最近、ハラールということばをよく見聞きするようになりました。留学生を対象にハラールフードを提供している大学もありますし、機内食に用いている航空会社もあります。書店にはハラールビジネスに関する入門書も並ぶようになりました。
ハラールフードとはどのような食材を使ってどのように調理するものなのでしょうか?今回はメニューのハラール対応をする理由と、今後ますます需要の伸びが予想されるハラールフードについて説明していきます。
ハラールとは
イスラム教には生活全般において規範とされるものが2つあります。1つは神に許されている行為・物を意味する「ハラール(Halal)」で、もう1つは、逆に禁じられている行為・物を意味する「ハラーム(Haram)」です。結婚、離婚、葬祀儀礼、性、身だしなみ、金融、契約など、あらゆることに対してこのハラームとハラールという概念が適用されています。ハラールであるかハラームであるかを決定するのは唯一神のアッラーのみとされ、ムスリム(イスラム教徒)はこの厳粛な規範に基づいて生活しています。
一般に清浄で安全であることはハラールで、不浄で有害なことはハラームとされています。たとえば、1日5回の礼拝や慎み深い服装などはハラール、賭け事や投機などはハラームです。ハラームなことをハラールと偽る行為はハラームで、また、ハラールとハラームが混じったり接触したりするとハラームとみなされるというように、清浄性を重んじるのがイスラム教の特色です。
こうした規範は飲食物にも当てはまり、食することを許されている「ハラールフード」と、禁止されている「ハラームフード」にはっきり分けられています。ハラームフードの代表的なものが豚とアルコールです。飲食物については後述しますが、敬虔なムスリムはたとえ旅行先であっても豚肉料理やお酒を口にすることはありません。
食べる物に対して特に決まりがない日本人にとっては、理解しがたいかもしれません。しかし、多様な社会に内在する一つの文化であることを尊重し、宗教的に配慮した接客を心がけることが大切です。
ハラール対応をするとどんないいことがある?
訪日旅行者が増えている理由
訪日旅行者が増えている昨今、なかでもマレーシアやインドネシア、シンガポールなどイスラム圏からの旅行者が急増しています。その理由として、イスラム圏の経済成長が目覚ましく、海外旅行を楽しめる富裕層や中間所得層のムスリムが増えていること、東南アジア5か国のビザ発給要件が緩和されたこと、LCC(格安航空)が増便されたこと、円高が解消されたことなどがあげられます。
日本国内での市場が縮小傾向にある旅行業界や宿泊業、輸送業、観光施設などは、そうしたイスラム圏からの旅行者を取り込むことが大きなビジネスチャンスになると注目しています。
実際、今日の日本では主要空港や駅、デパートやショッピングモールなどの商業施設のなかにも、ムスリム旅行者のために礼拝室を設置するところが増えています。すでにハラール対応をしているホテルや民泊などもあり、いずれもイスラム圏からの旅行者から好評価を得ているといいます。
集客アップのチャンス
飲食業界においてもハラールフードを提供するための取り組みが活発化しています。今のところ大手外食チェーンの参入はあまり見られませんが、個人経営のカフェレストランや寿司屋、うどん店、ラーメン店、焼き肉店などでムスリムの集客に成功しているところが徐々に増えてきています。
ハラールフードを提供するには、イスラム圏の各国に設けられている認証機関が発行する「ハラール認証」を取得すべきなのですが、選定基準が厳しく、審査料も高額であるなど、ハードルが高いため取得するのは容易ではありません。認証を受けるとなると、ただ豚肉とアルコールを避ければいいというわけではなく、調理器具や食器もハラームのものに触れたものは使えませんし、管理者としてムスリムの調理人を雇用することも義務づけられます。
そのようなことから、正式な認証は取得していないけれど、禁じられている飲食物を避けることと、簡易の礼拝所を設けていればハラールとして認めるというように、日本の実状にローカライズ(現地化)した制度「ローカルハラル認証」が取り入れられるようになりました。これは、自分にできる範囲内でムスリムを友好的に受け入れようというもので、「ムスリムフレンドリー」とも呼ばれています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてムスリム旅行者が増えていくことは確実で、ムスリムフレンドリーの必要性も高まることが予測されます。
