数年前からじわじわと人気が再燃しつつあるクラフトビール。人気のクラフトビールをドリンクメニューに追加したことで、多くのクラフトビールファンが全国から訪れるお店になったと言われる店舗もあるとされます。では、そもそもクラフトビールとはどのようなビールのことを指すのでしょうか。また、導入に際して気をつけるべきことはあるのでしょうか。
そこで今回は、クラフトビールの種類や仕入れ方法、導入に際しての注意点についてご紹介いたします。
クラフトビールとは?
小さな醸造所が作るビールはクラフトビール
クラフトビールは英語で「craft beer」と書きます。「craft」には、日本語で手工芸品という意味があることから、すなわち、クラフトビールは「手作りのビール」ということになります。もっと突っ込んで解釈すると、大手のビール会社が量産するビールではなく、ビール職人自らの勘や知識を持ってして生産されたビールとなります。しかし、クラフトビールは「第3のビール」などのように、酒税法等で定義されているものではありません。
アメリカでは、ビールの年間生産量が約70万キロリットル以下、そして、この定義に該当しない他の酒類製造業者によって持たれている株式が25%未満であり、伝統的手法に革新的な原料と発酵技法を用いた醸造所のことを「クラフト・ブルワリー」としています。以上の基準を満たした「クラフト・ブルワリー」で作られるビールこそが、「クラフトビール」になります。
日本においては、1994年の酒税法改正でビールの最低製造数量基準が2000klから60klに引き下げられた時に、全国各地に小規模なビール醸造会社が登場しました。そうして生まれた醸造所が製造したビールは「地ビール」と呼ばれ、日本中でブームになりました。しかし、一時300社以上あった地ビール会社は、10年後には200社程度にまで減少しました。「地ビール」を製造する醸造所の減少とともに、「地ビール」という言葉も聞かなくなっていきました。その代わり、近年では「地ビール」という言葉ではなく「クラフトビール」と呼び変えて、再起を図っているのが実態です。
大手ビール会社も参入
近年、日本国内におけるビールの出荷量が減ってきていることに危機感を持った大手ビール会社は、再燃しつつあるクラフトビールブームに乗じて、日本国内やアメリカのクラフト・ブルワリーとの提携や買収、あるいは自社で小さな醸造工程を別に設けて、クラフトビールを生産する戦略を導入しています。
たとえば、キリンビールは2014年に国内最大のクラフトビールメーカーであるヤッホーブルーイングと資本提携し、クラフトビール専門のパブを代官山に開店させました。その2年後には、アメリカのブルックリン・ブルワリの株式を、クラフトビールであるための定義に抵触しない範囲で取得しています。
こうした動きは、自社で醸造したものを「これはクラフトビールだ」と主張し、それなりのストーリーを用意すればクラフトビールとされているのが今日の日本における現状です。
ここで改めて、大手ビールメーカーも注目するクラフトビールというカテゴリーは本当に伸びている市場なのか、消費者からのニーズはあるのかについて、客観的なデータで検証してみましょう。
ビール大手5社における2017年1~6月のビールの出荷量は、前年に比べ1.3%減でした。これに対して、それ以外の中小メーカーが生産するクラフトビールの出荷量は0.7%減となりました。つまり、消費者のビール離れの影響があって減少はしているものの、大量生産のビールに比べれば、クラフトビールはまだ健闘していると言えるのです。
さらに、クラフトビールを醸造する醸造所ごとの内訳をみても、全87社のうち前年よりも出荷量が増加したところが61社と、全体の70.1%を占めました。つまり、クラフトビール市場は全体では微減となっていますが、醸造所レベルで見るとクラフトビールは明らかに伸びています。こうしたことから、一部の醸造所が急激に低迷したということなのです。
以上のデータから、消費者がクラフトビールに対して確かなニーズを持っているということが推測できます。大手ビールメーカーもこうした状況を理解していることから、クラフトビールのカテゴリーに参入してきているのです。
クラフトビールの特徴
クラフトビールは数多くあれど、どのクラフトビールにも共通した特徴があります。
特徴の1つとして、クラフトビールには多様性があるということです。大手ビールメーカーが大量生産しているビールは、「ビールの種類」としては多くて10種類程度だとされます。しかし、アメリカのクラフトビールメーカーが製造しているものでは、実に96種類ものクラフトビールがあるとされます。日本におけるクラフトビールメーカーでも、96種類とまではいかなくとも非常に多様なビールが各醸造所で作られています。
もう1つの特徴は、希少性です。多くのクラフトビールは小規模の醸造所で生産されているため、その出荷量は少なくなる傾向にあります。また、クラフトビールの中には季節限定のフルーツを使ったものもあります。しかし、そのようなクラフトビールは市場に出回っていないため、お目にかかる機会があまりありません。このような希少性がある点も、クラフトビールの特徴の1つです。
クラフトビールにはどんなものがある?
