
年末の忘年会は飲食店にとってかき入れ時ですから、予約獲得と集客には努力していることでしょう。しかし、忘年会の会場を選ぶ幹事の方が、飲食店側よりも真剣な場合も多いのです。それはサラリーマンにとって参加者全員が満足できる忘年会を企画できる、つまりは仕事ができるか否か、という評価と直結しているからです。それは会場の選定、会費の設定、会費と比べた時にコストパフォーマンがよく、かつ美味しい料理の選定ができているかということです。
世の中の忘年会に力を入れている飲食店は、この幹事のニーズに合った忘年会メニューを提供するために必死に考えています。より多くの予約を獲得するためには、競合店よりも魅力的で、幹事や参加者を満足させる忘年会メニューを考えることが重要です。
そこで、忘年会メニューの内容や値段をどのように考え、決めて行ったらよいのかという点についてご紹介します。
飲食店にとって忘年会が重要な理由
では釈迦に説法ですが、改めて忘年会が飲食店にとっていかに重要な位置づけなのかを再確認しておきます。
・売上アップ、利益アップの最短経路
忘年会は、まとまった客数がある程度の単価の料金を払ってくれるため、大きな売上を上げるチャンスです。加えて、フリーの2~3名で来店するお客様も大切ですが、接客や調理の労力とそれにかかる人件費を考えた際、忘年会の場合は大きなコストダウンが可能で、利益アップにも貢献してくれます。
・翌年の売上アップにつなげる
忘年会で満足してもらえれば、社内の送別会や歓迎会、部内の小規模な食事会など、違った集まりにも利用してもらえるかもしれません。つまり、忘年会は将来のリピーターを作る場でもあり、翌年以降の売上アップの種まきでもあるのです。
・効率がよい
忘年会はオペレーション上3つの点で効率がよいことも魅力的です。
- 作業効率がよい
大量の料理を1度に流れ作業で作れ、全員に同じものを順番に出せるため作業効率がよくなります。 - 仕込みの効率がよい
忘年会はコース料理で予約されることが多く、また別グループでも同じ忘年会コースを頼んでいることも多いでしょう。コース料理は事前に仕込みができ、大人数での予約となれば仕込みの効率をあげることができます。
以上の2つは人件費の削減につながります。 - 食材効率がよい
基本的に来店人数が分かっているので最適の数量で仕入れができ、食材ロスを出さずに済むでしょう。これは粗利の改善につながります。
忘年会メニューの値段の需要は?
忘年会メニューを検討するにあたって、値段設定を考える際のポイントをご紹介していきます。
・基本は4000円
ぐるなびの調査によると、幹事が忘年会メニューで選ぶ価格帯は1位が「4000~5,000円未満」で41%、2位が「3000~4000円未満」で23%でした。「5000~6000円未満」も3位につけていますが18.4%です。さらに、幹事が「店選びで最も気にする点」については、1位が「コスト」で29%、2位が「営業時間」で9%、3位が「店の場所」で8%でした。
つまり忘年会メニューで最も重要な要素は値段設定であり、基本は4000円前後で抑えることがポイントなのです。
・飲み放題をつけて5000円が限界
最近はほとんどの幹事が飲み放題をセットで予約しています。これは参加者に好きなだけ飲んでもらいたい、ということではなく、飲んだ実数での料金計算では事前に会費を集めにくいからです。飲み放題であれば最初に会費を集めることができ、あとで返金する必要も、追加徴収する必要もありません。 飲み放題を設定している飲食店のほとんどは、その価格を1000円から1500円にしています。先程の価格需要を考慮すると、飲み放題も含めて5000円で抑えるとよいと言えます。
・税込みぴったりの価格設定にすること
お得感を出すために「2980円」などのような価格設定をしている店があります、忘年会メニューの場合はふさわしくありません。なぜなら、会費を徴収したときにお釣りを出さなければならないからです。それよりは「3000円」として、千円札を3枚集めたほうが楽ですし、お釣りが必要な場合もすべて千円札で済んでしまいます。幹事はそういう点も考慮しているのです。
また同じ3000円にしても税抜き価格にしたのでは、結局支払額=徴収額は3240円になるので意味がありません。通常使っているメニューが税抜き価格表示であっても、忘年会メニューだけは税込み価格で、なおかつジャストプライスにしましょう。
忘年会メニューをつくるコツは?
