
この記事では、「飲食店の開業・経営・独立のための15の準備」で簡単に説明した部分をより深く解説しています。
起業して事業を始めても右往左往してしまい、目の前のことに精一杯でなかなか長期的な視点で考える時間が取れないケースは多々あります。
その大きな原因は、事業を進めるうえで必要な戦略や想定されるリスクと対処法を多角的な視点からまとめていないことです。事業計画書はそのような事柄をまとめた文書であり、事業を発展させていくためにとても重要です。また金融機関から融資を受ける際にも自身の事業を理解してもらうため必須です。
そこで今回は、事業計画書の概要、作成手順、気を付けるポイントなどを紹介します。筆者が作成した事業計画書のフォーマットもダウンロードできますので、ご活用ください。
事業計画書とは?
なんの計画もなく行き当たりばったりで事業を始める人はそういないでしょう。しかし、その計画を頭にしまいこんでしまい、紙に書き出すなどの形にしていない人は結構多いのが実情です。「事業をする」と一口にいっても、考えるべきことは無数にあります。その無数の検討事項を自分の頭の中にだけしまっておいても、なかなか整理をつけられません。
整理できてないと他の人に説明することもままならず、事業の良し悪しの議論すらできないことになります。とてもじゃないけど事業を発展させるためのより良い戦略を考える余裕なんてなく、その日を乗り越えるだけで精いっぱい、という状態に陥ってしまうことも多々あります。
そんな状態から抜け出すためには、いったん紙やPCなどのツールを使って事業に関する事柄をすべて書き出して、整理をする必要があります。
この、事業に関する一連の情報をまとめたものが「事業計画書」と考えてください。あなたの事業をより良いものにするためにも、できれば開業前から事業に関する諸要件を洗い出し、整理しておきたいところです。
事業計画書と創業計画書の違い
「創業計画書の書き方!日本政策金融公庫の融資審査を高確率で通す方法」で取り上げた創業計画書は、事業計画書の1種と考えて良いでしょう。どちらも、事業や会社の状況をより詳しく知るための資料です。それでは何が違うのかというと、「誰のためにつくるのか」というところです。創業計画書は主に金融機関のために作るのに対して、事業計画書は、基本的には自分のために作る資料になります。
創業計画書は、事業を始める前後に作るケースが多いです。その目的は、金融機関等に融資のお願いをすること。つまり、創業時にお金を借りるために作るのです。
一方で事業計画書は、事業を始める前後のみならず、事業をしている最中でも作ります。事業をより良いものにしていくためには、定期的に事業計画書の内容を考え直し、常に最新の状態にしておく必要があります。
創業計画書の書き方!日本政策金融公庫の融資審査を高確率で通す方法
事業計画書を作る理由
事業計画書を作る理由は、「自分の頭の中にあるものを書き出して頭を空っぽにし、見える化した自分の考えをもとに、より良い成長戦略を練ること」だと考えています。
考える内容はかなり多く、面倒くさい作業でもあります。また、事業計画書を作ったからといって、その通りに事業が進むわけはありませんし事業がうまくいくとも限りません。だからといって事業計画書作りをサボり、無計画・無目的で事業を行うことは絶対に避けるべきです。今この一時はラクかもしれませんが、それは「事業がうまくいかない計画」をして「事業がうまくいかなくなる確率を高める」行為をしているだけです。
頭の中だけで事業について考えてみても、せいぜい「こんな商品をこんなエリアで売りたい」「こんなサービスをいくらで提供したい」ということくらいしか考えられません。もちろんこれらも大切な要素ではありますが、その他にも考えないといけないことはたくさんあります。そういった様々な要素について熟考せずに勢いで事業を始めると、次のような事態が起きてしまうおそれがあります。
- 理想とはかけ離れたお客さんばかりが来る。
- 縮小傾向にある市場で事業を展開してしまった。
- 思ったよりも売上が伸びず、もう自己資金が底をつきそうだ。
- お金を借りたはいいものの、赤字を穴埋めするのに精いっぱい。
- 人件費や家賃などで毎月払う固定費が案外多く、利益が大して出ていない。
- 想定よりも原価がかかり、「骨折り損のくたびれ儲け」状態に陥ってしまっている。
- 同業他社との違いをアピールできず、安売りをせざるをえなくなり、価格競争に巻き込まれた。
