飲食店の開業資金を調達するためには、事業計画書という書類を作成する必要があります。そして事業計画書の仕上がり次第で、金融機関から創業融資を受けられるかどうかが決まります。ただし、初めて開業される方にとっては、必ずしも簡単な作業ではありません。
そこで本記事では、事業計画書の意味や重要性、飲食店向けの書き方や記入例、完成度を高めるポイントなどを解説します。飲食店の開業を予定している方や、書類の作成方法に不安がある方は、ぜひご確認ください。
事業計画書を作る理由はいくつかありますが、1つは「自分の頭の中にあるものを書き出して見える化し、より良い成長戦略を練ること」です。考える内容はかなり多く、面倒くさい作業でもあります。また、事業計画書を作ったからといって、その通りに事業が進むわけはありません。ですが事業計画書を作らず、無計画で事業を行うことは大きなリスクがあります。事業について頭の中だけで考えられることはほんの一部です。
例えば「こんな商品をこんなエリアで売りたい」「こんなサービスをいくらで提供したい」ということくらいでしょうか。もちろんこれらも大切な要素ではありますが、考えないといけないことはたくさんあります。そういった要素を考えずに事業を始めると、次のような事態が起きてしまうおそれがあります。
- 資金計画があいまいで気づいたら赤字になっていた
- 予定額の融資が得られなくて資金繰りに困った
- 提供する商品がお客さんの求めるとは違い、売上につながらなかった
- 売上は伸びたが家賃などの固定費が多くかかって利益が残らない
- コストを度外視した商品を多数提供して赤字に転落した
- 経営が悪化しても撤退に踏み切れず借金がかさんだ
事業計画書を作っていても、上記のような「不測の事態」をなくせるとは限りません。しかし、事業計画書作りを通じて自分の事業を客観的に見直し、不測の事態の発生確率を下げることはできます。不測の事態を避け、あなたのやりたい事を実現させるためにも、事業計画書を作って自分の事業に対する考えを形にしてみましょう。
また、事業が始めるとゆっくり時間をとって事業計画書を作るのは大変です。繰り返しになりますが、比較的まだ時間のある創業前に事業計画書作りに取り組みましょう。
飲食店開業に必要な事業計画書を作るコツ
そこで、助成金や補助金を利用すれば、返済義務がありません。受給には審査が必要ですが、助成金や補助金を受け取ることができれば店舗の開業はよりスムーズに進みます。
事業計画書の書き方にはコツがあります。それは「一気に完成形を作ろうとしないこと」です。このような段階を経て作ることをおすすめします。
- 頭の中の考えを全部書き出す
- 書き出した内容を見直す
- 事業計画書の形にまとめる
- 他人に見てもらう
- 書いた内容を定期的に見返す
いきなり形にすることを目標にすると、言葉の選び方や構成が気になって面倒になりやすいです。だんだんと頭の整理がつかなくなり、挫折しやすくもなります。
1.頭の中の考えを全部出す
まずは「事業計画書を作る」というよりは、「たたき台を作る」という感覚で洗い出しを進めていきます。まだ内容を確定させる段階ではありませんので、文章の体裁や表現、言い回しなどは気にしなくても良いです。文章ではなく、単語だけでも構いません。誰かに見せるわけでもないので、内容が稚拙でもまったく構いません。
繰り返しになりますが、この段階では「懸念事項を洗い出して頭の中をクリアにする」ということが一番の目的です。
2.書き出した内容を見直す
たたき台を作ったら、時間を置いて一度見直してみましょう。1日ほど経ってから見直すと良いです。一度たたき台を見直すことで、「ここは少し楽観視している」「こんな数字のはずはない」「こんなサービスもいいかもしれない」「この項目を出し忘れた」といったように、気になる点が次第に見えてきます。
- 出した数字は現実的か
- ここに書き出したもののほかにあるか
- ほかにも案を出せたり、可能性を広げられたりする余地はないか
といったことを意識しながら見直し、必要に応じて加筆修正をしていきます。ここではたたき台を作った人とは違う目線で指摘をしていくのがポイントです。
3.事業計画書の形にまとめる
