どのような規模の飲食店であろうと、お店を事業として経営している以上、必ずしなければならないのが確定申告とその後の納税です。しかし、独立したてであったり脱サラして初めて確定申告を行う人の場合、どのように準備をすればよいのか分からず、不安もあるかもしれません。また、確定申告は期間中に正しい金額と計算方法で行わないと、あとで思わぬ出費につながる可能性もあります。
そこで今回は、確定申告を行う直前に慌てないための準備にスポットを当てながら、確定申告の基本情報についてご紹介します。
確定申告はいつから準備すればいい?
確定申告についてご紹介する前に、まずはいつまでに確定申告を終える必要があるのかについてご説明します。なぜなら、確定申告においては、申告の期限を守るということが重要度の3割を占めるからです。
確定申告期間は1か月間
確定申告は、その年の1月1日から12月31日までの期間の所得が対象です。それをもとに、翌年の2月16日から3月15日に申告を行います。ただし、曜日によっては日がずれる可能性もありますので、国税庁のサイトなどで確認しましょう。
確定申告によって算出された所得税は3月15日までに、消費税は4月2日までに納付をします。確定申告に関するスケジュールは以上がすべてですから、これだけを頭に入れておきましょう。
1月にはスタートを
確定申告の準備はいつからすればよいのでしょうか。何度も確定申告の経験があり、なおかつ、毎月の締めや領収証の管理をきちんとしている場合は、2月に入ってからでも十分に間に合うでしょう。しかし、確定申告にまだ慣れていない人、確定申告にむけた毎月の整理ができていない人は、確定申告のための申告書を作成し始めると、必ずと言っていいほど不明点が噴出するでしょう。そのため、税務署に不明点を一つひとつ問合せながら進めることになります。そうしたことを想定すると、1月中には準備を始めたほうがよいでしょう。
ただし、後でご紹介しますが、申告内容によってはあらかじめ年内に手続きが必要なものもありますので、要注意です。
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確定申告の準備はなにがある?
確定申告のための詳しいスケジュールを分かったところで、いよいよ確定申告のための準備に関する話に移りましょう。
確定申告とは?
基本のおさらいとして、確定申告とはどういうことをすることなのかについて確認しておきましょう。
確定申告を行うためには、まずは売上を計算します。そして、売上から営業上かかった経費を差し引き利益を求めます。これを「所得」といいます。こうして算出された所得の額をベースに納めるべき税金を計算し、確定申告の用紙で提出・申告します。確定申告後、税金を納付するというところまでが確定申告です。
したがって、適切に確定申告するには、売上と経費を正しく把握するための施策を考えることが準備となります。
普段から売上管理をしっかりする
では、準備の1つとして売上の把握をしましょう。
一般企業であれば、売上、つまり取引の結果に伴う金銭のやり取りは、銀行振込や手形など形に残るもので行うことが多いですから、売上が漏れるということは非常に少ないです。しかし飲食店の場合、現金による取引、つまりお客様が代金を現金で払うということが多いので、売上の漏れが非常に起こりやすくなります。
たとえば、現金取引でかつレジを使っていない場合、意図的に10回に1回の頻度で売上をなかったことにしてしまえば、その分所得が減りますから、納める税金も減ります。つまり、簡単に脱税できてしまうのです。税務署はこうした脱税方法についてよく知っていますから、特に飲食店の確定申告については、売上が正しいかどうかを入念にチェックします。
