飲食店独自の売上分析手法 ABC分析でなく、CSP分析とは!?

飲食店

分析へ指差す男性

こんにちは、汗を流すコンサルタントの白岩です!今回は「飲食店における売上分析」というテーマでお話ししていきましょう。

まず、飲食店を経営していく中で「何が売れたのか?」を分析するために使われるのが「ABC分析」です。ABC分析については「飲食店のABC分析のやり方。メニュー改定と在庫管理に活かす方法」で説明していますが、今回は「物」に着目したABC分析ではなく、来店するまでの「人」に着目した新たな分析方法「CSP分析」について、ご紹介していきます。

「何が売れたか?」を見る「ABC分析」

ABC分析を用いれば、一定期間中(例えば1ヶ月)において「どの商品が、どれだけ売れたか?」の割合(比重)が分かります。そして、この結果から「売りたい商品が思うほど売れているか?」について評価ができます。もし、売りたい商品が思うように売れていなければ、何かしら対策を打たなければなりません。

売りたい商品を売るための対策例

  • メニューブック内での対象商品の配置を変える
  • 対象商品の写真を変える(つける)
  • スタッフのオススメを強化する
  • 対象商品のキャンペーン(特別価格)を企画する
  • 対象商品の看板(のぼり)を設置する

こういった対策をとれば、売りたい商品を売ることができるようになります。……と、ここまでABC分析についてご説明してきたのですが、このABC分析は、そもそもスーパーやコンビニなどの物販業から受け継がれたものです。物販業にとって、このABC分析は「生命線」といってよいでしょう。

なぜなら、その結果が売上を大きく左右するからです。ただ飲食業において、このABC分析が「生命線」というほど重要か?というと、「それほどではない」と私は思っているのです。

飲食業におけるABC分析の違和感

スーパーやコンビニなどの物販業でのABC分析と、飲食業におけるABC分析の違いは、主に下の2つです。

購入方法

スーパーやコンビニでは、お客様が店内を巡って自ら商品をカゴに入れますので、商品の配置(棚割り)が重要になってきます。より目に留まり、より手に取られるような場所にある商品ほど多く売れます。レジ横スペースにガムや電池を置くのも「ついで買い」を促す狙いで置かれています。基本的に、その過程で人が介在することはありません。(たまに販売員が試食コーナーを設ける場合がありますが……)

しかし、飲食店では、人の介在なしに商品を購入(注文)することはできません。必ず、スタッフとお客様とのコミュニケーションが発生します。「物販の棚割り=メニューの配置」だとして、目立たない場所にある商品でも、スタッフがオススメすれば、注文を増やすことも可能です。

購入点数

スーパーやコンビニのお客様には予算(財布)の限界はありますが、肉体的(つまりは胃袋的)限界はありません。その場で食べる(消費する)わけではありませんからね。3品を購入するお客様もいれば、10品以上を購入するお客様もいます。しかし、飲食店には肉体的限界がありますので、それほど購入点数に差が出ることは(滅多に)ありません。

物販業と飲食業との売上計算式の違いとは

購入点数に関連しますが、客単価についてもスーパーやコンビニの物販業と飲食店とでは異なります。スーパーやコンビニは、お客様が「来店してからが勝負」です。なぜなら

  • 来店後に10円の「うまい棒」一本で終わるのか?
  • ビールなどをカゴに入れてもらうことで1,000円越えとなるか?

極端にいえば、これくらい客単価の振れ幅が大きいビジネスだからです。

一方、飲食店は、お客様が「来店するまでが勝負」です。(もちろん来店してからも重要です。)なぜなら、客単価の振れ幅がスーパーやコンビニほど大きくないからです。胃袋的限界があり、客単価の幅が比較的狭いビジネスだからです。つまり、「とりあえず入口を跨いでもらえれば、一定額の売上が確定する!」これが飲食業のメリットなのです。

物販業と飲食業との売上計算式の違い

物販業

客数(もちろん重要!)× 客単価(振れ幅大きい!)= 売上
特徴:客数が増えても、客単価の振れ幅が大きいので油断できない!
「来店してから」が勝負!

飲食業

客数(かなり重要!)× 客単価(振れ幅小さい……)= 売上
特徴:客数さえ増やせれば、客単価の振れ幅が狭いので売上は確保される!
「来店するまで」が勝負!