- 思ったよりも人手が要り、その人件費を稼ぐために事業をやっているような状態になってしまった。
事業は、ままごとや学生の模擬店ではありません。売上と仕入を見ているだけでは事業は成り立ちませんし、勢い・気合い・根性による経営は決して長続きしません。
事業計画書を作っていても、上記のような「不測の事態」をゼロにできるとは限りません。しかし、事業計画書作りを通じて自分の事業を客観的に見直し、不測の事態の発生確率を下げることはできます。
不測の事態を避けるために、「考えておけばよかった」をなくすために、そしてあなたのやりたい事を実現させるために、事業計画書を作り、自分の事業に対する考えを形にしてみましょう。
事業が始まってしまうと、ゆっくり時間をとってゼロから事業計画書を作るのは大変です。繰り返しになりますが、比較的まだ時間のある創業前にこそ、事業計画書作りに取り組まれると良いでしょう。
事業計画書を作るコツ
一度で、完璧な事業計画書を作り上げられる人はまずいません。
しかし、作り方にはコツがあります。こんな段階を経て作ってみましょう。
- 頭の中の考えを全部出す
- ツッコミつつ、見直す
- 情報をまとめる
- 人に見てもらう
- 定期的に見返す
「事業計画書を作る」となると、一気に1~3をやってしまいがちですが、しかしこれはかなりの作業量で負担が重いです。すべて同時並行で進めようとするとなかなか筆が進まず、言い回しなどの些細なことが気になり、だんだんと面倒になって気が重くなり挫折してしまいます。
まずは気楽に、「質問に答える形で事業計画書のネタを出していく」という段取りで進めていきましょう。順を追ってみていきます。
1. 頭の中の考えを全部出す
これからお伝えする質問を足がかりに、思いつく事柄をすべて書き出してみましょう。「記憶」を「記録」化することで、頭の中をクリアにします。書き出せば書き出すほど、ラクになっていきます。「事業計画書を作る」というよりは、「たたき台を作る」という感覚で洗い出しを進めていきます。まだ内容を確定させる段階ではありませんので、文章の体裁や表現、言い回しなんかは全部無視!文章ではなく、単語だけでも構いません。誰かに見せるわけでもないので、内容が稚拙でもまったく構いません。
繰り返しになりますが、この段階では「懸念事項を洗い出して頭の中をクリアにする」ということが一番の目的です。
2. ツッコミつつ、見直す
たたき台を作ったら、1日ほどおいて見直してみましょう。たたき台を見直すことで、「これはちょっと楽観視しすぎだろ」「こんな数字のはずはない」「こんなサービスもウケるかな」「あ、この項目を出し忘れてた!」といったように、穴を埋めつつ、各項目についてさらに広く、そして深く考えることができます。
- 出した数字は現実的かな?
- ここに書き出したものが全部かな?
- 他にも案を出せたり、可能性を広げられたりする余地はないかな?
といったことを意識しながら見直し、必要に応じて加筆修正をしていきます。
3. 情報をまとめる
また1日ほどおいたら、再度見直しつつ、今度は文章としてまとめていきましょう。
「文章」というとつい長いくなってしまい、内容が分かりづらくなりがちです。長い文章を読み返すのは億劫ですし、他の人も読みたがりません。結果、事業の内容を正確に人に伝えられない、独りよがりな事業計画書になってしまいがちです。
書き出した情報をまとめる際には、「文章」というよりは「箇条書き」くらいでまとめあげればOKです。その誰が呼んでもあなたの事業の全容を理解してもらえることを目指して、分かりやすい箇条書きや短文で簡潔にまとめていきます。
4. 人に見てもらう
事業計画書やそのたたき台を作っても、自分の頭の中からすべての検討事項を出し切ることはできません。言語化できていないものや書き出しが追い付いていないものもあるからです。自分の事業計画書を見直して不足部分などがあっても、すべての情報がつまっている頭が勝手にその不足部分を補完してしまい、抜けや粗、ミスを見つけることがなかなかできません。
そこで、ぜひやっておきたいのが、他人の目によるチェック。一緒に事業をする人や配偶者、信頼できる人に見てもらうことをおすすめします。
ただ、チェックをお願いされた人も、自分が嫌われてまで苦言を伝えようとはしません。普通にチェックをお願いしても、無難な感想しか返ってこないでしょう。相手に少しでも「自分事」として読んでもらうためには、こんなお願いの仕方をするとより効果的です。
「100万円必要なんだけど、この計画書を出されたらお金を貸す?」
