入社手続きをしっかり学ぼう!入社手続きに必要な書類や準備について

開業・経営

入社イメージ

従業員を雇用することになると、法的に定められた各種の届出・手続きが必要です。雇用主と従業員の間で取り交わす書類をはじめ、労働基準局や社会保険事務所へ届け出る書類など多岐にわたります。

これらは法人か個人事業か、正規社員か非正規社員かによって条件が異なるものがあります。また、義務か任意かの違いもありますから混同しないように注意しなければなりません。

ここでは、飲食店における社員、パート・アルバイトの雇用形態ごとに必要な諸手続きについて見ていきましょう。

まず必要な入社手続きとは

入社手続きイメージ

正社員に限らずパートやアルバイトでも採用する人が決まったら「雇用契約書」または「労働条件通知書」を作成します。どちらも雇用主と従業員の間で交わす書類ですが、次のような違いがあります。

●雇用契約書……雇用主と従業員の同意に基づくもの。それぞれが署名捺印をして保管することになっていますが、必ずしも書面にする義務はなく、口約束だけでも成立します。

●労働条件通知書……雇用主が従業員に通知するもの。労働条件について明示すべき項目が労働基準法によって定められています(下記参照)。これは雇用契約書のように従業員の同意を得るものではないため、署名捺印の必要はありません。

労働条件通知書に記載する項目(労働基準法第15条)

  1. 契約の期間……正社員の契約期間は無期限ですから、「期間の定めなし」とします。パート・アルバイトは契約期間を定めて、更新の有無を明記します。
  2. 就業場所……店舗の所在地を記入します。
  3. 業務内容……接客のほか、調理補助や清掃など営業に関連する業務があることを明記しておきます。
  4. 始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働、休日労働……勤務時間と休憩時間、残業や休日出勤の有無について記載しておきます。パート・アルバイトの場合は、基本シフトだけでなく、変更の可能性があるシフトについても明記しておく必要があります。
  5. 休日……月に何日休みがあるのか、年次有給休暇や夏季休暇、年末年始休暇の有無について記載します。
  6. 賃金……社員の場合は基本給、諸手当、割増賃金率、賞与、退職金の有無などを記載します。社会保険料、所得税、住民税など給料から控除するものもわかるようにしておきます。パート・アルバイトの場合は、時給や割増賃金のほか、昇給や賞与の有無について記載することが義務づけられています。
  7. 退職や解雇に関する事項……定年制の有無、自己退職や解雇する場合の規定についても記載しておきます。 パート・アルバイトも退職手当の有無について記載が義務づけられています。

 

雇用契約書兼労働条件通知書の書式例(出典:淀川労務協会)

http://www.yodogawaroukyou.gr.jp/wordpress/wp-content/uploads/pdf/collection/koyoukeiyakusyo_syain.pdf

以上の2種類のうちどちらを利用してもよいことになっていますが、契約書(通知書)に記載した契約期間や労働時間は、雇用保険や社会保険に加入する際に必要となるため、「雇用契約書兼労働条件通知書」の書式で作成し、両者が署名捺印をして保管するのが一般的です。

入社手続きの方法とは

入社手続きの方法を説明

従業員を雇用する際は、従業員の入社手続きの他にさまざまな準備や手続きが必要となります。

労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作成

新しい社員を雇う場合、労働基準法によって、労働者名簿などの作成が義務付けられています。まずは、労働者名簿ですが、項目として性別、住所、業務、入社年月日、前職場の退職年月日と理由の記載が必要となります。

また、賃金台帳も必要なのですが、これは雇用形態を問わず全ての労働者に対して記載が必要となっています。最後に、出勤簿を作成する必要があるのですが、これは少し特殊で、三年間の保管が義務付けられていますので、退職した社員のものだからといって簡単に処分しないように気を付けて下さい。

税金に関する手続き

社員やパート・アルバイトに関わらず、1人でも従業員を雇用する場合は、個人事業主でも「給与支払事務所」となり、所得税や住民税を給料から源泉徴収(天引き)して、その分を税務署に納めなければなりません。

その手続きとして、最初の給料の支払いから1か月以内に、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。

個人事業で従業員が10人未満の場合、「特例の承認に関する申請書」も併せて提出することによって、毎月納めるべきところ、年2回の納付ですむようになります。

源泉徴収票の重要性と住民税の手続き方法

源泉徴収票は、所得税などが記載されている書類となっています。これは、年末調整にも用いられる書類となっており、源泉徴収票は会社側としての義務となっています。また、住民税に関してですが、特別変わった徴収でない限り

  • 普通徴収
  • 給与からの特別徴収として控除

を選ぶことができます。

尚、この項目に関しては後からの変更も可能となっており、社員から申し出があった時は、会社側で手続きしなければなりません。

労災保険への加入手続き

仕事上の事由や通勤途中で病気やけがをした場合に国が補償してくれる保険で、雇用形態にかかわらず、すべての従業員が対象となります。手続きは、「労働保険関係成立届」に必要事項を記入し、労働関係が成立した翌日から10日以内に、労働基準局かハローワークに提出します。保険料は雇用主が全額負担します。

雇用保険への加入手続き

失業して再就職の意思がある人に「失業給付」が支給されるもので、パートやアルバイトでも、1週間の労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用が見込まれる従業員は加入の義務があります。

従業員が1人の個人事業でも「雇用保険適用事業所」となるため、「雇用保険適用事業所開設届」と「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに雇用から翌月10日までに提出しなければなりません。保険料率は給料の0.9%で、本人が0.3%を、雇用主が0.6%を負担します。なお、労災保険と雇用保険は、雇用主自身は適用除外者とされ加入することはできません。