再度見直しが終わったらこのタイミングで文章の形にまとめていきましょう。まとめる際は短い文章を用いることを心がけましょう。長い文章は内容が分かりづらくなりがちです。事業計画書は融資を申し込みする際に提出しますが、長い文章を読むのは億劫ですし読もうという気になりづらいです。結果、事業の内容が正確に伝わらない、独りよがりな事業計画書になってしまうおそれもあります。
書き出した情報は、箇条書きくらいの文量でまとまっていればOKです。誰が呼んでも事業の全容を理解してもらえることを目指して、分かりやすく簡潔にまとめていきます。
4.他人に見てもらう
自分だけですべての項目が漏れなく書かれた事業計画書を作るのは難しいです。まだ言語化できていないものや書き出しが追い付いていないものがある可能性があります。ただし、その抜けや漏れを自分で見つけるのは難しいです。仮に不足部分などがあったとしても、自分では気づきにくいです。なぜなら、すべての情報がインプットされている自分の頭が勝手にその不足部分を補完するからです。
そこでぜひやっておきたいのが、他人の目によるチェック。一緒に事業をする人や信頼できる人に見てもらうことをおすすめします。チェックの際はぜひ遠慮なき意見をもらうようにしてください。例えば「事業を始めるのに○万円必要なのですが、この計画書を出されたときにお金を貸したいと思えますか?」と質問するのも良いかもしれません。少しでも厳しいチェックを受けて、より良いものに改善するきっかけをもらいましょう。
良い感想をもらいたいがために、数字を盛ったりきれいごとばかりを書いたりするのは本末転倒ですが、「これならお金を貸してやろう!」と言ってもらえるような事業計画書を目指していきます。そしてもらった意見をもとにさらに内容を練っていきましょう。
5.書いた内容を定期的に見返す
事業自体も事業を取り巻く環境も、日々変わっていきます。つまりそれに合わせて、事業計画書の内容も日々変えていくことになります。頻繁にバージョンアップをしていくことで、「あなたの理想」と「現実」のバランスが取れた事業計画書ができていくことでしょう。はじめは毎日のように見返すのがおすすめです。事業がまわりだしたら3日に1回、週に1回と、少しずつ間隔を空けていきます。内容を見返すときは4のステップと同じく、一緒に事業をやっている人や信頼できる人と行うようにすると良いです。
飲食店用の事業計画書作りに役立つ書き方
事業計画書には特に定められたフォーマットなどはありません。一部の金融機関はフォーマットを定めている場合もありますが、基本的には自由に記入して良いことになっています。多くの事業計画書で書かれている項目と書き方をまとめましたので、参考にしてください。
項目が多いと感じるかもしれませんが、これらのことは事業を運営するときに必ず考えなくてはならないものです。手間に感じるかもしれませんが、整理することは長い目で見るとメリットがあります。事業に関するすべての事柄を書き出して、頭をすっきりさせましょう。
書き出す内容には、大きく分けて、文字情報と数字情報の2つがあります。もしもあなたがすでに事業を始めて何年か経っていて、数字情報を書き出すときには次の資料を手元に用意してください。いずれも、過去2年分をご用意しておくと良いです。(創業前の方は不要です。)
法人税申告書(法人の場合)
所得税申告書(個人の場合)
固定資産台帳 ※
決算書 ※
借入金の明細
※申告書の最後についているケースが多いです。
まずは文字情報です。
基礎情報
会社名や所在地などを記入してください。
事業の概要
事業の概要に加えて優位性や強みをアピールしましょう。
- どんな事業を行うか
- 従来にない目新しさはどのような点にあるか
- 自社ならではの他社との具体的な違いや強みは何か
- その事業を通じてお客様のどのような悩みや問題を解決できるか
- 参入障壁は高いか低いか、その理由は
商品やサービスの詳細
事業で取り扱う主な商品やサービスの詳細、特徴、販売価格などを書いていきます。
- その事業で扱う、メインとなる商品やサービスは何か
- そのメイン商品・サービスの売上は、全売上の何割を占める想定か
- 全売上の多くはどのような商品・サービスになる想定か
- 自信をもって伝えられる、その商品・サービスのアピールポイントや魅力は何か
- 各商品やサービスは、いくらで提供するか
本事業の動機
