飲食店の場合、直接お客様と接して料理をお出しするため、サービス精神のある人材の採用に力を入れることが他業界より重要といえるでしょう。接し方一つでもお客様の店に対する印象を左右します。
「飲食店の独立・開業・経営のための13の準備」で簡単な説明をしましたが、今回は、どのようにして優秀な社員またはアルバイトスタッフを獲得するか、それには開業するまでにどれくらいの余裕を見て、応募者の何を見て、さらにはどのような教育やマニュアルを作成すればいいのかについて説明いたします。
飲食店の場合、求人の軸は2つあります。社員かアルバイトか、ホールかキッチンかです。
社員を雇う場合、店の毎日の売上管理やその日のアルバイトの人数確保など、マネジメント面を任せることになります。もし自分がその役割を果たせるのであれば、社員を雇う必要はないでしょう。アルバイトは料理やドリンクをつくってお客様に出す、一日の終わりに掃除やゴミだしといったルーティン作業をおこないます。
経営においては人件費の管理がポイントとなっており、お店の規模に適切な人員配置でなければ、利益率が大幅に下がってしまいます。この記事では、優秀な人材確保の方法や雇用する人数の目途についてお話していきます。
社員とアルバイトの人数・役割を決める
まずはキッチンの人材採用です。職人を雇うのであれば社員としての採用が前提となり、給与もそれなりに必要となります。店のコンセプトと照らしあわせて、どんな人材を求めるのかをよく考えましょう。職人とまではいかなくても少しの経験で可能な役割であれば、3ヶ月程度の試用期間ののち正社員化する、または最初はアルバイトとして雇用するといったことも考えてください。仕込みの時間も入れて、8時間/日として作業工程とシフトを計算し人数を割り出してください。
ホールは、営業時間(開店準備、閉店作業も含めて)を考慮してシフトを検討しましょう。
また、ホールとキッチンのどちらにおいても同じことが言えるのですが、ここでのポイントは「全ての時間帯を同一に考えない」ということです。当然ながら、平日と土日前日の夜はお客様の数が違ってきます。
ピーク時の人数を最大として、ランチ後や開店直後の配置人数を決めていけば、過剰に雇用する必要がなくなり、無駄な人件費を削減することができます。
ピーク時の人数を最大として、ランチ後や夕方などはその半分で回したり、作業によっては兼務するなど時間帯によってシフトの人数を減らすようにしてください。
求人広告を出稿する
採用する職種・人数が決まったら次は求人広告を出します。オープニングスタッフは、求人誌への有料掲載から始めることになります。枠の大きさにもよりますが数万円から10万円以上かかる場合もあります。オープニングは教育係スタッフも育っていないことや責任感のある人材が必要なことから社員採用を前提として少人数の募集をかけることが望ましいです。開店5~6週間前を募集期間として、時間もあるのでじっくり面接しましょう。開店2週間前くらいから研修も開始できるように採用を決めていきましょう。
・WEB広告を利用
昔は情報誌などが求人媒体の代表例でしたが、最近はインディードなどのWEB媒体での求人が強い傾向にあります。こういった求人サイトを上手に利用して一人でも多くの方に求人情報が届くようにしましょう。
紙媒体の情報誌であれば、2週間で10万円近くの広告費がかかりますが、WEB媒体の中には無料で広告掲載できるものもあるので、こういったものは積極的に使っていくことをお勧めします。
それで人が集まらなければ、そこで初めて有料広告の利用を検討する方が良いでしょう。
・お店に貼り紙広告を出す
今すぐできる無料の求人方法といえば、店舗の入り口、またはトイレやレジ付近に求人広告を貼ることです。無料で求人をだせるメリットだけでなく、既にお店の雰囲気を知っているお客様なので、興味があれば行動に移してくれやすいということです。
・近隣の学校などに協力を仰ぐ
職人などあれば話は別ですが、ホールスタッフなど学生でも出来る仕事内容であれば、近隣の学校に求人情報を掲示させてもらう方法もあります。学生にしてみても、学校に貼りだされている求人なので信用できる為に、応募率がかなり高いのがメリットと言えるでしょう。
面接では応募者のどこを見ればいいのか
いくら人手不足とは言え、無条件で雇用するのはとても危険です。その理由は冒頭でもお話したように、飲食は接客業なので、その人の人柄重要だからです。では、面接時にはどの部分をチェックするべきなのかをみていきましょう。
社員の場合
仕事への思い入れ、将来的にどのような仕事をしたいか、自分のお店を持ちたいのかなど長い目でみて本人とお店の方向性が合うことを確認するようにしてください。職人の場合経験値も重要ですが、お店が料理だけでなく、多くのスタッフによって成り立っていることを確認したうえで周りと協力しながら仕事ができるか、オーナーの意向に沿うかなど適性をよく検討してください。
アルバイトの場合
稼働可能時間帯、土日祝対応可能か、学生の場合は特に定期試験期間の対応も考慮して、まずは条件に合うかを確認してください。欲しいシフト、役割に合うようであれば採用を決めていくようにしましょう。
言葉使いや態度
飲食業はお客様と触れ合う仕事です。言葉使いは丁寧かどうか、態度に問題はないかを確認するようにしましょう。
清潔感は?
