飲食物を扱うお店にとって、衛生管理は基本中の基本です。この衛生管理には食材や厨房設備だけでなく、スタッフの身だしなみから健康状態まで含まれています。
つい食材や調理器具の管理を重視しがちですが、髪の毛一本が取り返しのつかないトラブルを引き起こすこともありますから、身だしなみにも絶えず気を配らなければなりません。そこで今回は、直接食べ物に触れるキッチンスタッフの衛生管理において、とくに注意すべき点について説明していきます。
キッチンスタッフの役割とは
キッチンスタッフの仕事内容は、お客さまの注文する料理をその店のマニュアルに添って調理することです。自分の好みでこしらえる手作り料理と違い、使う食材の種類と量、調味料の分量、加熱の温度や時間、さらにお客さまに出すタイミングまで細かく決められています。それがお店の「味」であり、クオリティーの高さを決定づけるものですから、マニュアルをしっかり修得し、継承していくことがキッチンスタッフの役割です。
もちろんキッチンスタッフの仕事はそれだけではなく、裏方としての雑務をたくさんこなさなければなりません。では、一般的なレストランのキッチンで働くスタッフを例に、1日の仕事の流れを追ってみましょう。
<キッチンスタッフのスケジュール>
7:30 スタッフ出勤……キッチン内の掃除。ランチの仕込みの準備。
8:00 料理長(シェフ)出勤……配達された食材の確認。ランチとディナーの仕込み開始。
11:00 ミーティング……本日の予約客やスケジュールをスタッフ同士で確認。ランチ営業の準備開始。
11:30 ランチ営業開始……新人スタッフは洗い場を担当したり、ホールで配膳の手伝いなどをしながら調理の流れを覚えていく。シェフは調理とともにスタッフの指導・監督、味の最終確認を行う。
15:00 ランチ営業終了……お店をいったん閉めて、食事、休憩。
17:00 ミーティング……ランチタイムでの反省点などを話し合い、ディナーの準備開始。
17:30 ディナー営業開始……新人スタッフはランチと同様に、洗い場と配膳の仕事をする。シェフは調理、スタッフの管理・指導、味の最終チェックを行う。
23:00 ディナー営業終了・閉店……シェフは帰宅。スタッフは後片付け、掃除、明日の準備をしてから帰宅。
このように仕事量は多く、かなりの重労働です。ユニフォーム(コックコート)には油汚れや調味料のシミがついたりしていますから、汚れがひどい場合は自宅に持ち帰って洗濯をしなければなりません。
さて、ここから本題に入っていきますが、キッチンスタッフが着用するコックコートがなぜ「白」なのかご存知ですか?
それは「汚れを目立たせるため」なのです。汚れが目立ちやすい白をあえて身につけ、汚れに気づいたらすぐ着替えることで清潔な身だしなみを保つことができるからです。修業を積んできた料理人は手さばきが違いますからコックコートを汚すようなこともなくなります。いつもパリッとしていて、それだけで料理がおいしそうに感じられます。
どんなに高価な食材を使った料理でも、キッチンスタッフの身だしなみが不潔なものであっては、お客さまは不快感と安全面での不安がつのってきて料理は台無しになってしまいます。
最近はユニフォームも黒や茶色などダークカラーが増えてきていますが、清潔感を保つことの重要性は変わりません。次項では、キッチンスタッフとして心得ておきたい身だしなみのポイントを見ていきましょう。
キッチンスタッフが身だしなみを意識する理由
身だしなみを整えるということは、自分自身をカッコよく見せることではありません。それはおしゃれであって、身だしなみは相手に不快感を与えないための思いやりです。
飲食店の場合は、スタッフが身だしなみを整えるのは、衛生管理が行き届いている店であることをお客さまに示すためであり、同時に自分の気を引き締めるためでもあります。
キッチンはお客さまの目に触れないから汚れていてもかまわない、などと思うルーズなスタッフが一人でもいたら、その店の存続はかなり危ぶまれます。一事が万事ということわざがあるように、そういうスタッフは手洗いなどもいい加減で、細菌のついた素手で調理をして食中毒を引き起こしてしまった、などということになりかねないからです。
ひとたび食中毒の発生源として営業停止処分を受けることになると、大々的に店名が公表されてしまうため、そこから信頼を回復するのは極めて困難です。そうした事態に至るのはよほどのことですが、身だしなみをきちんとすることは、「この店の安心・安全を保証します」というメッセージであることを認識して、見えない部分にこそ気を配るように努めましょう。