「人」に着目した飲食店の白岩流「CSP分析」

物販業は「来店してからが勝負」であり、飲食業は「来店するまでが勝負」という事実に気づいた私は、「何が売れたか?」という「物」にではなく、「どのような経緯で来店したか?」という「人」に焦点を当てた分析をすることにしました。

私はこれを「来店プロセス(Coming to the Store Process = CSP)分析」と命名しました。一般的なアンケートにあるような「来店動機(motivation)」ではなく、「来店プロセス(process)」としたのには理由があります。

どのような動機(きっかけ)で来店したのか?ということよりも、どのようなプロセス(方法)で来店したのか?ここに注目したかったからです。これを「動機」としてしまうと、あまりに多種多様になってしまいます。

CSP分析の考え方

まず売上を以下の2つに分類します。

(1) 予約による売上
(2) 予約なし(フリー)による売上

次に、(1)を2つに分類します。

(3) 席予約(来店してから注文)による売上
(4) コース予約(事前に決まっている注文)による売上
(※テイクアウトをしていれば「(5) 物販(テイクアウト)売上」も加える)

つまり、「(1) = (3) + (4)」であり、「(1) + (2) + (5) = 全体売上」という数式が成り立つことになります。

分類した (1) と (2) との比較によって、全体売上における予約による売上割合が分かります。さらに (3) と (4) のとの比較により、予約のうちコースを頼んだお客様の占める売上割合が分かります。テイクアウトをしているお店 (5) は、全体売上における物販の売上割合が分かります。

このCSP分析の結果から、以下のような「売上の中身」が見えてきます。

CSP分析から分かる飲食店の経営状態

  • (1) の割合が高いほど、売上は安定傾向にある
  • (2) の割合が高いほど、売上はフリー依存であり、不安定傾向にある
  • (3) より (4) の割合が高いほど、(注文が決まっているため)売上が読める
  • (4) の割合が高いほど、当日使う原価 (F) と人件費 (L) の費用が予測できる
  • (5) が高いほど、物販業に近い経営内容になっている

このように、CSP分析を行なうことで、店の経営(主に売上)の「安定度」が見えてくるわけです。

実際にCSP分析をやってみた結果……

私のクライアントの居酒屋で、このCSP分析を行った実例をご紹介します。

2ヶ月間(7月と8月)の売上について、

  • (1) 予約による売上
  • (2) 予約なし(フリー)による売上
  • (3) 席予約(来店してから注文)による売上
  • (4) コース予約(事前に決まっている注文)による売上

この4つをそれぞれ算出し、2ヶ月間の「売上の中身」を比較しました。(※テイクアウト (5) はやっていませんでした。)

クライアントの居酒屋店におけるCSP分析結果

(1) (2) の比較

  7月 8月
(1) 予約売上 56.1% 48.5%
(2) フリー売上 43.9% 51.5%

(3) (4) の比較

  7月 8月
(3) 席予約売上 19.9% 43.2%
(4) コース予約売上 80.1% 56.8%
※2ヶ月とも、ほぼ同水準の売上額

CSP分析から分かったこと

  • 7月は「予約売上比率 (1) 」が過半数を占めている
  • 7月は席予約よりも「コース予約売上比率 (4)が高い
  • 8月は「フリー比率 (2) 」が過半数を占めている
  • 8月は7月よりも席予約比率が2倍以上に増えている

7月も、8月も売上は、ほぼ同額であったにもかかわらず、その中身は大きく違ったことが分かったのです。当然、7月の売上の方が、その安定度は高かったと判断することができます。また、8月は予約の電話があった際に、コース料理の推奨をしておけば、もっと売上を安定させられる可能性があった、と見ることもできます。

まとめ

いかがでしょうか?

ABC分析は、来店したお客様が注文した「物」に着目した分析。今回ご紹介したCSP分析は、来店するまでの「人」に着目した分析です。それぞれ、その違いと、飲食店におけるCSP分析の重要性について、ご理解いただけましたでしょうか?

今後も、「飲食業ならでは」の経営を現場に入りながら発見してまいりたいと思います。どうぞ、ご期待ください。


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この記事の著者

白岩 大樹
白岩 大樹

1976年熊本生まれ。中央大学卒業後、板前として「なだ万」に勤務。2000年より「牛角」のスーパーバイザーを務め、2004年より、OGMコンサルティングにて集客コンサルタントとして活躍。2009年アップ・トレンド・クリエイツ設立。「汗を流すコンサルタント」として、飲食店アルバイトをメインにコンサルティングを展開中。現場を直接動かすスタイルで数々の収益向上を実現している。

アップ・トレンド・クリエイツ