飲食業に不潔な感じは絶対にNGです。相手に清潔感があるかを見ていきましょう。例えば、髪型は綺麗に整えられているか、爪はしっかりと切られているのかといった細かい部分です。
協調性の有無
外見以外のチェックポイントとして、協調性があるかどうかです。これを調べるためには「●●な時はどんな行動をしますか?」など協調性を測れる質問事項を事前に用意しておくのがお勧めです。
本人の希望職種か?
雇用しても、直ぐに辞められてしまっては意味がありません。本当に本人が希望する職種なのかはハッキリとさせておきましょう。
通気時間に支障はないか?
職場が、応募者の家からどれくらいの通勤時間になるのかは調べておきましょう。例え、本人が問題ないと言っても、通勤は1回や2回の話ではなく、長く続くものですから「やっぱりしんどかったです」といって離職に繋がるケースも少なくありません。遠くても通勤まで30分以内が理想と言えるでしょう。
その他、明るいか、受け応えはしっかりしているか、化粧や髪型は飲食店に相応しいかを調べておきましょう。
教育(研修)とマニュアルの作成
飲食店の場合、実地研修(OJT)が多くなるでしょう。本番であり間違えることが許されない状況ですので、最初は手取り足取りこまめに教えてあげる必要があります。現場に出すまでにある程度の教育が必要なのですが、教育に漏れがないようにするためにも、マニュアルを用意して、そこにお店のコンセプトや服装などのマナー、給料日などの基本的事項を書いておきましょう。お店のルール、動き方、伝え方など言わなくてもわかるというようなことまで、きちんと教育することが大切です。教わる側も常に小さなノートを持ってメモしてもらうなど、基本的な姿勢を指導するようにしてください。
特にホールでは、マニュアルどおりの動き方のみですと、お客様に気づかれてしまいます。お客様のどこをみて、自らどう動いていくか、理由を含めて説明しやってみせることで覚えていってもらいます。
どれだけ優秀な人材を雇ったとしても、その後は店の教育がカギを握っています。飲食だと、現場で仕事を覚えることが多くなっていますが、いわば一発勝負。新人だからといってお客様への失礼は許されるものではありません。
接客などについてはレストランサービスなどにも詳細が書かれていますぜひ参考にしてください。特にマニュアルに記載するべき項目については「飲食店の接客マナー。マニュアル作成時に記載しておきたいこと」で紹介しています。
また、勤務をしたら、それで終わりではなく、勤務終了直前には反省会の場を設けるなどして、二度と現場で同じ失敗を繰り返さないような教育システムも大切です。
以上が、飲食店における採用方法や面接のコツ、育成方法となります。
この3項目をしっかりとすることが出来れば、お店で人材不足に悩まされることがなくなるどころか、他店舗より優秀な人材を囲っていることが可能となるので、お店は繁盛していくことでしょう。
いいスタッフは人物×研修から生まれる
優れた人を採用しても研修が不十分だと、いざ自分が居ないときに徐々にサービスレベルが劣化していきます。ひととおり実施したあとも、常々現場をチェックして、徹底されているか、改善すべきところはないか、スタッフ同士で共有するようにしましょう。キッチンスタッフでも自信からくる笑顔は大切です。積極的に良い店にしていくような環境を作っていきましょう。
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