飲食店と言っても、ラーメン屋やレストラン、ファーストフード、居酒屋まで色々あり、個人で営むものから、大手の外食産業まで実に多彩です。
飲食店の経営は、売上高の確保により収益の確保、拡大につながる施策を行って持続的な飲食店の基盤を作っていくことになるのですが、もう1つ重要なことは、せっかく上げた売上高の中にも利益の源泉があるということです。
その手段として経理があります。どんぶり勘定ではせっかく上げた売上なのに適切に利益が取得されていない可能性あります。それを防ぐためにも、しっかりと飲食店の経理について知っておきましょう。
飲食店の経理の特徴は「現金主義」
飲食店は、月々売上として現金が入り、支払いなども現金が出ていくので現金商売と言われています。これが飲食店の特徴でもあります。また、飲食店のコストは材料費、人件費、経費の3つです。これも特徴の1つです。
収益や費用の認識の仕方には3種類あり、現金主義と発生主義と実現主義です。それぞれ簡単に説明をします。
現金主義とは
現金主義とは、収益と費用の認識(計上)について、入金があった日、支払いをした日を収益と費用の計上日とする方法です。
預金通帳や現金出納帳の金額の増減と収益費用の動きが一致します。大変シンプルで分かり易いですが、当月とか期間収益を出す場合には適切な方法ではありません。
たとえば、現金商売の飲食店で、材料などの仕入れがあった場合、当月末の締切で、翌月末支払いの場合、現金主義ですと、売上高は当月計上ですが、仕入れは前月仕入れた材料の金額が計上されています。
これでは本当の経営成績ともいうべき数字が明らかにされていません。 しかし、この現金主義は、お金の流れがシンプルで分かり易いため、年間売上高300万円以下の青色申告事業者かつ適用を受ける前年の3月15日までに届け出を完了した事業者に限って、現金主義で経理処理をすることが認められています。
小規模飲食店では、この方法による経理処理をしているところも多くあります。 但し、青色申告者の特典である65万円の特別控除は受けられません。
発生主義とは
発生主義とは、財務会計の基本は発生主義です。
一般的な企業は発生主義による経理で行う事が決められています。 適正な期間収益を正しく算出するためのものです。
収益や費用は、それが発生した時点で認識し、そして両者を対応させて計上する考え方が会計のルールです。
従って上記の現金主義による経理処理は例外的な方法です。 発生主義は現金の動きに関係なく請求書や領収書などの発生日をベースに記帳計上を行う会計処理のことです。
企業会計の損益計算書や貸借対照表はこの発生主義で作成されます。
実現主義とは
実現主義という方法もあります。売上計上の時期のことを言います。
商品をお客さんに渡した時に売上を計上します。現金主義では、お客さんの入金があった時に売上計上します。
飲食店でよく使う勘定項目
勘定科目とは何でしょうか。
わかりやすく言うと、何かを買ったり売ったりした場合それらの商品はどういった目的のために使用したかを項目別に明確にするものです。勘定科目をつけることによって、毎年やってくる確定申告をスムーズに行うことができます。
では、そもそも勘定科目はなぜ必要なのでしょうか?
勘定科目を明らかにすることによって、なににどのくらい費用がかかっているのか、かかりすぎていないか不足していないかを一目瞭然で明らかにすることができます。
お金の流れをチェックして、今後の経営方針に役立てることができます。
もし、どんぶり勘定で店舗経営をしているとすれば、一見うまくいっているように見える経営にも、思わぬ落とし穴が潜んでいることもあります。そうした落とし穴に気づかないと、損益計算書上では黒字でも、資金繰りが悪化して倒産してしまうことがあります。
そのためしっかりと勘定科目を理解、認識する必要があります。
では飲食店でよく使う勘定科目にはどのようなものがあるのでしょうか?