クラフトビールにはどのようなものがあるのでしょうか。厳密に言うと、クラフトビールに種類はありません。ビール自体に種類があるのです。
地方の小さな醸造所が自社の戦略に則って、思い思いのビールをその種類の中から選んで製造しているのです。その結果として、クラフトビールに多様な種類が生まれているというのが実態です。
そこで、以下ではビールそのものの種類について簡単にご紹介していきます。
ビールには大きく分けて「ラガービール」と「エールビール」があります。
ラガービール
ラガービールとは、ラガー酵母を使って5度前後の低温で1週間程度発酵させます。発酵が終わると、タンクの下の方に酵母が沈みます。この方法を「下面発酵」と言います。下面発酵をさせているもの全般を、一般的には「ラガービール」であるとされます。日本の大手ビールメーカーが製造しているビールのほとんどはこのラガービールです。味わいはすっきり喉越しが良く、癖がないため飲みやすいのが特徴です。
エールビール
エールビールは、エール酵母を使って20度前後の常温で短期間発酵させます。発酵が終わると酵母が上に浮いてきます。これを「上面発酵」と言い、この方式で醸造されるビールを「エールビール」と呼びます。味わいはラガービールに比べてパンチがあり、香りが豊かでやや濁りがあったりコクのあることが多いのが特徴です。
全てのビールは、基本的にはこのラガービールかエールビールに大別できます。そして、ラガービールとエールビールの中で、いろいろなカテゴリーに分かれていくのです。細かなカテゴリーについて、主なものを以下にご紹介します。クラフトビールの多くは、以下のどれかに該当します。
- ピルスナー
ピルスナーはラガービールの1種です。味はスッキリしていてホップの苦みが強く、アルコール度数も3~5%と低めです。日本人の多くは「辛口ビール嗜好」があるため、日本の大手ビールメーカーで売れ筋になっているのは、このピルスナーです。こうしたピルスナーのことを、ジャーマンピルスナーと呼びます。それだけではなく、甘みとコクが強いボヘミアンピルスナーやホップが利いたアメリカンピルスナーなど、様々な種類のピルスナーがあります。 - ペールエール
ペールエールはエールビールの1種です。以下でご紹介していくビールは、全てエールビールになります。つまり、ラガービールが強いのは日本を含めたアジアだけで、世界的にはエールビールが主流ということです。ペールエールはアルコール度数が4.5%~5.5%で、ピルスナーに比べて味が濃く、ホップも強く感じられます。クラフトビールメーカーの多くは、ペールエールを醸造していることが多いとされます。 - ヴァイツェン
「白ビール」の1種です。白ビールとは、ホップと大麦で作られる多くのビールとは異なり、ホップ、大麦、そして小麦から作られるビールです。ヴァイツェンは、その中でも小麦を50%以上使っているものです。ヴァイツェンの味わいは苦味が少なく、甘いバナナのような香りがするのが特徴です。フルーティーで飲みやすいため、女性に人気があります。 - フルーツビール
エールビールの中に果汁を入れているビールです。果物の種類とその入れるタイミングによって、非常に多種多様なものに変化します。味わいも、ジュースのように甘いものから甘さ控えめのものまで様々です。 - スタウト
このカテゴリーで1番有名なのはギネスビールです。スタウトは、黒く香りがしっかりしていることが特徴です。日本でも大手ビールメーカーがスタウトビールを製造していますが、これはほとんど下面発酵ですから、正確にはスタウトではありません。スタウトは上面発酵のものを指します。
クラフトビールってどうやって仕入れるの?
