全国または海外への店舗拡大を進めるほど、各店舗の管理や経営状況の迅速な把握が困難になります。そこで重要なのが「チェーンオペレーション」の構築です。チェーンオペレーションを適切に構築し、本部と各店舗の役割を分担することで、仕入れや物流コストの削減、各店舗への経営指示の効率化が進むでしょう。
チェーンオペレーションは、本部を中心に加盟店または支店(チェーンストア)を複数展開する際、商品の仕入れや顧客へのサービス提供、売り上げなどの店舗運営を本部が一括管理する経営方法です。一括管理することで、すべての店舗におけるサービスの質やブランド価値の維持が実現できます。
チェーンオペレーションを適切に導入できれば、本部と各店舗がたがいにサポートかつ成長できる関係性になるでしょう。そのポイントを解説します。
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チェーンオペレーションとは
チェーンオペレーションは、全国または海外へ複数の店舗を展開させる際に有効な経営手法です。展開した複数の店舗の経営状況を把握したり提供するサービス内容を指示したりなど、一度に管理がしやすくなるのがメリットです。また、できるだけ少ない数の管理で済めば、新規店舗の開業資金や運営コストも低く抑えられるでしょう。
チェーンオペレーションの特徴
各店舗の商品仕入やプロモーションなどを、1つの本部が実施するビジネス形態を指します。全国へ複数の店舗を展開する際に有効な経営手法の一つでもあり、本部と店舗で役割を分担することで経営の効率化を図ります。具体的には本部は管理や指導などを担当し、店舗は販売や営業などを担当することで、本部と店舗がそれぞれの役割に集中できます。
チェーンオペレーションのメリット
店舗の画一化
本部が店舗全体を管理し、店舗ごとの商品やサービスを画一化することで、消費者はどの店舗へ行っても同じ質の商品やサービスの提供が受けられます。
仕入コストの削減
チェーンオペレーションでは、本部が各店舗の仕入業務を集約して行います。各店舗分の食材や商品を大量に仕入れることで、取引先との交渉を有利に進めることができ、高い確率で仕入れ価格を下げられます。
さらに、複数の店舗の食材や商品を一括で仕入れるため、各店舗の提供サービスの統一化が図れます。また仕入れコストを削減できれば、顧客へのサービスがさらに安く提供できるため、競合他社との差別化が有利に進められるでしょう。
チェーンオペレーションのデメリット
新規出店による設備投資を回収できない可能性がある
新しく出店するたびに、設備投資など高額な初期費用が発生します。不採算店が出た場合は初期投資を回収できず、店舗や本部全体の利益が減少する可能性があります。
人材採用や育成にコストがかかる
店舗数が増えるごとに従業員の数を増やす必要があります。一般的に店舗数が増えるとともに従業員の確保や教育コストも増大します。
店舗数が多いと管理が行き届きにくい
全国へ店舗数が増えるほど、管理業務の負担が大きくなる傾向にあります。管理が行き届かなければ、店舗ごとのサービスの質を均一化しにくくなるでしょう。また店舗に任せる業務が増加かつ複雑化すると、店舗の負担が増加し、店舗ごとのサービスの質に差が出ます。負担が多い店舗を多く抱えると、本部から店舗へのサポートがうまく機能しなくなり、店舗が疲弊するという悪循環に陥る可能性があります。
チェーンオペレーションの3つの形態
チェーンオペレーションには3つの形態があり、それぞれ本部と加盟店との結びつきの強さが異なります。複数の店舗を展開する際、仕入れも提供するサービスもすべて本部が管理するのか、仕入れは本部が一括で行い、サービスの提供は各店舗の独自性に任せるのかで、採用する形態を選択します。
レギュラーチェーン
コーポレートチェーンともいい、本部の企業が、店舗の運営を直接行う形態です。複数店舗の仕入業務や在庫管理を本部が一括で行うため、業務効率の向上が図れます。さらに、食材や商品の仕入れ値や在庫管理におけるシステム管理費用の大幅なコスト削減が実現できるでしょう。スーパーマーケットなどの小売業や飲食店などに多い形態です。
フランチャイズチェーン
本部企業(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)を募集して店舗の運営を行う形態です。加盟店は資本的には独立した形になりますが、本部とフランチャイズ契約を結び、本部から開業や店舗運営に関する指導を受けます。
加盟店は、本部からブランドやノウハウなどを提供してもらう代わりに、本部へロイヤリティを支払います。出店費用は主に加盟店が負担するため、本部にとっては店舗の数を増やしやすい形態といえるでしょう。コンビニや飲食店などに多く採用されている形態です。
ボランタリーチェーン
小売店同士が独立性を保ったまま本部を形成します。主に本部が経営を管理しますが、各加盟店は独立しています。他2つの形態よりは本部による統制が緩く、店舗ごとの独自性を出すことができるのも特徴です。また各店舗が共同で一括して仕入を行うため、仕入れコストを削減できます。アパレル店や食料品店などに多く採用されている形態です。
チェーンオペレーションの成功に欠かせない「3S」の原則
チェーンオペレーションを導入するなら、できるだけ業務を単純化し、全スタッフまたは全店舗が提供するサービスの統一化が図れる方法を考えます。統一化すれば、各店舗の経営状況や仕入れ状況の把握が容易になるでしょう。考える際は「3S」の原則を活用すると、現場や本部における課題が見えてきます。
標準化(Standardization)
店舗ごとの違いをできるだけなくすことを目指します。違いをなくすことで、店舗が持つブランドを確立できます。作業をできる限り統一すれば、マニュアル化も容易になるため同じ手順で作業してもらえます。作業手順が統一化されれば、提供するサービスの質を一定に保ちやすくなります。
単純化(Simplification)
複雑な作業内容をできるだけ簡素化することを目指します。店舗経営や接客、サービスの提供全般を誰でも同じように作業できるようにします。すると作業時間の短縮や、従業員の教育コストを削減できます。
専門化(Specialization)
従業員それぞれが商品・サービスの知識を深めることを目指します。作業を分担して専業化することで、特定の作業に特化した従業員を増やせるでしょう。一人ひとりが担当する作業を限定して、短期間で専門知識を得られるようにするのがコツです。
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チェーンオペレーションで成功するなら各店舗の統一化を目指す
チェーンオペレーションは、チェーン店や加盟店などの商品の仕入れ、経理、顧客へ提供するサービスの内容などを本部が一括で管理することで、全店舗の統一化を図るための経営システムです。
小売業に多いレギュラーチェーンや飲食店に多いフランチャイズチェーンも、チェーンオペレーションのなかの一つです。チェーンオペレーションは、展開する店舗数が増えるほど管理が難しくなります。
ただし、店舗ごとの違いを減らす標準化、店舗における作業をできるだけ複雑化させない単純化、店舗の従業員一人ひとりが業務知識を深める専門化の3つの考え方を意識することで、統一化が図りやすくなります。
店舗の売上や現場の声が本部を支え、本部のサポートで店舗を助ける関係性を築くのが理想といえるでしょう。
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