なぜこの事業をしようと思ったのか、なぜその商品やサービスを取り扱おうと思ったのかを書きましょう。また、自分がこの事業をやれるだけの経験や力があることもアピールできると良いです。
- この事業をやるあなたはどのような経歴、事業経験、ノウハウ、スキルを持っているか
- この事業をやる理由は何か、なぜやりたいのか
- どのような信念や理念のもとにその事業をするのか
- 今このタイミングで事業を始める理由は何か
- お金以外のやりがいやモチベーションは何か
事業の分析
事業の成功に大きな影響を及ぼすのは、その市場の状況です。あなたが考えている市場の見通しを、できるだけ根拠を添えて説明しましょう。
- 事業をする主要エリアはどこになるか
- なぜそのエリアを選んだのか
- 市場の規模を金額で表すとどれくらいか
- その市場は近年どのような推移で変化しているか
- 市場の成長は見込めるか
- 昨今の社会情勢は市場の成長にどう影響を与えるか
- 今後の市場の変化はどのように考えているか
本事業における顧客
事業で展開する商品やサービスにお金を払ってくれる顧客についてまとめます。予想と異なる需要が発生する可能性も当然ありますが、現段階で想定される顧客についてまとめましょう。
- どのような悩みや問題を抱えている人の役に立てるか
- 思い描く主要な顧客はどのような人物像か
- 展開する業界にはどのような問題があるか、それによってどのような顧客が悩みを抱えているか
競合分析
どのような事業でも、競合が存在しないケースはほとんどありません。競合となる相手を把握しておくことで、どのように区別していくのか、どのような場所で展開していくのかが明確になりやすくなります。
- ライバルになる事業者はどこか
- ライバル事業者の強みは何か
- ライバル事業者の弱みは何か
事業を行う人
あなたひとりだけで事業を行うとは限りません。事業を行うにあたって従業員を増やすこともあるでしょう。どのような計画を立てているかを明記します。
- ほかにも一緒に事業を運営する人はいるか
- どのような人が事業に関わるか
- 正社員は何人を想定しているか
- パートやアルバイトは何人を想定しているか
- 今後どのような人材が必要になるか
事業における懸念事項
事業を進めていくにあたって不安要素がないケースはほぼないはずです。どのように懸念事項を減らしていくか、まとめていきます。すぐに解消できなくても良いですが、解消の仕方まで想定できていると信用度も高まりやすいです。
- 現状不安に感じていることはあるか
- この事業での課題や改善すべき点は何か
- 課題や改善点への具体的な対策はあるか
その他
余力があれば、業種に応じて次のような項目も書き出しておくと良いでしょう。
- マーケティング
- 広告
- 流通
- 組織図
- 販売促進
- 主な得意先
- 主な仕入先
- 主な外注先
まずは、「自分の場合はどうかな?」と考えるだけでもOKです。
1日の損益計画
ここからは数字情報を解説します。
損益計画には、売上と費用を曜日別や時間別に分解して記入します。
まずは、平日と土日祝祭日に分けて考えていきましょう。事業によっては、さらに昼・夜などの時間帯に分けて考えていきます。ちなみに、他は千円単位で入力しますが、ここだけは一円単位で作っておくと良いです。
- 営業時間は何時から何時か
- 想定する平均の客単価はいくらか
- 席数や個室数はいくつか
- 各時間帯の回転数はどれくらいか
- 事業の維持にかかるお金は毎日いくらかかるか
ぜひ(客単価 × 座席・個室数 × 回転数)で、日別の売上を計算してみてください。
また次の項目がどれくらいかかるかもシミュレーションします。各項目ともまずは月額を把握し(月額 ÷ 30)で1日あたりの金額を計算すると考えやすいです。
- 仕入
- 人件費(役員報酬や給料、賞与)
- 家賃
- 水光熱費(水道代、電気代、ガス代)
- 電話代、インターネット代
- リース代
- 減価償却費
- 消耗品代
- その他、毎月発生する支払い
上記で書き出した1日あたりの金額を、各時間帯に振り分けてください。
当期の月別損益計画
当期の月別の損益計画を立てます。季節や月ごとに変動することを考慮して考えられると良いです。
年度別損益計画と業績の推移