ちょっと直接的すぎるようであれば、こう言ってもいいかもしれません。
「この事業にお金を貸すとしたら、いくら貸す?」
「貸すお金を抑えた or 貸せない理由は何?」
人は自分がリスクにさらされると、意識が変わるものです。資料を見るときも、お金を貸す立場を自覚したとたんに、目の色が変わって「読み流し」から「チェック」にスイッチが切り替わります。少しでも厳しいチェックを受けて、より良いものに改善するために、あなたの事業計画書を武者修行に出しましょう。
良い感想をもらいたいがために、数字を盛ったりきれいごとばかりを書いたりしてウケを狙うのは本末転倒ですが、「これならお金を貸してやろう!」と言ってもらえるような事業計画書を目指し、もらった意見をもとにさらに内容を練っていきましょう。
5. 定期的に見返す
事業計画書を作った当初は毎日でも目にするようにしましょう。事業がまわりだしたら、多少間があいてもよいかもしれません。それでも、3日に1回、週に1回など、こまめに見直し、内容をさらに磨いていきましょう。一緒に事業をやっている人や信頼できる人、配偶者と一緒に内容を見返すことができればなお良いでしょう。
事業自体も事業を取り巻く環境も、日々変わっていきます。それに合わせて、事業計画書の内容も日々変えていくことになります。頻繁にバージョンアップをしていくことで、「あなたの理想」と「現実」のバランスが取れた事業計画書ができていくことでしょう。
事業計画書作りに役立つフォーマットとその書き方
事業計画書は、特に定められたフォーマットなどはありません。自由に記入してOKです。
しかし、この「自由」が厄介で、そう言われても何を書けばよいのか、どのような情報を書き出していけばよいのかわからないと思います。そこで、事業計画書作りに役立つ「質問」を用意しました。これらの質問に答えていくことで、最低限のたたき台ができあがります。
各質問は、ダウンロードできるフォーマットの項目に対応しています。ぜひダウンロードして、フォーマットを見ながら(フォーマットに書き入れながら)読んでみてください。
フォーマットはこちらからダウンロードできます。実際に事業計画書作りにご活用ください。この記事では自動計算ありのバージョンを前提に説明していますが、計算内容が事業にあわないなどの場合には、自動計算なしを使ってください。
質問項目は多いかもしれません。しかし、これらの質問は事業を運営するときに必ず考えなくてはならないものです。すべての事柄を常に自分の頭で記憶しておくことになると、相当な負担です。回答作りは手間に感じるかもしれませんが、長い目で見ると結果としてラクになります。事業に関するすべての事柄を書き出して、頭をすっきりさせましょう。
書き出す内容には、大きく分けて、
- 文字情報
- 数字情報
の二つがあります。もしもあなたがすでに事業を始めて何年か経っている場合、「数字情報」を書き出すときには、次の資料を手元に用意してください。いずれも、過去2年分をご用意ください。(創業前の方は不要です。)
- 法人税申告書(法人の場合)
- 所得税申告書(個人の場合)
- 固定資産台帳 ※
- 決算書 ※
- 借入金の明細
※申告書の最後についているケースが多いです。
さて、それでは実際に質問をみていきましょう。回答を考えながら読んでみてください。
まずは文字情報が続きます。
基礎情報
フォーマットにしたがって、会社名や所在地などを記入してください。
1. 事業の概要
あなたの事業の概要から始まり、優位性、差別化要因、強みをアピールしましょう。
- どんな事業を行いますか?
- その事業に、従来にない目新しさはありますか?
- 自社ならではの、他社との具体的な違いや強みは何ですか?
- その事業を通じて、お客様のどのような悩みや問題を解決できますか?
- 参入障壁は高いですか?低いですか?その理由は?
- もし、同業他社等にあなたの事業をマネされた場合、どのように対処しますか?対策や、対抗しうる強みを書き出してください。
2. 商品やサービスの詳細
事業で取り扱う主な商品やサービスの詳細、特徴、販売価格などを書いていきます。
- その事業で扱う、メインとなる商品やサービスは何ですか?
- そのメイン商品・サービスの売上は、全売上の何割を占めますか?
- 全売上の8割は、どのような商品・サービスによるものですか?上位3つだけでも。
- 自信をもって伝えられる、その商品・サービスのアピールポイントや魅力は何ですか?
- 各商品やサービスは、いくらで提供しますか?