よく使う勘定科目
水道光熱費
飲食店で一番多い勘定科目はなんといっても水道光熱費ですね。
電気代、水道代、ガス代などに費用がかかり、管理する面で欠かせません。
売上
これは消費者に対して商品を販売した料金です。
仕入
仕入れは食材や材料など仕入れた料金を指しています。
消耗品費
たとえばおしぼりや食器洗剤、コピー代などの消耗品はここに入り、その他業務にかかった消耗品の料金があてはまります。
通信費
電話やネット、郵送など業務上の連絡に必要な通信費です。
広告宣伝費
飲食店のチラシやラジオやテレビ、ネット上のCMなどにかかる費用がこれに当てはまります。雑誌広告にかかる費用もこの項目に含まれます。
飲食店の名前入りのタオルやTシャツ、割り箸などはこの広告宣伝費に入ります。
家賃
飲食店の店舗や倉庫にかかる家賃、礼金、保証金などの費用がこの項目に当てはまります。
駐車場代
月々の駐車場代は地代家賃として支払うことができ、もし臨時でコインパーキングを使用する場合は旅費交通費などの項目を設けることもできるでしょう。
従業員の給料
また欠かせないのが毎月生じる従業員への給料も項目を設けておく必要があります。
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減価償却についてしっかり押さえておこう
難しそうな名前ですが、別に難しいことではありません。減価償却とは、お店の設備など高額なものを購入した時、その費用を耐用年数に応じて毎年少しずつ分割して費用化して損金算入することです。
減価償却費とは、その年に経費として配分されたその額のことです。また減価償却費とは、事業主がしっかり押さえておかねばならない大事な経費項目です。ですが減価償却は支出を伴わない経費とも言われ、これが少々ややこしくしています。
お店の改装費、厨房設備、車両購入費は一般的に高額です。その設備の支払いがあった時に、全額を一度に経費として計上することは認められていません。税法の定める期間に従って、その後何年間にもわたって、毎年少しずつ経費として配分していくことになります。
減価償却費の押さえるべきポイントは、このように数年間にわたって経費を配分する費用が損益計算書の減価償却費ですが、お金の動きと決算書に計上されている経費の額が大きく異なります。従って、損益計算書からお金の動きが把握しづらくなっています。
また、設備資金を銀行からの借入で購入した時、元本返済額は経費になりません。経費として配分される分だけ支出しています。このことも分かりづらくしているポイントです。
ちなみに、一般的な厨房機器の耐用年数は8年、器具備品は6年です。
試算表をみるときのコツとは
試算表は月次の貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)のことです。いわば月次の決算書です。
複式簿記で仕分けされた伝票を集計するとB/SとP/Lができます。試算表は本来の貸借のバランスをチェックする、つまり試算するための表です。しかし現在では優れた会計ソフトが各種販売されており、現伝票さえ正確に入力すればB/SとP/Lがほぼ自動的にアウトプットされます。
きちんと試算表を毎月作成ことによってどんな情報が得られるのか、商売をする上において必須のデータが得られる構造になっています。
PLの具体例
損益計算書(P/L)を分かりやすく説明するなら以下の計算方法が役立ちます。
当期純利益=売上-(売上原価+販管費+営業外損益+特別損益+法人税/住民税)
しかし飲食店の場合、営業外損益や特別損益はそれほど頻繁に発生しないので、以下の計算方法がよりわかりやすいかもしれませんね。
営業利益(経常利益)=売上-(売上原価+販管費)
この計算方法で、例えば飲食店で客単価が3,000円で月商15,000千円、原価率30%、販管費及び一般管理費が8,250千円/月という場合、お店の営業利益率は15%になります。
内訳は売上100%-原価率30%-販管費率55%(8,250千円÷15,000千円)
15,000千円×15%=2,250千円となっています。
また、原価率を5%上昇させると営業利益額は1,500千円に、営業利益率は、100%-35%-55%=10%、15,000千円×10%=1,500千円になります。
〇残高科目から何が見えるか?
会社(飲食店)にある財産がどのくらいあるかを知ることができます。 残高科目の左側(借方残高)の数字は会社(飲食店)の資産を表しています。 残高科目の右側(貸方残高)の数字は会社(飲食店)の負債を表しています。
借方残高とは、会社(飲食店)の資産で、現預金、売掛金残高、の合計のことです。 貸方残高とは、会社(飲食店)の負債となっており、借入金残高、買掛金残高の合計のことです。
これで明らかのように借方残高より貸方残高の合計が上回っている場合は、会社(飲食店)の負債が会社(飲食店)の資産を上回っている状態を表し、会社(飲食店)が危険な状態になっています。
〇損益科目から何が見えるか?