ここでは事業年度ごとの損益計画を作ります。まずは手元に決算書を用意してください。過去2年分の決算書をもとに、一昨年・昨年の数値を埋めてみてください。これをもとに、来年・再来年の数値を予測して入力しましょう。当期が1期目で、過去の決算書等がない場合は、過去分の入力は不要です。
来期・来々期の損益シミュレーションは、次の3つのパターンを作ってみましょう。
- おおむね予想通りになったパターン
- 期待値を含めたやや楽観的なパターン
- 最悪の事態を想定した堅実なパターン
楽観的なパターンは経費を少なめにして売上が予想より多めになった場合をシミュレーションします。反対に堅実なパターンは経費を多めにして売上が予想より伸びなかった場合で考えてみましょう。
設備の導入計画
年度別損益計画にてシミュレーションを行った結果、設備などの導入が必要そうであれば次の項目を考えてみてください。ひとまず来期と来々期を目途に考えてみましょう。
- 店舗は借りるか、購入するか
- 店舗を構える場合の家賃や敷金・礼金・手数料はいくらを想定しているか
- 入手を検討している設備はあるか
(例)建物、土地、設備、改装、機械、器具、備品、車両、ソフトウェアなど
- これらの設備資金は自己資金でまかなえるか、それとも借入れが必要か
- 購入の時期はいつ頃か?
- これらの設備を購入する理由は何か
人員計画
人員の確保が必要そうであれば、その情報もまとめておきます。基本的には、役員、正社員、パート、アルバイトに分けて人数を書き出しましょう。業種によっては、役員、店頭販売員、事務などのように分けても良いです。
- 従業員は何人いたか(前々期、前期、当期別、職種別に)
- 人件費の合計額はいくらか(前々期、前期、当期別、職種別に)
- 平均報酬や給与額はいくらを想定しているか(前々期、前期、当期別、職種別に)
- 人員の増加は計画しているか
現在の資金調達状況
すでに資金を調達しているのであれば、もしくは調達が確定したものがあれば、それらをすべて記載しておきましょう。法人税申告書や借入金の明細を参考に、書き出した時点、もしくは、直近の決算の残高を記入してください。
今後の資金調達計画
あなたの事業で必要な資金額と、その調達先を書き出しましょう。
事業に必要な資金の額を書き出します。計画立ての時点で全額を確保できていない場合も多いはずなので、調達先も一緒に検討します。調達先には以下のようなものがあります。
自己資金を貯める
- 補助金や助成金を活用する
- 個人から借りる
- 金融機関から融資を受ける
- 社債を発行する
- クラウドファンディングを活用する
【関連記事:開業資金に必要な額と内訳|事業を始めるための資本金を調達する方法】
調達先を考えるうえで大切なのは資金の用途と、その調達先を選ぶ理由です。お金を借りたり補助を受けたりする際は「どのような使い道をするのか」を正確に伝える必要があります。なぜなら漠然とした考えでは計画性や説得力がないと判断されやすいからです。その結果、十分な資金援助が望めない可能性もあります。
資金の用途はなるべく具体的にしましょう。価格がこれくらいの設備を購入して、事業のどういった部分に関わってくるのか、しっかり説明できると良いです。またその資金を使うことでなぜ利益が出せるのか、その裏付けも必要になります。じっくり考え、納得してもらえる根拠を考えていきましょう。
調達先を選ぶ理由も、お金を借りたり補助を受けたりする際の審査に関わってきます。融資審査の場合、事業性や目的、資産背景などが客観的に判断されます。しかし、複数ある選択肢の中からなぜここの融資を希望するのかも見られることが多いです。「手あたり次第にお願いしている」や「ただ何となく」では担当者の心証に影響します。前向きではっきりとした理由を説明できるようにしておきましょう。
資金繰りの基礎情報
この後の資金繰り表を作るために、次の質問を書き出しておいてください。
- 事業のなかで売掛金は発生するか
- 売掛金の締め日と支払日はいつになるか、いつ締め・いつ払いになるか
- (売掛金が発生する場合)全売上の何パーセントを占めるか
- 売掛金は毎月いくら発生する想定か
- 事業で受取手形は使うか
(使う場合は売掛金の質問を参考にして同じように書き出す)
- 事業のなかで買掛金は発生しますか?