飲食店における売上管理の基本は、1日の営業が終了した段階で、手元にある現金の合計金額と、その日の伝票の売上合計が一致しているかどうかを毎日チェックすることです。レジを使っている場合は、レジペーパーの金額と現金の合計金額が一致しているかどうかの確認です。確認後、万が一売上額と現金の額が一致していなければ、売上が漏れているか、お釣りを渡し損ねているかなどが考えられます。こうした違いは、しっかりとその日の内に正さなくてはなりません。とは言え、伝票が正しくお釣りが間違っている場合は、お客様を追いかけて訂正するわけにはいきませんので、不明金として管理をしておきましょう。
以上のような業務を毎日していない場合は、1年分をさかのぼってこの作業を行う必要があります。しかしながら、365日分のチェックを一度に行うことは大変です。そこで、まずは毎月の伝票の金額を合計して、正確に売上を算出しましょう。
支払った経費を仕訳しておく
次は経費についてです。税務署は経費の細かい内訳までは見ないことが多いとされますが、個人的に使った経費まで売上から差し引いていると、それも税金を少なくする「脱税」になります。そのため、税務署は「脱税」をしやすい経費については、しっかりチェックしてきます。
これとは反対に、経費として差し引けるはずの費用を差し引いていないと、税金を本来の額よりも多く納めてしまうことになり、損をすることになります。こうした状況を税務署が仮に発見したとしても、わざわざ税金が減るようなことは親切に教えてくれません。ですから、自分でしっかり正しく計上することが重要です。
そのために必要なことは、かかった経費をその内容によって分類し、計上することです。たとえば、家計簿でも使ったお金を食費や学費などに分類して書くことがありますが、それをもっとルールに則って行うイメージです。これを「仕訳」と言います。仕訳る内訳については細かい基準がありますので、以下簡便にご紹介しておきます。左が仕訳名で右がその内容です。
- 仕入:食材やドリンクの購入代金
- 租税公課:収入印紙代や事業税、仕事に使うために買った固定資産の固定資産税、仕事に使った車の自動車税
- 荷造運賃:食材を購入した場合に着払いで支払った宅配代など
- 給料賃金:アルバイトなどに支払った給料など
- 水道光熱費:水道料金、電気料金、ガス代など
- 広告宣伝費:新聞折込やフリーペーパーなどへ広告を出した場合の費用、チラシやショップカードの作成代、ホームページの作成費用など
- 採用費:求人広告代など
- 損害保険料:店舗、厨房機器などにかけている保険料
- 手数料:クレジットカードの利用手数料など
- 修繕費:割れた窓を入れ替えた、壊れた厨房機器を修理したなどの費用
- 消耗品費:割りばし代、トイレットペーパー、紙ナプキン、事務用品、帳簿など、使ったらなくなるものに関する購入代金
- 減価償却費:高額の厨房機器や、店内の什器を購入した代金を数年に分けて計上する時の費用
- 福利厚生費:従業員の健康保険、労災保険、雇用保険の店側の負担分、制服代、レクリエーション費用など、従業員のために使った費用
- 支払利息:経営のために借りた借入金の利息
- 地代家賃:店舗や店舗用駐車場の賃借料
- サービス費:レンタルのおしぼり代、NHKや有線放送の受信料、生花
- 図書費:店舗に置く新聞、雑誌代、料理の参考にするための書籍代など
- 衛生費:洗剤、殺虫剤、ユニフォームクリーニング代、店舗清掃費など
- 燃料代:木炭等の調理用燃料費用
- 調査費:市場調査のために行う他店での飲食代
- 専従者給与:青色申告をしている場合の経営者の給与、賞与
- 雑費:以上のどれにも当てはまらない必要経費
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レシートや伝票は保管しておこう
経費を正しく計上するためには、払った費用の記録としてレシートや領収証、仕入伝票などを必ず保管しておきましょう。それらは確定申告の際に提出する必要はありませんが、書類に不備などがあった場合には必要になることもあります。また、法律上では7年間の保管が義務付けられています。
確定申告の準備のポイントは?
