやすいため、設備に応じた資金を用意できるか確認しておきましょう。

運転資金

運転資金は、店舗の売上を軌道に乗せるまでに必要な費用です。材料費や人件費、水道光熱費、通信費、家賃、生活費などが主な項目として該当します。特に大きな割合を占めるのは日々の食材費や、雇用している従業員への給料などです。

運転資金が不足すると資金繰りができなくなる可能性もあるのは注意点です。安心して経営を始めるために、およそ6カ月分の資金を確保しておくと良いでしょう。

広告宣伝費

広告宣伝費は、飲食店を知ってもらうために必要な費用です。公式ホームページの運営費、チラシの印刷費、グルメサイトへの登録費などが含まれます。一切宣伝をせずに顧客を増やすのは難しいため、広告宣伝による集客に力を入れることもポイントです。必要な経費を想定して準備しましょう。

飲食店の開業資金を得る方法

飲食店の開業資金は、自己資金だけでなく、金融機関による融資やクラウドファンディングによる資金調達などで得ることもできます。それぞれのメリット・デメリットを把握し、適切な資金調達方法を選びましょう。

複数人で共同経営を行う

飲食店をオープンしたい人が複数人集まって資金を持ち寄る方法があります。1人あたりの資金負担が少なくなり、開業のハードルを下げやすい点がメリットです。

ただし、経営者同士で意見や主張の食い違いが起こる可能性があります。数年先まで見据えた計画を練り、よく意見をすり合わせた上で共同経営を開始しましょう。

金融機関を利用する

飲食店を開業する多くの人が利用している方法が、金融機関からの融資を受けることです。公的金融機関と民間金融機関があるため、双方の特徴を押さえておきましょう。

公的金融機関

公的金融機関とは、政府が出資する金融機関のことです。特に、日本政策金融公庫は飲食店をはじめ店舗を開業する多くの人に利用されています。経営実績がなくても融資を受けられることがあるため、飲食店経営が初めての場合も申請しやすいのが魅力です。民間の金融機関と比べて金利を抑えやすいメリットもあります。

民間金融機関

開業資金の調達方法として、民間の金融機関を利用するという選択肢もあります。地方銀行や信用金庫、信用組合は開業者に対して資金を融資するケースもあります。ただし、大手銀行は実績がないと断られる可能性が高い点に留意しましょう。

クラウドファンディングで支援を募る

クラウドファンディングとは不特定多数の人からインターネット経由で資金の提供や協力を募ることです。飲食店に特化したクラウドファンディングサイトもあるため、選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

クラウドファンディングでは、協力してくれた人へ対して何らかのリターンを行うことが基本です。店舗側は資金提供のお礼として飲食クーポンなどの特別なサービスを提供することが多く見られます。魅力的な特典を考え、支援者を募りましょう。

自治体の制度を利用する

各都道府県や市区町村が開業資金の融資制度を用意していることがあります。場合によっては、補助金や助成金などの制度を利用できることもあります。例えば、中小企業庁が運営する創業補助金がこれに当たります。創業補助金は開業にかかる経費に対して最大200万円(補助率上限2/3)の補助を受けられる制度です。利用できる補助金、助成金は自治体によって異なるため、詳細は役所に問い合わせましょう。
補助金や助成金について詳しい内容や金額、条件などは次の見出しで説明します。

飲食店開業の際に知っておきたい補助金・助成金

補助金や助成金の活用は、飲食店の資金調達手段の1つです。補助金ごとに趣旨や申請条件、補助金額が異なるため丁寧な情報収集が求められます。以下で代表的な補助金を3つ紹介しますので、条件に一致するものがあれば積極的に活用しましょう。

小規模事業者持続化補助金

全国の商工会議所が管轄する地区で事業を営む小規模事業者が対象の補助金です。主に販路開拓への取り組みや業務効率化を支援するための制度で、商工会や商工会議所のサポートを受けながら取り組みます。

飲食店の場合、常時使用する従業員が5人以下の小規模事業者を対象とした補助金のため、今後開業を目指す経営者の多くは活用できるでしょう。

補助率は3分の2で、枠ごとに上限金額が設定されています。例えば、通常枠であれば50万円、創業枠であれば200万円が上限となり、インボイス特例の要件を満たせば50万円が追加されます。

事業再構築補助金

ウィズコロナ時代の経済の変化に対応するために、新分野展開や業種転換などの事業再構築を図る中小企業を支援するための補助金です。特に飲食サービス業をはじめ、製造業や卸売・小売業など、幅広い業種で応募・採択されています。

コロナ禍ではデリバリーやテイクアウトなどの業態転換が、飲食店の目立った取り組みでした。2023年現在では、冷凍食品の開発や店舗の改装といった付加価値を高める取り組みが増加しています。

補助率は3分の1〜2分の1で、補助金額は従業員数ごとに異なります。例えば、従業員数20人以下で成長枠の場合は、100万円〜2,000万円が補助されます。なお、大規模な賃上げを実施する場合は補助率が引き上げられる仕組みです。