- 買掛金の締め日と支払日はいつになるか、いつ締め・いつ払いになるか
- (買掛金が発生する場合)全売上の何パーセントを占めるか
- 買掛金は毎月いくら発生する想定か
- 支払手形は使うか
(使う場合は買掛金の質問を参考にして同じように書き出す)
当期の資金繰り計画
ここまで書き出してきた数字や条件をもとに、月々の資金繰り表を作っていきましょう。資金繰り表とは一定期間における資金の動きを把握するための管理表のことです。今どれくらいの現金が手元にあるのかを把握できます。企業でも使われますが、内部管理を目的として利用されることが多いです。
事業運営の際は利益をどれくらい出しているかも大切ですが、手元に現金がどれくらい残っているかも大切です。利益があるのに手元の現金が不足している状況を資金ショートと呼びます。現金が不足していれば当然支払いが滞るので、事業運営では避けなければなりません。最悪、黒字倒産という事態にも陥ります。いくら売上をあげていても、資金繰りが悪い会社は融資を受けづらくなります。
【関連記事:資金繰り表から予測できることは?作成に必要な書類の例】
資金繰り表の作り方
資金繰り表に記入する情報は、「お金が増える取引」と「お金が減る取引」の2つです。
です。作りながら混乱しないようにしましょう。
売上を現金で受け取った現金取引は文字通り「資金が増える取引」なので資金繰り表に記載します。一方で売上を売掛金で計上する掛売上は資金繰り表には記載しません。この時点ではまだ手元の資金が増えていないからです。同じ売上でも、お金が増える取引とまだ増えていない取引があります。この基準を使って資金繰り表に計上するもの・しないものを分類します。ちなみに、この掛売上を翌月に回収した際は資金繰り表に記載をします。「資金が増える取引」だからです。このときは売掛金の回収として計上します。
前月からの繰越金額
当期が第1期なら、金額はゼロと記入します。当期が第2期以降なら、期首残高を足した額を入力してください。銀行口座の残高は引き出せばすぐに使えますから、現金と同じ扱いになります。
経常収入
事業で経常的に発生する取引のうち、「資金が増える取引」が該当します。その月に現金で受け取った売上はもちろん、回収した先月以前の売掛金の額などです。
経常支出
事業で経常的に発生する取引のうち、「資金が減る取引」を記載します。仕入れや設備購入などに使った現金、支払った買掛金の額などが該当します。
経常支出
事業を維持するために発生する支払いのうち、「資金が減る取引」が該当します。当期が第1期以外の場合は、年に数度納める税金などもここに記載します。
また、減価償却費はここには記載しません。減価償却費は資金が減る取引ではないからです。購入したときにすでに現金を支払い、その際に資金繰り表に計上します。ここで記載した扱いになりますから、資金繰り表に計上する必要はありません。
経常外収入
事業から直接得る収入以外の入金は経常外収入です。具体的には銀行預金の金利、店舗の保証金の戻りなどが該当します。増資をしたり、お金を借りたりして得た資金も経常外収入です。
経常外支出
事業で直接支払う支出以外は経常外支出です。貸付金や諸経費などが該当します。また、事業に使う設備に支払った費用は経常外支出となります。
事業計画書が活躍するのはどのような場面か?