飲食店の期中の儲けがどのくらい出ているかが分かります。 損益科目の左側(借方残高)の数字は飲食店のコストを表しています。
損益科目の右側(貸方残高)の数字は飲食店の収益を表しています。 借方残高とは、飲食店にかかった費用のことです。
仕入代金や支払い手数料などのことです。 貸方残高とは、飲食店の稼いだ収益で、売上高や販売手数料のことです。
これで分かりますように、貸方残高合計よりも借方残高合計が上回っていれば、収益よりもコストの方が上回っていることになり、お店が赤字に落ち込んでいることが分かります。
試算表は飲食店が確実に利益を出し続けていくための羅針盤です。
上記のようなお店にとって大事な情報を月次で得るためには試算表は欠かせません。他にも多くの経営情報が得られます。
資産、負債、資本だけでなく、余剰資金はいくらあるか、売上、仕入れの増減傾向、各種原価率、そして人件費や経費の傾向など、お店を間違いなく運営していくための基礎的な数字はほとんど得られます。
従ってお店の経営者は、きちんと毎月試算表を作って、お店の経営の方向づけを行う事が重要です。
黒字倒産を避けるために飲食店の経理について理解しておこう
これまでに、飲食店の現金主義と発生主義、減価償却のポイント、試算表の作成など、について述べてきました。これらは飲食店経営の根幹を成すものであり、会計の仕組です。
どんぶり勘定は、折角掴んだ収益の利益創出の機会を逃す行為であり、経営上の指針は何らも得られません。基本的な会計処理がされておれば少なくとも黒字倒産は避けられるでしょう。黒字倒産とは、文字通り利益が出ているにもかかわらず、お金が足りなくてお店が倒産、廃業することです。
黒字倒産を避けるための方法は資金繰り表を月次で作ることです。試算表によってお店の財産の増減や、利益傾向、費用の掛かり具合などがわかります。そしてさらに資金繰り表を月次で作成する。これにより、飲食店の経理会計の基本的な防衛体制が出来上がります。
黒字倒産の原因は色々あります。
例えば、
- 月末に支払うべきお金が足りない。仕入先に支払いを猶予してもらうしかありません。
- 入金ズレによる倒産です。売上金の入金額、時期、支払いの金額、時期、クレジットカードの決済日などは普通はバラバラです。これが管理されていないと、支払うべきお金が不足する時点が発生する可能性があります。これなどは資金繰り表で解決できる問題です。
- 運転資金の不足で倒産。開店してお客がつくまでしばらくかかる場合があります。しばらく赤字が続きます。黒字化するまで運転資金が続かず倒産、廃業するケースがあります。
- 資金繰り表がない。上記の通りです。
お店の黒字倒産を避けるためには月次で資金繰り表をきちんと作ることです。
その前提となるのは、正しい経理の仕組、現金主義や発生主義の理解、減価償却の理解、そして試算表などお店の経営にとって欠くことのできないデータ処理を必ず励行することです。
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飲食店で売上管理が必要な理由とは?売上管理の方法やポイントを紹介
飲食店での経理は自分でやる?税理士に依頼する?
では飲食店での経理は自分でするほうがいいのでしょうか?それとも税理士に依頼するほうがいいのでしょうか?
お店が小さいうちは自分で管理して、もしお店を広げる段階がきたら税理士に頼めばいいと言う考えもあります。また、税理士に頼むと月単位で何万円も費用がかさむので、全て自分で行ったほうがいいという方、はじめから税理士にまかせるという方などさまざまな意見があります。
ではどんな方法が一番良いのでしょうか?
例えば、自分で経理を行ったときの時間や手間、確定申告を行うときの知識があるという方は自己解決できそうですね。また、確定申告時など相談をしたいときには青色申告会に入会し、月々費用を払うと相談に乗ってくれますよ。
注意点として、確定申告のみ税理士にお願いしたいと思っても断られることがほとんどです。
税理士もすでに担当の顧客があり確定申告の時期はどこも忙しくしているのが現状です。
その一方、税理士に依頼する人の中には、初めての店舗経営で、メニューや接客、食材選び、調理に多くの時間が奪われるので、経理も自分で行うとなるとかなりのプレッシャーになります。
結果、お店を運営する上で多くのストレスをかかえるようになることもあります。
それで経理を税理士に依頼するならそれら数字のわずらわしさから解放され、メニューの開発や改善に力を注ぐことができます。
税理士が行ってくれるサポートとして月次監査、確定申告、税金対策などさまざまです。
しかし税理士によって得意分野や相性などもあるのでどんな面で一番サポートして欲しいかを明確化しその条件で一番適した税理士を選ぶことをおすすめします。
特に飲食店に強い税理士事務所であると安心して任せられそうですね。
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まとめ
いかがでしょうか。
飲食店の経理の特徴を知り、適切に利益を取得できるようにしていきましょう。また、試算表を活用して、末永くお店を続けていってくださいね。
【店舗経営においてはPOSレジが欠かせない】
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