3. 本事業の動機
この項目は、あなた自身に関するものです。なぜこの事業をしようと思ったのか、なぜその商品やサービスを取り扱おうと思ったのかを書きましょう。また、自分がこの事業をやれるだけの経験や力があることもアピールします。
- この事業をやるあなたは、どのような経歴、事業経験、ノウハウ、スキルをもっていますか?
- この事業を他の人ではなくあなたがやる理由は何ですか?
- なぜ、この事業をやりたいのですか?
- あなたは、どのような信念や理念のもとに、その事業をするのですか?
- この事業を、今このタイミングでやる理由はなんですか?
- どのような経緯で、この事業を始めたのですか?
- この事業を行う、お金以外のやりがいやモチベーションは何ですか?
4. 事業の分析
事業の成功に大きな影響を及ぼすのは、その市場の状況です。あなたが考えている市場の見通しを、できるだけ根拠を添えて説明しましょう。
- 事業をする主要エリアはどこになりますか?
- なぜ、そのエリアを選んだのですか?
- 市場の規模を金額で表すとどれくらいですか?
- その市場は、近年、どのような推移で変化していますか?
- その市場自体の成長は見込めますか?
- 市場の成長に、社会情勢は追い風になりますか?その理由は?
- 今後の市場の変化はどう考えていますか?
5. 本事業における顧客
- どのような悩みや問題を抱えている人の役に立てますか?
- 思い描く主要な顧客は、どのような人物像ですか?
- 現状、業界には、どのような問題がありますか?それにより、どのような顧客が悩みを抱えていますか?
6. 競合分析
- ライバルになる他社を、3つ挙げてください。
- そのライバルの、弱みは何ですか?
- そのライバルの、強みは何ですか?
7. 経営の詳細
- 会社の経営をするのは自分だけですか?他にも一緒に経営をする人はいますか?
- 事業自体には、自分以外に誰が携わりjますか?
- うち、正社員は何人ですか?
- うち、パート・アルバイトは何人ですか?
- 事業の力になってくれそうな人脈はありますか?あれば詳細を書いてください。今後、どのような人材が必要ですか?
8. 事業における懸念事項
- ここまで書き出した「文字情報」で、不安に感じていることはありますか?
- これから書き出す「数字情報」で、不安に感じていることはありますか?
- この事業での課題、悩み、改善すべき点は何ですか?
- 各問題に対する、具体的な対策はありますか?
9. その他
余力があれば、業種に応じて、次のような項目も書き出しておくとより良いでしょう。必要に応じて欄を足してください。
- マーケティング
- 広告
- 流通
- 組織図
- 販売促進
- 主な得意先
- 主な仕入先
- 主な外注先
メモ程度でも構いません。まずは、「うちの場合はどうかな?」と考えるだけでもOKです。
10. 1日の損益計画
ここからは数字情報です。
損益計画には、売上と費用を曜日別や時間別に分解して記入します。
まずは、平日と土日祝祭日に分けて考えていきましょう。事業によっては、さらに昼・夜などの時間帯に分けて考えていきます。フォーマットを参考に、数字を入力してみましょう。ちなみに、他は千円単位で入力しますが、ここだけは一円単位で作っておきます。「販売費及び一般管理費」は、一般的な項目だけを記載しています。あなたの事業に併せて加筆修正してください。
質問の回答は、フォーマットの【売上、売上原価、各種経費の根拠】にメモしておきましょう。
- 営業時間は、何時から何時ですか?
- 営業時間を、事業の特性に応じて分けてみましょう。(例) 昼:ランチ、夜:ディナー
- 想定する平均の客単価はいくらですか?
- 席数や個室数はいくつですか?
- 各時間帯の回転数はどれくらいですか?