IT導入補助金

ITツールやソフトの導入による、業務効率化やDX推進、セキュリティ対策を支援するための補助金です。飲食店では、POSレジやキャッシュレス決済、クラウド会計ツールなどの導入に活用することができます。本補助金は、ITツールなどのソフトウェアに加え、パソコンなどのハードウェアや最大2年分のクラウド利用料も同時に申請することが可能です。

会計・受発注などのソフトは50万円以下の場合で補助率が4分の3、50〜350万円であれば3分の2が補助対象になります。

特にPOSレジはハードウェアとソフトウェアが両方必要で、クラウド利用料もかかる場合があるため、IT導入補助金との相性は比較的良いといえるでしょう。

POSレジとは?(POSシステム)

飲食店の開業資金を抑えるコツ

飲食店は物件の取得や内装工事に多額の費用がかかるため、他の業種よりも初期費用に多額の資金が必要です。ただし費用はオーナーの工夫次第で極力抑えることが可能。上手くできれば開業後の経営負担の軽減につながるでしょう。以下で開業資金を抑える節約のコツをご紹介します。

居抜きの物件を借りる

居抜き物件とは前のテナントの調理設備や壁、天井の内装、棚などが残っている物件を指します。開業資金を抑えたい場合はもちろん、設備や内装などをそのまま使用できる居抜き物件を選ぶことがおすすめです。飲食店を開業する際は、調理設備や排気ダクトがそのまま使える物件を選ぶことで内装費用の節約につながります。

店舗をDIYする

内外装工事を業者に依頼するのは無難ですが、高額な費用がかかる点はデメリットです。そこでオーナー自身ができる限りDIYをすることで、発生する費用を抑えることができるでしょう。
また、内外装工事の費用を抑えられるだけでなく、余った予算を他の資金にあてることも可能です。開業後の内外装のメンテナンスなども自分でできるため、店舗運営をするうえでの費用を抑えられる点もメリットといえます。

中古の備品や什器を購入する

飲食店はどの業態においても、開業時の各種設備や備品に費用がかさみます。特に、厨房機器は高額な製品が多いため多額な出費をともなうでしょう。そのため、中古の備品や什器を購入することで費用を抑えることを推奨します。
飲食店の備品や什器の中古品を扱う専門店やオンラインショップもあるため、状態が良く継続して使用できる商品を選ぶと良いでしょう。また、アウトレット品を検討することも方法の1つです。

飲食店の開業資金に関するよくある質問

個人事業主として飲食店を一から開業するとなると不安なことも多々あります。事前に対策を練ることで想定される不安を解消することも重要です。ここでは飲食店の開業資金に関するよくある質問をご紹介します。

飲食店は自己資金0円でも開業できますか?

結論からいうと、自己資金0円での飲食店開業は避けたほうが無難です。なぜなら、飲食店開業後すぐに経営を安定させることは難しく、収入が安定するまでに時間がかかるためです。
また、仮に開業後、利益が思ったように出ないという状況になったとしても、運転資金は発生します。すると経営が安定するよりも先に資金繰りが厳しくなり、廃業する可能性が高まるでしょう。そのような状況を避けるために、自己資金0円での開業は避けることを推奨します。

飲食店の開業資金以外に確認が必要なことはありますか?

飲食店の開業時に必要な資格を確認することは、資金調達や節約と同じくらい重要です。飲食店開業において取得が必須の資格や、開業する飲食店の業態によっては必要になる資格もあります。以下で、飲食店の開業における代表的な資格を2つご紹介します。

食品衛生責任者

食品衛生責任者とは、食品衛生上の管理や運営を行うための資格です。飲食店を営業する場合、各店舗に最低1人は食品衛生責任者を設置し、保健所への届出が必要です。飲食店では従業員内にこの資格を有している人がいないと開業できません。
食品衛生責任者の資格は各都道府県が実施する講習会を受講することで取得可能です。

防火管理者

防火管理者とは、消防計画や防火管理を行うための資格です。この資格は店舗の収容人数が30名以上の場合必須です。また、以下のように店舗の延床面積によって資格取得に必要な講習が異なります。

  • 店舗の延床面積が300平米以上の場合:甲種防火管理講習
  • 店舗の延床面積が300平米未満の場合:乙種防火管理講習

飲食店の開業資金は余裕を持って準備することがおすすめ

開店までの初期投資額が大きくなりがちな飲食業ですが、店舗取得に関わる費用や備品購入費用、経営に関する費用など、どういったものにお金がかかるのかをシミュレーションしておくことがおすすめです。

友人などと共同経営する場合は1人あたりの出費を抑えられますが、円滑な運営が難しい場合は、融資やクラウドファンディングなどを利用するのもひとつの手です。また、補助金や助成金は飲食店でも活用できるケースが多く、条件に該当しているのであれば積極的に応募しましょう。

開業後のランニングコストも加味しながら、余裕を持った資金調達を行うことで店舗運営を軌道に乗せることができます。ぜひ、オーナーのこだわりを詰め込んだ飲食店を成功に導きましょう。

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