以上が確定申告の基本的な手順となります。上記までにご紹介した内容に加えて、飲食店を経営する個人事業主が気をつけたほうがよいポイントについてご紹介します。
売上と収入の計上漏れがないように
上記でもご説明しましたが、売上の漏れがないように気をつけましょう。計上漏れをしないために気をつけることは、以下の3つです。
- クレジットカード決済をしている場合
クレジットカードでの支払いを受け入れている場合、売上の計上は自分の口座にクレジット金額が入金された日ではなく、お客様が利用した日で行います。つまり、12月31日にクレジットで支払った代金は、当然入金は翌年になりますが、売上計上は今年分に入るということです。 - 賄いを提供している場合
従業員への賄いに対して代金を受け取ったら、売上として計上します。 - 売上以外の収入がある場合
個人店ではあまりありませんが、酒類メーカー等からのバックマージン、専属契約料、協賛金などを受け取った場合は、売上ではありません。しかし収入ではありますので、「雑収入」として計上する必要があります。
以上すべてが正しく処理されていないと、売上の漏れになってしまいます。税務署は売上部分についてはしっかりチェックするので、気をつけましょう。
故意ではなくても公私混同がないように
「公私混同」についても、税務署は厳しくチェックします。たとえば、仕入れた食材の一部を自宅で使った場合、その分は仕入れから差し引く必要があります。また、店で自分のために調理をして食事をとる場合もあるでしょうが、その食材費も「自家消費」として差し引かなければなりません。ただし、その金額は「一般的に売られている金額」「仕入れた金額」「売られている金額の7割」のどれかで計上すればいいので、1番高い金額を選びましょう。
そのほか、自宅用、自分用に使った経費を売上から差し引いていると、税務署から指摘されることがあります。以下の基準からその費用が必要経費かどうかを判断し、公私混同がないようにしましょう。
- 店舗の経営上必要不可欠な費用であること
- 金額が常識の範囲であること
従業員の賄い分は給与か福利厚生費
賄い代を従業員からもらわない場合、それは従業員の利益になります。したがって、賄い代金を従業員の給与に加え、従業員が給料に対する所得税を納めることになります。
ただし、
- 従業員が食材費の半額以上を負担していること
- お店の負担額が月額3,500円以下であること
の両方に該当する場合は、給与ではなく福利厚生費で処理をしてもよいので、従業員は税金を払わなくて済みます。また、残業時に出した賄い代に関しては、代金をもらわなくてもそれは店の都合による賄いにあたるため、給与ではなく福利厚生費になります。
他店視察でかかった飲食費も経費
競合店や他業態での繁盛店に試食に行った場合の飲食代も、「調査費」の名目で経費になります。ただし、日時や試食したことを証明できる視察メモは記録として残しておかないと、経費として認められませんから注意しましょう。
仕入れに使った自家用車のガソリン代も経費
自家用車を使って市場に仕入れに行ったり、産地まで視察に行った場合、その往復に使ったガソリン代や高速代も「自動車費」として経費になります。ただし、視察はその往復距離を燃費で割ってガソリン単価をかければガソリン代は出ます。しかし、毎日の仕入れのために使ったガソリン代を計算することは非常に煩雑で、現実的ではありません。その場合は、毎月の合計のガソリン代から、1ヶ月の走行距離のうち仕入れのために走った距離の割合で算出しましょう。
このように、認められる経費をしっかり計上することは脱税ではなく「節税」となりますので、しっかり申告するようにしましょう。
厨房機器は複数年に分けて経費化する
お店を開業した際に、改装したり高額の厨房機器を購入した場合、それは固定資産として「減価償却費」として計上することができます。減価償却費とは、代金を1回で経費化せずに「減価償却費」として複数年に分けて計上することです。複数年とは何年かというと、厨房機器は8年、改装費用はおおよそ15~18年、3年以内で取替える可能性があるものは3年となります。機器のうちどれが「固定資産」に該当するかは、おおむね10万円以上がひとつの基準となります。
まとめ
いかがでしょうか?
確定申告は、定められた期間内に正しい金額で行う必要があります。そのためには、売上を正しく把握することと、経費も正しく把握したうえで営業用に使ったと認められるものだけを計上することが重要です。しっかりとミスなく確定申告を行うためには、毎月の締めの処理が重要となります。確定申告の直前に慌てることがないよう、上記でご紹介した準備を日頃から行うようにしましょう。
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