- (客単価 × 座席・個室数 × 回転数)で、日別の売上を計算してみましょう。
- 日々、事業の維持にかかるお金はいくらになりますか?次の項目を中心に、考えてみましょう。
なお、各項目とも、まずは月額を把握し(月額 ÷ 30)で1日あたりの金額を計算してもOKです。- 仕入
- 人件費(役員報酬や給料、賞与)
- 家賃
- 水光熱費(水道代、電気代、ガス代)
- 電話代、インターネット代
- リース代
- 減価償却費
- 消耗品代
- その他、毎月発生する支払い
- 上記で書き出した1日あたりの金額を、各時間帯に振り分けてください。
11. 当期の月別損益計画
当期の、月別の損益計画を作ってみましょう。ここでは「現実的」なシミュレーションをしてみます。季節変動なども考慮して、1年間の損益を入力してきます。まずは、フォーマットにしたがって、当期の毎月の売上や費用を入力してください。
「売上高」は、前項の「1日の損益計画」を参考に、平日・土日祝祭日の日数をかけて算出してください。「販売費及び一般管理費」や「営業外収益」「営業外費用」などは、一般的な項目だけを記載しています。あなたの事業に併せて、加筆修正してください。なお、「販売費及び一般管理費」の費目は、1つ前のフォーマット・「1日の損益計画」から自動的に入力されます。一番下の【当期の数値の補足 等】には、季節変動や特記事項などをメモしておいてください。
12~14. 年度別損益計画と業績の推移
ここでは、事業年度ごとの損益計画を作ります。
まずは、手元に決算書を用意してください。過去2年分の決算書をもとに、一昨年・昨年の数値を埋めてみてください。これをもとに、来年・再来年の数値を予測して入力しましょう。当期が1期目で、過去の決算書等がない場合は、過去分の入力は不要です。
来期・来々期の損益シミュレートは、次の3つのパターンを作ってみましょう。
- 現実的な、手がたい目標数値
- 楽観的な、期待する目標数値(売上多め、経費少なめ)
- 悲観的な、事業が上手くいかなかった場合の目標数値(売上少なめ、経費多め)
各フォーマットの【来期・来々期の数値の理由】には、予測数値の根拠をメモしておきましょう。【楽観的・悲観的シミュレートの違いの理由】には、数値が変動する要因や原因などを記録しておいてください。なお、当期のシミュレート値は、1つ前のフォーマット「当期の月別損益計画」の合計値が表示されるので入力不要です。
15. 設備の導入計画
年度別損益計画にてシミュレートを行った結果、設備などの導入が必要そうであれば次の質問に答えてみてください。あまり先々のことまでを考えてもわからなくなるので、とりあえずは来期・来々期を目途に考えてみましょう。
- 店舗は必要ですか?それは、借りますか、購入しますか、自前で用意しますか?
- 店舗を構える場合、家賃・敷金・礼金・手数料はいくらを想定していますか?
- 今後、入手を検討している設備等はなんですか?30万円以上の設備等があれば書き出してください。
(例)建物、土地、設備、改装、機械、器具、備品、車両、ソフトウェアなど - これらの設備資金は、自己資金でまかなえますか?それとも借入等が必要ですか?
- 購入の時期はいつ頃ですか?
- これらの設備を購入する理由はなんですか?【上記設備の導入理由】欄に、事細かに書いておいてください。
16. 人員計画
年度別損益計画にてシミュレートを行った結果、人員の確保が必要そうであれば、その情報もまとめておきます。基本的には、役員、正社員、パート、アルバイトに分けて人数を書き出します。業種によっては、役員、店頭販売員、事務などのように分けてもOKです。
- 前々期、前期、当期に、各職種は何人いましたか?
- 前々期、前期、当期の、各職種の人件費の合計額はいくらでしたか?
- 各職種の月の平均報酬・給与額はいくらですか?(フォーマットでは自動計算)
- 来期、来々期の、各職種の人数、人件費の合計額、平均報酬・給与額はどれくらいを想定していますか?過去3年分の情報をもとに、来期、来々期の人員計画を作ってみましょう。
- 人員が増減する理由は何ですか?採用予定の職種や、採用の方法なども明らかにしましょう。【人員の増減の理由、採用の計画 等】に書いておいてください。
17. 現在の資金調達状況
すでに資金を調達しているのであれば、もしくは調達が確定したものがあれば、それらをすべてフォーマットに記載しておきましょう。法人税申告書や借入金の明細を参考に、書き出した時点、もしくは、直近の決算の残高を記入してください。
18. 今後の資金調達計画
あなたの事業で必要な資金額と、その調達先をフォーマットに書き出しましょう。
- 自分で用意する場合
- 他人から出資してもらう場合
- 個人から借りる場合
- 金融機関から借りる場合
- 社債を発行する場合
など、今後、資金を調達する計画があればすべてを書いておきます。
この欄で大事なこと2点です。1点は、「調達した資金の用途」を明らかにしておくこと。もう1点は、「その金融機関を選んだ理由」を考えておくことです。
まず1点めです。記載事項で最も大事な項目は「用途」。特に、金融機関からお金を借りる場合は、「何にそのお金を使うのか」を明確に伝える必要があります。設備を買うためなのか、営業力強化のための人件費に充てるのか、具体的であればあるほど良いでしょう。また、それらにお金を使う事で「会社が確実に成長する・儲けを出せる」という裏付けも必要です。ここは何度も考え、誰からも納得してもらえるような回答を作り上げていきましょう。
もう1点は、「なぜ、この金融機関に融資のお願いをしたか?」という、この金融機関を選んだ理由です。今まで口座を開いて取引をしたこともない金融機関に融資のお願いをした場合、なぜここに借り入れの申し込みにきたのか、という理由を考えておきましょう。「金利が安いから」という理由も一理あるかもしれませんが、
- 他の経営者から担当者が他行よりも熱心だと聞いたから
- 経営上の問題まで話し合えると耳にしたから
- 経営がどんなに厳しくなっても最後まで見捨てなかったと教えてもらったから
など、事前にその金融機関の情報や評判を集めておくと良いと思います。
先方の担当者も人間です。使命感や信念をもって仕事に携わっている方も少なくありません。「手当たり次第に借入の申し込みをしています」とか「なんとなく」よりは、前向きではっきりとした理由がある方が、間違いなく良い結果につながります。
19. 資金繰りの基礎情報
この後の資金繰り表を作るために、次の質問を書き出しておいてください。
- 事業で、売掛金は発生しますか?