雇用保険は、社員が失業してしまった時に、失業保険をもらうための制度であり、重要な保険となっているので、手続きに不備がないように行っていきましょう。また、この雇用保険の手続きには、先ほど少し紹介した労働者名簿と賃金台帳、そして出勤簿が添付資料として必要になっています。

入社前の社会保険の手続きについて

福利厚生の中に社会保険があると思いますが、健康保険や厚生年金といった社会保険の手続きは、年金事務所や健康保険組合に提出することとなります。この時に必要な届け出は「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」となっています。

また、この届け出に関しては期限が設けられており雇用開始から5日以内となっているので注意して下さい。尚、雇用主に配偶者や子どもがいる時は「健康保険被扶養者届」も一緒に提出しなければなりません。

社会保険加入の手続き

社会保険には「健康保険」と「厚生年金」「介護保険」があります。個人事業においては従業員を5人以上雇用している場合は加入義務が生じますが、飲食店やホテル、理容などのサービス業は「任意適用事業」とされており、何人雇用しても加入の義務はありません。従業員の2分の1以上が加入に同意し、事業主が加入の認可申請をすることで「適用事業所」となり、加入が義務づけられることになります。保険料は事業主と従業員が半額ずつ負担します。

パート・アルバイトは労働時間などが一定の条件を満たせば加入対象となります。(「飲食店経営者なら知っておこう!パート・アルバイトの社会保険について」参照)

手続きは、健康保険と厚生年金ともに加入する5日以内に、「資格取得届」を年金事務所に提出します。なお、介護保険は40歳になるとすべての人が強制加入となります。

社会保険や雇用保険の手続きが遅れてしまった時はどうする?

社会保険や雇用保険は社員を雇う上で、会社が絶対に行わなければならない手続きなのですが、何かしらの事情があり、提出が遅れてしまうこともあるでしょう。しかし、先ほども説明したように、これらには期限があります。

もし、期限を過ぎてしまうとどうなるのでしょうか。雇用保険では、遡る全期間の賃金台帳と出勤簿、そして「遅延理由書」を提出することで、期限が過ぎても届けが可能となります。

社会保険では、決められた期日から60日以上経っていると、賃金台帳などの書類を提出することで受理してもらえます。めったにないことだと思いますが、もし2年以上さかのぼる時は、さらに聴取書も提出が必要となっています。

年金手帳や雇用保険被保険者証の作成などの書類がない場合

年金手帳や雇用保険被保険者証に関しては、前の職場で使っていたものの提出を求められるケースがあります。しかしながら、退職から時間が経っていたりなど、人によっては、これらの書類を紛失していることもあるでしょう。

このように、必要書類がない場合ですが、年金手帳に関しては、再交付の手続きを無料で行うことができます。

雇用保険被保険者証に関しては、社員自らが前職に問い合わせるか、もしくは、ハローワークに問い合わせることで再交付してもらうことができます。意外と多くの社員が雇用保険被保険者証を紛失しているので、会社側はスムーズに手続きができるよう、この流れを覚えておくようにしましょう。

入社手続きに必要な書類とは

入社書類

従業員を採用するにあたり、本人から提出してもらって雇用主が保管しておかなければならないものがいくつかあります、その主なものをあげてみましょう。

住民記載事項証明書……「住民票」は本籍地など個人情報が記載されているため、会社に提出するものは現住所など事務的に必要な事項のみ記載する証明書を用いることが多くなっています。

年金手帳……社会保険に加入する際に必要です。前職がなくても、20歳になると国から年金手帳が交付されるのでそれを提出してもらいます。コピーを取って手帳は返却します。

健康保険被扶養者(異動)届……従業員に配偶者や子どもなど扶養義務のある家族がある場合、「資格取得届」と合わせて年金事務所へ提出する必要があります。

雇用保険被保険者証……雇用保険に加入したことのある従業員から提出してもらいます。

口座振替依頼書……給与や賞与の振り込みに必要な書類。預金通帳のコピーでも可です。

通勤手当支給申請書……交通費を支給するにあたり、通勤経路の確認のために必要です。

マイナンバー……社会保険をはじめ、税に関する手続きでもマイナンバーが必要になります。使用目的を説明したうえで通知カードのコピーを提出してもらい、大切に保管します。必要がなくなった時点ですみやかに破棄しなければなりません。

そのほか、事業所によっては身元保証書や秘密保持誓約書などの提出を求めるところもあります。

その他の入社準備について

入社歓迎

新人の入社日が決まったら、店側は迎える準備をする必要があります。従業員の早期離職の原因の1つに「店長はじめ先輩スタッフが冷たい」というのがありますが、初日での第一印象が悪ければ長続きするはずがありません。

まずは、制服があれば1人につき2着は用意しておきたいものです。連絡ノートや日報などがある場合はわかるようにしておき、スタッフルームもきれいに片付けておきます。

タイムカードも準備しておきます。最近は、従来のカードに打刻するタイプではなく、勤怠管理システムを導入している飲食店が多くなっています。これは、各スタッフの打刻データが自動的に集計されるので、複雑な給与計算も時間がかからず、またミスすることもありません。

そして、入社当日になったらみんなで温かく迎え入れ、自己紹介をし合って歓迎の意を表しましょう。

まとめ

入社の説明会

スタッフの離職を防ぐためには、信頼関係を気づくことが第一です。そのためにも初めに雇用契約書を取り交わし、お互いに納得したうえでスタートすることです。

保険や年金の加入手続きなども大変ですが、これはスタッフのためというよりむしろ雇用主にとっての保険といえるのです。たとえば、仕事中に大けがをした場合、労災保険に未加入の場合は雇用主が治療費を負担しなければなりません。そうしたことも考慮して、抜かりのないようしっかり手続きをすませるようにしましょう。

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