作成した事業計画書は、このような場面で活用できます。
- 事業に必要な資金を集める
- 事業の検討事項などを整理する
- 事業内容を他人に説明する
繰り返しになりますが、1の場面が特に重要です。資金集めは事業を始めるときだけに行うものではありません。何らかの事情で追加の資金が必要になることもあります。もし資金調達が必要になってから慌てて事業計画書を作っても、作り込みが甘ければ審査は通りづらくなってしまいます。事業や環境の変化に合わせて、事業計画書の内容は日ごろから考え、作り込んでおきましょう。
融資を受けるには事業計画書が必須
「事業で使うので100万円を貸してください」
これだけ言われて、あなたはお金を貸すでしょうか。まず貸すことはないと思います。相手が何者なのかわからない。どんな事業をするのかもわからない。返してくれる保証もない。金融機関の融資担当者は、このような状況でお金を貸すかどうかを判断しています。実際の融資はもっと高額です。担当者は事業計画書と面談による聞き取りだけで大金を貸す重大な決断を下しています。
- 借りたお金を活用し、事業によって生み出したお金で返済できるかどうか
- その事業をやるのにふさわしく、信用できる人物であるかどうか
- そもそも借りたお金を何に使うのかが明確かどうか
こういったことを事業計画書と面談から判断しています。つまり、事業計画書は、あなたとあなたの事業を知る唯一の手掛かりともいえます。事業計画書の良し悪しで融資等が判断される理由がわかっていただけたでしょうか。
融資の面談時にも事業計画書は有用です。面談ではあなたの経験や経歴、人柄、これまでやってきた実績、そして事業にこめる想いや情熱を伝える必要があります。しかし、限られた面談時間ですべての項目を口頭で伝えることは不可能です。事前に事業計画書を作って形にしておくことで、こちらの情報をもれなく伝えることができます。結果として先方の理解と信頼を得ることができ、より有利な条件で融資や出資を受けられるようになります。
また、どんな事業であっても、弱みや不安要素などの懸念事項があります。こういったことは事業計画書に必ず書いておきましょう。融資の足を引っ張るマイナス要因になりそうですがそんなことはありません。実は融資担当者は、「自社の懸念事項を客観的にどれだけ把握できているか」「その対策を考えているか」も注視しています。完璧な事業計画を作る必要はありません。
融資の担当者はなるべく色々な情報や懸念事項を教えてほしいと思っています。お金を貸す相手とオープンな関係を築きたいと考えているからです。懸念事項等を漏れなく伝えることで、「自社・自分にとって不利な情報も包み隠さずに出す誠実な人柄」と受け取ってもらえる可能性は高まり、融資の審査にも良い影響を及ぼすでしょう。
もしもこのリスクや事業の弱点を伝えたことが原因でお金を貸してもらえなかった場合は、そもそもその事業やビジネスプラン自体に重大な問題があると判断されたということです。そのまま事業をやってもうまくいく確率は高くはないでしょう。致命傷になりそうな不安事項や弱点はなるべく潰したうえで、もしくは対策を講じた上で、事業の計画を立てるべきです。事業計画書では、お金や人材、店舗、競合など、様々な項目を洗い出しますが、各項目の弱点を再度厳しい目で、粗探しする感覚でチェックしてみましょう。
融資審査について詳しくは下記をご確認ください。
【参考記事:融資審査が必要な理由やその仕組みとは?開業成功のためのコツ】
金融機関に事業計画書を出すのは融資の際だけ?
事業計画書は融資の申し込みの時だけではなくて、毎月や四半期に一度、月次決算書等とともに金融機関に持ち込んで報告しましょう。お金を貸した方も、リアルタイムにあなたの事業の状況を知ることができれば安心します。誠実な人柄を伝えることができ、お互いの信頼関係を築くことにもつながります。
いつ追加で融資をお願いすることがあるか分かりません。事業を始めたあとも継続して事業計画書を作り続けていきましょう。
飲食店の事業計画書作成に関するよくある質問
ここまで事業計画書の重要性や書き方のコツなどを説明しましたが、いざ実践となると難しいものです。最後は、飲食店の事業計画書作成でよくある質問に答えます。
事業計画書を作成する前にしておくと良いことは?
開業したい飲食店のコンセプトを明確にしておきましょう。コンセプトとは飲食店の方針を定めるために用意するもので、「どのようなお客様がターゲットなのか」「メニューや取扱商品をどうするか」といった、事業戦略・販売戦略を考える際のベースになります。
言い換えれば、お店のセールスポイントであり、飲食店開業における土台です。コンセプトの明確化は、事業計画書の内容や出店後の成否にも影響するので、入念に準備しましょう。
コンセプトを決めるコツは5W2Hの要素をもとに考えることです。まずはたくさんのアイデアを考え出し、以下の表に落とし込むことで、次第にお店のイメージが膨らみます。
When | いつ開業するのか |
Where | どこで開業するのか |
Who | 誰に向けた店にするのか |
What | どのようなサービスを提供したいか |
Why | なんのために開業するのか |
How much | いくらくらいのサービスを提供するのか |
How | どのようにしてサービスを提供するのか |
伝わりやすい事業計画書にするにはどうしたら良い?