- 売掛金の締め日と支払日はいつになりますか?つまり、いつ締め・いつ払いになりますか?
- 発生する場合、全売上の何パーセントを占めますか?
- 毎月いくらは発生しますか?千円未満の金額は切り捨てでOKです。
- 事業で、受取手形は使いますか?(使う場合、売掛金の質問を参考に、いつ締め・いつ払い、全売上に占める割合、金額を書き出してください)
- 事業で、買掛金は発生しますか?
- 買掛金の締め日・支払い日はいつになりますか?つまり、いつ締め・いつ払いになりますか?
- 毎月いくら発生しますか?千円未満の金額は切り捨てでOKです。
- 支払手形は使いますか?(使う場合、買掛金の質問を参考に、いつ締め・いつ払い、全売上に占める割合、金額を書き出してください)
- これらの運転資金は、自己資金でまかなえますか?まかなえない場合、どのように準備しますか?
20. 当期の資金繰り計画
ここまで書き出してきた数字や条件をもとに、まずは当期の月々の「資金繰り表」を作ります。
資金繰り表とは
ここで、簡単に「資金繰り表」についてお伝えします。資金繰り表とは、「会社にいくら現金が残っているか?」を示す表です。黒字倒産という言葉を耳にしたことがある方もいるでしょう。どんなに売上を上げても、「現金」の売上ではなく、まだ回収できていない「売掛金」の売上が多いと、「利益は出ても手元に現金がない」という状態に陥ってしまいます。
会社運営に当たっては、「いくら利益を出しているか」も大事ですが、「いくら手元に現金を残しているか」の方がもっと大事です。現金がない=支払いができないですから、会社は倒産してしまいます。当然、借り入れたお金の返済もできないので、いくら売上をあげていても、資金繰りが悪い会社に金融機関は決してお金を貸しません。
ここまで作ってきた損益計画は、損益計算書であり、売上や利益を知る資料です。「売上や利益を上げたうえで、どれくらい手元に現金があるか?」という情報も必要となり、それがここで作る資金繰り表なのです。この資金繰り表を一人で作れるよう、順を追って説明してきます。
資金繰り表の作り方
資金繰り表に記入する情報は、
- お金が増える取引
- お金が減る取引
です。作りながら混乱しないように、これだけは常に頭に置きながら作業を進めてください。
たとえば「現金売上」は売上を現金でもらっているので「お金が増える取引」です。これは資金繰り表に記載します。対して、売上は売上でも売上を売掛金で計上する「掛売上」は、この時点ではまだ手元のお金が増えていないので、資金繰り表には記載しません。このように、同じ売上でも、お金が増える取引かどうかという基準で、資金繰り表に計上するもの・しないものに分かれるのです。ちなみに、この掛売上を翌月に回収したときには、「お金が増える取引」なので、資金繰り表には「売掛金の回収」として計上します。
繰り返しになりますが、資金繰り表に計上する取引は、
- お金が増える取引
- お金が減る取引
であることを再度確認してください。
それでは、この視点を持ちつつ、資金繰り表を作っていきましょう。
「前月からの繰越金額」を入力する
当期が第1期なら、金額はゼロでOKです。当期が第2期以降なら、期首の現金や口座残高を足した額を入力してください。通帳のお金は、引き出せばすぐに使えるので現金と同じ扱いでOKです。
「経常収入」を入力する
事業で経常的に発生する取引のうち、「お金が増える取引」を記載します。その月に現金で受け取った売上、回収した売掛金の額、入金された受取手形の額などです。
なお、ややこしいものがあるので1点注意してください。今月回収した売掛金の額や、入金された受取手形は、先月以前に発生した掛売上等のものです。念のため、自社はどのようなサイクルでお金を回収しているのか、先ほど作った「19. 資金繰りの基礎情報」の諸条件を再度確認しておきましょう。
「経常支出(仕入)」を入力する
事業で経常的に発生する取引のうち、「お金が減る取引」を記載します。その月に現金払いでの仕入、支払った買掛金の額、決済された支払手形の額などです。「経常収入」同様、「19. 資金繰りの基礎情報」の諸条件を確認しておいてください。