クラフトビールを店舗で提供しようとした場合、どのように仕入れればよいのでしょうか。方法はいろいろとあります。
大手ビールメーカーから仕入れる
最終的には酒類卸問屋や酒屋を流通として経ることになりますが、概念としては大手ビールメーカーから仕入れるという方法です。大手ビールメーカーからクラフトビールを仕入れる場合、大手が製造しているクラフトビールもあれば、提携しているクラフトビールメーカーの商品を自社の流通に乗せて販売しているケースもあります。クラフトビールにこだわりたいのであれば、クラフトビールの出自や内容をよく確認しましょう。
酒類卸問屋や酒屋から仕入れる
酒類卸問屋が独自に海外や国内のクラフトビールを仕入れて販売しているケースもありますので、取引している問屋があれば確認してみてもよいでしょう。
インターネットで仕入れる
業務用のクラフトビールを専門に扱うサイトがいくつもあるので、そういったところから直に仕入れてもよいでしょう。種類が豊富な分、卸値に関しては多少高くなる可能性もありますが、方法としては検討の価値があります。
たとえば、以下のようなサイトが挙げられます。
醸造所から直接仕入れる
自分が惚れこんだクラフトビールがあれば、醸造所から直接仕入れることが可能な場合もあります。醸造所によって卸問屋や提携のサイトを経由しないと買えない場合、あるいは年間の仕入れ量がある程度でなければ取引できない場合もありますから、交渉次第ということになります。
クラフトビールを扱う注意点
消費者ニーズが高まっているクラフトビールではありますが、導入に際してはいくつか注意点があります。
原価率が高い
クラフトビールは、原価率が大手ビールメーカーのビールに比べて高い傾向にあります。クラフトビールの原価率はおよそ40~45%であるとされているので、大手ビールメーカーのビールに比べて5~10%高いと言えます。
値付けに気をつける
原価率が高い点をクリアするためには、価格を高めに設定するか、提供する量を調整する方法がよいでしょう。たとえば、250ml程度のハーフサイズを原価率20%程度の価格に設定することで粗利を稼ぐ一方、レギュラーの400mlを原価率を35%程度のほかのビール並みの価格に設定し、全体でコストバランスをとるという方法です。
流通によっては劣化している可能性も
大手ビールメーカーのビールは、加熱殺菌していない「生」でも劣化をできる限り抑える製法で製造しています。しかし、小さな醸造所の生産するクラフトビールは無濾過非加熱で、劣化を出来る限り抑える製法では作られていません。
流通上は低温遮光が必須ですが、問屋や酒販店の中には常温で保管し、遮光もあまりしていないケースが多いのが実態です。クラフトビールをそのような状態で保管した場合、品質の劣化に直でつながります。どのようなルートで仕入れる場合でも、品質管理体制に関して事前の確認が必要です。品質が劣化していないクラフトビールを仕入れる確実な方法は、製造年月日が新しいものを醸造所から直接仕入れることがベストでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?
多種多様なクラフトビールは、同じく多様化する消費者ニーズをしっかりと捉えることができるため、苦戦するビール市場の中で善戦しています。様々なニーズを捉えるクラフトビールを導入して、ドリンクメニューに付加価値を与えれば、お店の集客力を強化する作戦になるかもしれません。
クラフトビールを導入する際は、仕入れと原価管理に関しても工夫を行いましょう。上手にクラフトビールを導入して、店舗の集客力アップに繋げていきましょう!
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