伝わりやすい事業計画書の書き方として、大きく3つのポイントがあります。
1つ目は、専門用語はなるべく使わないことです。融資担当者は有識者ですが、すべての業界や事業内容に精通しているわけではないからです。そのため、多くの人が理解しやすい平易な言葉を選んで使うことが大切です。やむを得ず使う場合には、かっこ書きや注釈をつけましょう。
2つ目は、言葉で伝えづらい内容には表や図を使うことです。例えば統計データなどの資料の説明は、文章だけでなく 表や図を活用した方が分 かりやすいでしょう。また、文章にも太字や下線などの装飾を加えることで、メリハリが出て伝わりやすくなります。
3つ目は、伝えたいことの要点を押さえることです。見出しや箇条書きを効果的に活用することで、書き手の意図を簡潔に伝えると良いでしょう。長く丁寧な説明が必ずしも分かりやすいとは限りません。
納得してもらいやすい事業計画書にはどのような特徴がある?
説得力のある事業計画書には、2つの特徴があります。
1つ目は、開業への情熱が事業計画書に現れていることです。事業を通じて成し遂げたい目標や熱い想いが相手に伝われば、資金調達できる可能性が高まるでしょう。また、開業への想い とお店のコンセプト・強みが一致していれば、より説得力を持たせやすいです。
2つ目は記載されている数字が正確であることです。融資をお願いする相手は金融機関や公庫であり、わずかなミスでも説得力に影響してしまうためです。記載する数字は、根拠ある計算に基づいて算出するようにしましょう。また、売上目標が極端に高すぎるなど、実現性が低い計画を立てないように注意してください。
より良い事業計画書に仕上げるためにはどうしたら良い?
融資の担当者にフィードバックをもらうのも選択肢の1つです。融資の担当者は数々の事業計画書をチェックしており、経験に基づいたアドバイスが期待できるからです。例えば事業内容や収支計画などに不安があれば、相談することをおすすめします。また、国から認定を受けている専門家(認定支援機関)に相談して、指導や助言を受けるのも良いでしょう。
いずれにしても、第三者に事業計画書を見てもらうことは効果的な方法です。上とは反対に、専門知識のない素人に見てもらうことで、読み手にとって分かりにくい部分が見つかることもあります。
多くの人からのフィードバックを反映することで、事業計画書の完成度を高めていきましょう。
※出典:中小企業庁「認定経営革新等支援機関」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/
飲食店の事業計画書は事業プランの実現に欠かせないツール
事業計画書の作成でこれだけの作業があるのかと驚かれたかもしれません。
しかし、事業に関する考えや検討事項等を書き出さないと、常にこれらの項目を記憶している必要があります。また、頭の中だけで考えていてもうまく整理できず、次の一手を考えることすら難しくなります。
そして、事業計画は誰かに伝える機会が何度もあります。これらの情報を伝えられる側の立場になって考えてみましょう。他人の話を、しかもこの量の情報を口頭だけで伝えられて、すべてを正確に覚えていられる人はいないはずです。
しかし、事業計画書の形にしておけば、相手はいつでも何度でもじっくりとあなたの事業計画を目にすることができます。事業計画書を作るのはあなたの事業や想いを伝える「相手のため」でもあります。その相手の中には、金融機関の担当者も当然含まれており、あなたの事業や想いを的確・明確に伝えることで、融資の審査が通る可能性を高めることもできるはずです。
検討要素が多い創業前後や、さらなる成長を望む大事な時期こそ、事業計画書は心強いツールとなってくれるでしょう。あなたの思い描く事業プランを少しでも早く実現させるためにも事業計画書の作成は欠かせない作業といえます。
サイト掲載情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。本サイトを利用する事によって生じたあらゆる不利益または損害に対して、当社及び執筆者は、一切責任を負いません。 |
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