ではその価格帯と設定方法を前提に、どのような忘年会メニューを作ればよいのでしょうか。
・メニュー設定は4段階
まずコースの価格は4段階にしましょう。2500円、3000円、4000円、5000円という感じです。 ちなみに5000円メニューは、「本当に売りたいメニュー」である4000円メニューを安く見せるための「見せ球」です。このように、一番売りたいコース(単価)より一段階高いメニューを用意しておくことがポイントです。
・1番売れる価格帯は同じ金額で複数種類を作る
1番売りたい価格帯は、メニューを1つにせず複数用意しましょう。たとえば「本マグロと下仁田ねぎのネギマ鍋と鮮魚のお造りコース 4000円」と「下関直送 ふぐちり鍋とてっさコース 4000円」という具合です。仮に4000円を1メニューにしてしまうと、それが気に入らない場合、安いメニューに決めてしまったり他店へ行ってしまうこともあります。ここでは選択肢を複数用意することで、確実にお客様を確保できるのです。
・ポーションを減らしても品数を多く
品数はできるだけ増やしましょう。その方がグルメサイトなどに表示したときに豪華に見せることができます。ただしそうすると原価が上がってしまいますので、1品あたりのポーションを調整しましょう。単品であれば5つ出していた唐揚げを、忘年会メニューで出すときには4つにする、というので十分です。
・男性用、女性用、男女混合用を用意する
可能であれば、ターゲットを性別に当てたメニュー構成にしたほうがベターです。男性向けのがっつりした味噌もつ鍋、女性用のヘルシーな野菜鍋、男女で選べるバランスのよい海鮮鍋、という具合です。
・クロスセル、アップセルができる構成に
電話などで予約を受けた時に、クロスセルやアップセルができるようなオプションメニューを用意しておきましょう。 アップセルとしては、「あと500円予算を上げると、本マグロが大間の本マグロに変更できます。」といった戦略です。クロスセルは、「プラス800円で1人に1皿松坂牛のステーキがつきます。」といったようなことです。これを予約受付時にこちらから提案して単価を上げるのです。もちろん断られることも多くあると思いますが、ダメもと覚悟で案内するだけでもチャレンジしましょう。
・メニュー名はベネフィットを訴求
メニュー名も非常に大切です。メイン料理の特徴やお客様にとって魅力的な点、つまりベネフィットを入れ込んだ名前にしましょう。たとえば「鍋がメイン」のメニューを以下の3種類の名前にした場合、どうでしょうか。
- 荒磯コース
- 北海道の新鮮魚介盛りだくさんコース
- 厚岸の新鮮生ガキの旨味ダシたっぷりの特製鍋コース
明らかに1よりも2、2よりも3の方が魅力的ではないでしょうか。メインがどんなものかわかりやすく、かつ魅力的な訴求となっています。 1はメニュー名を見ただけでは全く内容がわかりません。2はメインである鍋に特化していませんし、北海道という地名だけではアピール力はやや弱いです。その点3は厚岸がいかにも本場から来たことをイメージさせることができ、「どんな鍋なのか?」ということも大変わかりやすいメニュー名となっています。
また3はグルメサイトやフリーペーパーで、たくさんの競合店と横並び表示された場合、アイキャッチで間違いなく目立ちます。目立つということはそれだけ選ばれる確率が上がるということです。 このような理由からも、鍋やメイン料理に特化したベネフィット訴求ができるメニュー名になるよう知恵を絞りましょう。
・原価の比率をメインに寄せる
後々のリピート化を考えると参加者に満足してもらうことも必須です。したがって、メイン料理には原価を厚くして、より豪華でよいものを美味しく食べてもらえるようにしましょう。多少の原価アップはリピートされれば元が取れますし、その分、サイドメニューのポーションを減らして、メニュー全体の原価をコントロールすればよいのです。
・最後は「安くて、簡単で、見栄えが良い」デザート
特に女性客がいる場合は、忘年会においてもデザートの良し悪しがその料理全体の評価を決めてしまう可能性があります。デザートは見栄えの良いものを出しましょう。 とは言え、手間がかかる原価の高いものはここまでの努力を帳消しにしてしまいますから、アイスクリームで言えばジャムやホットチョコレートをかけたり、フルーツを合わせたりなどの工夫で、安くて簡単で見栄えのよいものを考えましょう。
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業態別!忘年会メニュー例
それでは最後に、忘年会メニューの例をご紹介します。とは言え、店の特徴によってメニューの数はいくらでも考えられますから、ここで挙げるのはあくまで参考例としてください。
ある和食系居酒屋の5000円メニュー
金目鯛のしゃぶしゃぶ鍋と的矢湾産牡蠣堪能コース
- 先付
- 前菜(あん肝ポン酢)
- 野菜チップス
- お造り3種
- 焼物(焼ガキor魚介串焼き)
- 金目鯛のしゃぶしゃぶ鍋
- 生牡蠣
- にぎり鮨3貫
- デザート
キトキト刺身大皿盛合わせと握り鮨コース
- 先付(あん肝ポン酢)
- 野菜チップス
- 温玉乗せシーザーサラダ
- キトキト刺身大皿
- 魚介串盛
- カキフライ
- 海老とチーズの春巻き
- 握り鮨4貫
- デザート
ある洋食系居酒屋の価格別メニュー
代謝アップ!チーズタッカルビ堪能女子会メニュー3980円
- 合鴨のロース オニオンソース仕立て
- 新鮮ホタテのカルパッチョ
- シェフの気まぐれシーザーサラダ
- ほくほくポテトフライ
- 大人気チーズダッカルビ
- 〆のチーズリゾット
- 一口 ショートケーキ
良質タンパク質をとろう!チーズフォンデュたっぷり女子力UPメニュー3480円
- 季節のカポナータ
- 新鮮サーモンのカルパッチョ
- 季節のサラダ オニオンドレッシング添え
- 鶏のグリルソテー トマトクリームソース仕立て
- 選べるフォンデュ(とろ~りチーズフォンデュ/ミートフォンデュ)
- シェフの気まぐれペンネ
- 一口デザート
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まとめ
いかがでしょうか?
職場や会社での、いわゆる「飲ミュニケーション」は減ってきていますが、忘年会を開催しないというところは少ないでしょう。つまりどの職場、どの会社も必ずどこかの店で忘年会を開きます。もしも自分の店舗の予約が少ないとしたら、それはどこかほかの飲食店へ流れてしまっているということです。忘年会の予約で店の予約台帳を真っ黒に埋めるためには、あらゆる飲食店を競合だと考えて、そこに勝つ必要があります。
忘年会メニューの価格と内容、そしてメニュー名の設定を今一度よく考えてみて、忘年会売上のアップと利益の拡大、そのあとのリピート獲得を果たしましょう。
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