キッチンスタッフが注意すべき身だしなみとは
身だしなみについてはキッチンスタッフもホールスタッフも基本は同じです。ここではキッチンスタッフとしてとくに注意したい点をあげてみます。
◆コックコート
1人につき2着支給し、各自で管理するようにします。油汚れなどがひどくなってきたら「煮洗い」をすると効果的です。素材が綿100%のものに限りますが、
①ステンレスやほうろうの鍋にコックコートと水と洗剤を入れて火にかける
②沸騰したらふきこぼれないように火を弱めて、20〜30分ほどぐつぐつ煮る
という方法で意外なほどきれいになります。
コックコートの場合、木綿100%のものは漂白剤を使うのはNGです。木綿の本来の色は生成り色(淡い黄褐色)です。それを真っ白に色づけしてあるので、何度も漂白してしまうと元の生成り色になり、生地も傷んでしまうからです。
ポリエステルと木綿の混紡は煮洗いができませんので、70℃程度のお湯で浸け置き洗いが有効です。黒ずみがひどくなったものは家庭では落ちないことが多いため、クリーニングに出すことをおすすめします。
◆頭髪
食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌は、健康な人でも毛根や鼻腔、のどなどに常在している細菌です。これが食物の中に入ると増殖して毒素を作り出し、その食物を口にすることで食中毒が引き起こされてしまいます。毛髪が食材や料理に混入してしまうと発症の恐れがありますから、調理をする際はキャップをきちんと着用するようにします。
◆靴
外を歩いてきた靴にはどんな細菌が付着しているかわかりません。それにキッチンの床は水や油、洗剤などで滑りやすくなっています。転倒防止のためにも滑りにくい靴にはき替えましょう。コックシューズは滑りにくくできているので安心です。
◆爪
爪の間には細菌がたまりやすいので、もっとも注意しなければなりません。お店によっては始業前に必ず爪のチェックを行うところもあります。
◆指輪・ネックレス・時計
指輪やネックレス、時計も、肌と触れ合う部分に細菌がたまりやすく、簡単に除菌もできないので、仕事注は必ずはずします。
◆女性のメイクについて
女性のキッチンスタッフの場合、化粧をしていいかどうか悩む人がいますが、キッチンは何と言っても熱気がこもる場所ですから、せっかくのメイクもすぐに化粧崩れしてしまうことを覚悟しなければなりません。店の状況によって配膳やレジを頼まれることもあるという環境であれば、軽めのメイクをしておくといいでしょう。
まとめ
飲食店を経営するうえでの指針とされているのが「QSC」です。Quality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(衛生)の頭文字を取ったもので、次のような意味があります。
Quality:品質のよい食材を使い、一定レベルの調理法でつくった料理を提供することです。
Service:お客さまが来店してからお帰りになるまで快適に過ごしてもらうために「気配り」「目配り」をすることです。
Cleanliness:店舗の内外からキッチンの食材や調理器具、スタッフの身だしなみもつねに清潔に保たれている状態をいいます。
このうちのどれか1つでも欠けてしまうと顧客満足度を上げることはできません。キッチンで働くのだから汚れて当たり前と考えるのではなく、店のイメージアップのために全員でQSCの強化に努めるようにしましょう。
【おすすめ記事】
ワインの保存方法とは?正しく保管して美味しいワインを提供しよう
バリスタは接客のプロ!資格の種類や取得方法を詳しく解説します
【店舗経営においてはPOSレジが欠かせない】
店舗を経営するにあたって、今やなくてはならないのが「POSレジ」です。POSレジ一つで日々の業務効率化だけでなく、売上管理・分析等を行うことが出来ます。
現在はiPadなどを用いた「タブレット型POSレジ」が主流になっており価格も月々数千円~で利用出来るようになっています。機能性も十分に高く、レジ機能はもちろん、会計データの自動集計により売上分析なども出来るため店舗ビジネスをトータルで効率化させることが出来ます。
「機能を使いこなせるか不安」という方には、操作性が高い「ユビレジ」がおすすめです。業種を問わず累計3万店舗以上で導入されているタブレットPOSシステムで、月々6,900円(税別)からご利用いただけます。
実際の操作方法などが気になる方には無料のオンラインデモも対応可能!まずはお気軽にご相談ください。