イスラム圏は東南アジアだけではなく世界中に広まっていて、ムスリムの人口は16億人ともいわれています。そのなかには中東やドバイの大富豪も含まれているでしょう。今からハラール対応に取り組んで料理の腕も磨いておけば、リピーターになってもらえる可能性も十分にあります。大富豪はともかくとして、ビジネスのビッグチャンスをつかむことはけっして夢ではありません。そのためには、ハラールフードについての知識を深めることが第一歩です。
ハラールフードについて知ろう
イスラム教では「アッラーの創造したものはハラール」という考えが根底にあり、口にすることが許される飲食物の条件として主に次の4点があげられます。
- 穀類・野菜・果物
農薬を使っていないもの。遺伝子組み換えをしていないものに限られます。 - 肉類
ハラールの飼料で育てられた牛、鶏、羊などで、イスラム教の作法に則って屠畜・加工処理された肉。卵もハラールの鶏から生まれたものに限られます。豚も同じ家畜ですが、豚は雑食性で何でも食べるため感染症の恐れがあることから不浄なものとして避けられています。豚肉だけでなくベーコンやハム、豚のエキスが入ったスープやブイヨン、ゼラチンやショートニングを使ったお菓子など、豚由来の食品はすべて禁じられています。 - 魚介類
養殖以外の海産物はほとんどハラールです。フグも毒を除去したものはOKです。 - 飲み物
天然水、水道水、ハラーム成分を含まないソフトドリンク、果汁100%のジュースなど。 人工甘味料やアルコールが含まれるものはいっさいNGです。酒類は酔うとギャンブルに手を出したり危険な行為に及んだりするため、有害なものとして禁じられています。
以上のような条件を見ると、ハラールフードはムスリムだけでなく、健康・美容志向の高い人やアレルギー体質の人、ベジタリアン(菜食主義者)、ビーガン(動物性の食材を使わない人)などにとっても、うれしい安全食品であることがわかります。
ハラールフードを使ったメニューを考えてみよう
ハラールフードというとイスラム料理のように思いがちですが、純然たる日本料理でもハラールフードになり得るのです。
天然の魚介類を使った刺身、寿司、無農薬野菜を使った天ぷら、おにぎり、そば、うどん、ラーメン、パスタなどはハラールフードとして提供することができます。しょう油やめんつゆなどは、アルコールが含まれるものを使うことができませんから、こんぶやかつお節からとったダシを使うようにします。ラーメンは鶏ガラを使えばハラールラーメンになります。
もう1つ日本食の代表格である「すき焼き」も、ハラール牛を使ったものであれば喜んでもらえます。牛肉は食品会社で一般的な方法で加工処理されたものは使用できませんので、ハラール食材を専門に扱う業者を利用することになります。ハラール認証を取得した企業が全国にありますから、インターネットで調べて近くの業者を利用するといいでしょう。
ムスリムの多くは日本食を味わうことを楽しみにして訪れています。ハラールを意識しすぎてかえってムスリムを戸惑わせたりすることのないよう、相手が必要としているのものは何かを聞いて、柔軟に対応するようにしましょう。
まとめ
いかがでしょうか?
ムスリムに安心してお店を利用してもらうためには、ローカルハラル認証や推薦状を取得することをおすすめします。ただし、日本では認証機関をだれでも立ち上げることができるため、ハラールブームに便乗した詐欺まがいの認証団体もあるといわれていますから注意が必要です。「MHC(マレーシア ハラル コーポレーション)」や「NPO法人 日本ハラール協会」は、マレーシアやシンガポール政府のハラール認証機関から正式な認証を受けていますので、そうした機関に問い合わせてみるといいでしょう。
ぜひ積極的にハラール対応に取り組んで、ビジネスのビッグチャンスを掴んでください。
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