「経常支出(経費)」を入力する
事業を維持するために発生する支払いのうち、「お金が減る取引」を記載します。フォーマットを使う場合、ここは損益計画で入力した数値が反映されます。当期が第1期以外の場合は、年に数度払う法人税や消費税等も入力しましょう。決算から2ヶ月後や中間納付など、実際に納付をする月に金額を入力します。
もしも、フォーマットを使わずにご自身で表に項目を入力する場合、「減価償却費」や「礼金償却」などの項目は入力しないでください。この資金繰り表に入力する項目は、「お金が減る取引」だけでした。「減価償却費」等は、お金が減る取引ではありません。資産等を購入したときにすでに現金を支払っており、その際に資金繰り表に計上するので、「減価償却費」等を資金繰り表に計上する必要はないのです。
なお、フォーマットを使う場合、損益計画で「減価償却費」等を計上すると資金繰り表にも反映されてしまいます。(D)に調整欄を設けているので、そこに「減価償却費」等と同額を入力してください。
「経常外収入」を入力する
事業から直接得る収入以外の要因で、経常的には発生しない「お金が増える取引」を記載します。増資をしたり、お金を借りたりした場合が該当します。当期が第1期であれば、会社に入れた資本金を「増資」の欄に入力します。
「経常外支出」を入力する。
事業で直接支払う支出以外の要因で、経常的には発生しない「お金が減る取引」を記載します。設備や有形固定資産を買ったり、借入金を返済したりする場合が該当します。借入金を返済する余力があるか、返済した後でもどれくらい現金が残っているかをチェックされます。「翌月への繰越金額」を見て数字に問題がありそうであれば、事業自体に問題がないか、掛売上を減らしたり回収率を上げたりできないかなど、自分の事業を振り返って改善案を考えてみましょう。
フォーマットには当期分しかありませんが、余力があれば、ぜひ来期・来々期の数字も作ってみましょう。
事業計画書が活躍するのはどのような場面か?
作った事業計画書は、主に次の場面で役に立ちえます。
- 自分の事業の検討事項などを明らかにする
- 事業をしている途中でお金を集める
- 販路拡大などのために、自分の事業を他人に説明する
ここで注目したいのは、2の場面。事業の途中で急遽お金が必要になることも多々あります。後ほど詳しく述べますが、金融機関ではこの事業計画書を非常に重要視しており、融資の可否に及ぼす影響が大きい資料のです。事業や環境の変化に合わせて、事業計画書の内容は日ごろから考え、作り込んでおく必要があります。
必要になってからその場しのぎで事業計画書を作っても、作り込みが甘くて内容が浅く、通る審査も通りません。チャンスを活かせるのは、日ごろから準備をしてきた人だけなのです。
以降は、事業計画書を作る最も多いケースであろう2の場合、つまり、融資や増資での活用を前提に、事業計画書の解説をしていきます。
「融資」には事業計画書が必須
ある日、あなたのもとへ、全く面識のない人がやってきます。
「500万円、貸してください」
「事業で使うんです」
「必ず返します」
これだけ言われて、あなたはお金を貸しますか?まず、貸すことはないと思います。相手が何者なのかわからない。どんな事業をするのかもわからない。間違いなく返してくれるかわからない。これは、金融機関の融資担当者も同じです。何の面識もないあなたがある日やってきて、お金を貸してくださいと言われても、そう簡単にはお金を貸せません。
数百万単位のお金を貸すという重大な決断を、
- 事業計画書
- 面談による聞き取り
だけを頼りに下すのです。事業計画書と面談から、
- 借りたお金を活用し、事業によって生み出したお金で返済できるかどうか
- その事業をやるのにふさわしく、信用できる人物であるかどうか
- そもそも、借りたお金を何に使うのかが明確であるかどうか
を、判断しないといけないのです。事業計画書は、あなたとあなたの事業を知る唯一の手掛かりです。事業計画書の良し悪しで融資等が判断されるのは当然なのです。
