この記事のもくじ
飲食店に限らず事業を経営する場合、会社であろうが個人事業主であろうが決算書や税務申告書などの作成・提出が必要となります。そのためには事業にかかわる日々の取引を記録し、仕訳を起こさなくてはなりません。これらの作業はある程度の知識が必要で手間もかかりますので、外注するケースがあります(参考:「飲食店での経理業務効率化はどうすればいい?〜外注の上手な活用方法〜」)。外注のやり方は千差万別で経理周りの作業をほぼすべて外注するケースもあれば、社内の経理や総務の人材が処理するケースもあります。また、経営者が経理までやってのけるケースもあります。
業種によっては入出金や材料の管理をすべて外に“丸投げ”することもあり得ますが、飲食店の場合はその業種の特性からリスクやコストを考えるとあまり現実的ではありません。
そこで今回の記事では、外注の仕方にかかわらず飲食店側でしっかり管理すべきものや作成すべき資料について代表的なものをご紹介したいと思います。
また、各管理表の簡単なフォーマットも用意しましたので是非ご活用ください。
- 各管理表のダウンロードはこちらから
現金 しっかり管理すべきもの①
多くの飲食店で最も注意深く管理しなくてはいけないのが現金です。
飲食店を構えていると多額の現金を扱っていることが外から容易に想像でき窃盗や強盗が起こる事態が想定できます。また、火を扱っているお店の場合は火災によって焼失することもあります。さらには、従業員の着服など意図的な不正も起こり得ますし、意図的ではない過不足(レジ打ちのミスや釣り銭の渡しミス)も生じ得ます。このように現金に関するリスクは他の業種と比較し高く、これらのリスクを抑えるためにつり銭以外は預金や金庫へ日々入金することの重要性を痛感している経営者様は多いでしょう。
レジ内の想定残高と実際残高に差額がないか頻繁に管理することは当然として、レジ内とは別の小口現金がある場合も現金出納帳を作成し、入出金の内容をしっかりと記録し、実際の有り高と差額がないかこまめに確認する習慣をつける必要があります。
- 必要な管理表・・・現金出納帳
預金 しっかり管理すべきもの②
クレジットカードや常連客の会社へ請求し売上金を決済しているようなお店の場合は、預金への売上金の入金がありえます。また、店舗内の設備機器の購入や新店舗を立ち上げるにあたって多額の支払いがある場合は預金からの支払もあるでしょう。これらの入出金のみであればなんとか預金通帳を見れば内容がわかるかもしれません。
しかし、小口現金からの入金やレジ金への補充、個人事業主であれば私用の現金引き出しなどが混在する可能性がありますのでこちらも現金同様、出納帳をつけて入出金の内容をこまめに記録しておきましょう。
最近ではクラウド会計のような預金の動きが自動で仕訳として現れる機能のあるソフトもありますのでそういったものを活用するのもおすすめです。
「個人事業主におすすめ。クラウド会計ソフトを導入して経理業務を簡単にしよう」を参考にしてみてください。
- 必要な管理表・・・預金出納帳
在庫 しっかり管理すべきもの③
期末日時点にある未使用の在庫は原則的に費用にはなりません。
そのため、決算日時点の切手や印紙などの未使用分を洗い出すのは業種に関わらず必要なことですが、飲食店の場合は特に取り扱う材料が細かかったり多かったりするので在庫管理が煩雑になることがあります。
よって、在庫管理表などを活用し日々の在庫を管理することが必要になります。もっとも飲食店の場合は、食材の使用期限の管理やメニュー別の原価計算などに役立てるために、決算書作成に必要な情報以上に細やかでタイムリーな管理をされている店舗が数多くあるのも事実ですが。
今回添付資料としてご紹介するのは、一般的な在庫管理表の様式です。
- 必要な管理表・・・在庫管理表
債権・債務 しっかり管理すべきもの④
会計の大原則は発生主義といって、決済が取引日よりも遅れるような掛取引の場合でも、その取引が発生した時に帳簿に記録しなくてはなりません。例えば12月決算のお店であれば、12月に売上げたものは入金が何か月か先だとしてもすべて12月の売上として記録しなくてはなりません。費用も同じ考えです。
現金取引のみのお店であれば管理の必要はありませんが、カード決済が可能なお店の場合や食材を掛で仕入れているようなお店の場合には債権債務をきちんと管理する必要があります。
この管理を怠ると発生月に正しく取引を記録できない事態が起こり得ます。また、発生月に売上や仕入をせっかく正しく記録したのに入出金の際に債権の回収あるいは債務の弁済ということに気付かずに売上や仕入を二重で計上してしまうケースもあります。
慣れてしまえばとても簡単ですので管理表を活用して正しい決算書の作成に役立てましょう。
- 必要な管理表・・・売掛金管理表、買掛金管理表
固定資産 しっかり管理すべきもの⑤
長期的に使用する備品や機械などの固定資産をお店が購入した場合は、購入時に費用にせずに使用期間にわたって少しずつ費用化していくことが原則になります。そのため、通常の経費とは異なる管理をしなくてはなりません。購入したものが固定資産に該当するかどうかはこまめに税理士などにその都度確認を取ることをおすすめします。
なお、固定資産は店舗の立ち上げ当初などでない限りはそこまで頻繁に取得することが想定されませんので、管理はさほど複雑ではありません。また、仕訳の記帳を外部へ依頼しているお店であれば、通常は固定資産台帳というものも依頼先が作成してくれますので固定資産の購入や売却の事実のご連絡と請求書など証憑書類の提出でお店側の対応は済むでしょう。
まとめ
今回紹介した「しっかり管理すべき各管理表のフォーマット」を用意しましたので是非ご活用ください。
※一般的な形式のものとなります。
これらは、慣れてくればどなたでも簡単に作れるようになります。また、内容の理解がだんだんと深まってくると、単なる経理資料にとどまらず経営の現場で役立つようになってくるものばかりです。まずはこの記事を参考に一歩踏み出していただければと思います。
とはいえ飲食店が本格稼働するとやはり管理するモノが多く正確な資料をスピーディーに作成することが難しくなります。不慣れな方はなるべく早い段階で適切なパートナーを見つけて店舗運営していくことをおすすめします。
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この記事の著者
石原 雄大(イシハラユウダイ)公認会計士/税理士。2008年、青山学院大学卒業後、同年に公認会計士試験合格。翌年の2009年から都内の税理士法人に約4年間在籍。上場・非上場を問わずさまざまな業種に対するコンサルティングサービスに従事。会計監査、税務顧問のほか複数のM&A、組織再編、事業再生等の案件に携わる。その後、2013年からリクルートグループの経理統括部に約2年間在籍し、経営支援及び2014年の上場準備を実施。上場後、石原税務会計事務所にて開業し、法人・個人の税務顧問、相続等のサービスを中心に展開。 石原税務会計事務所 |