また、融資の面談時にも事業計画書は有用です。この面談で、あなたの経験や経歴、人柄、これまでやってきた実績、そして事業にこめる想いや情熱を伝える必要があります。しかし、限られた面談時間ですべての項目を口頭で伝えることは不可能です。事前に事業計画書を作って形にしておくことで、こちらの情報をもれなく伝えることができます。結果として先方の理解と信頼を得ることができ、ひいては、より有利な条件で融資や出資を受けることができうるのです。
融資担当者が、事業計画書に期待すること
完璧な事業などありません。どんな事業であっても、弱みや不安要素などの懸念事項があるはずです。事業計画書には必ずそれも書いておきましょう。
こういった情報は融資の足を引っ張るマイナス要因になりそうな印象ですが、そんなことはありません。実は融資担当者は、
- 自社の懸念事項を客観的にどれだけ把握できているか
- その対策を考えているか
に注視しています。かっこいい事業計画書を作る必要はありません。
先方は、できるだけ色々な情報や懸念事項を教えてほしいと思っています。お金を貸す相手とオープンな関係を築きたいと考えています。懸念事項等をもれなく伝えることで、「自社・自分にとって不利な情報も包み隠さずに出す誠実な人柄」と受け取ってもらえる可能性は高まり、融資の審査にも良い影響を及ぼすでしょう。
もしもこのリスクや事業の弱点を伝えたことが原因でお金を貸してもらえなかった場合は、そもそもその事業やビジネスプラン自体に重大な問題があると判断されたということです。そのまま事業をやってもうまくいく確率は高くはないでしょう。致命傷になりそうな不安事項や弱点はなるべく潰したうえで、もしくは対策を講じた上で、事業の計画を立てるべきです。事業計画書では、お金や人材、店舗、競合など、様々な項目を洗い出しますが、各項目の弱点を再度厳しい目で、粗探しする感覚でチェックしてみましょう。
融資審査について詳しくは下記をご確認ください。
融資審査が必要な理由やその仕組みとは?開業成功のためのコツ
金融機関に事業計画書を出すのは融資の際だけか?
事業計画書は、可能であれば、融資の申し込みの時だけではなくて、毎月や四半期に一度、月次決算書等とともに金融機関に持ち込んで報告しましょう。お金を貸した方も、リアルタイムにあなたの事業の状況を知ることができれば安心します。誠実な人柄を伝えることができ、お互いの信頼関係を築くことにもつながります。
いつ追加で融資をお願いすることがあるか分かりません。億劫がらず、ぜひ引き続き事業計画書を作り続けていきましょう。
最後に
「事業計画書を作る」と一口に言っても、「こんなにやることがあるのか!」と驚かれたことでしょう。
しかし、事業に関する考えや検討事項等を書き出さないと、常にこれらの項目を記憶したり考えたりしなければなりません。人間が記憶しておける量にも限界があります。また、頭の中だけで考えていても上手く整理できず、次の一手を考えることすらままなりません。
たとえあなたがすべてを記憶できる方であったとしても、これらの情報を伝えられる側のことを考えましょう。他人の話な上に初耳の話を、しかもこの量の情報を口頭だけで伝えられて、すべてを正確に覚えていられる人はいないでしょう。
しかし、形にしておけば、相手はいつでも何度でもじっくりとあなたの事業計画を目にすることができます。事業計画書を作るのは、あなたの事業や想いを伝える「相手のため」なのです。その相手の中には、当然「金融機関の担当者」も含まれており、あなたの事業や想いを的確・明確に伝えることで、融資の審査が通る可能性をあげることもできるでしょう。事業計画書作りは、巡り巡って「あなたのため」でもあるのです。
検討要素が多い創業前後や、さらなる成長を望む大事な時期こそ、事業計画書は心強いツールとなってくれるでしょう。なるべくムダなく効率よく、あなたの思い描く事業プランを少しでも早く実現させるためにも、その地図となる事業計画書の作成は欠かせないのです。
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